004 ザザンボと2店舗目のスターバックス

わが町藤枝に2店舗目のスタバがやってくる。
日経の小さな記事に町は大騒ぎだ(わたし調べ)。

しかしこれデジャブ感たっぷりだけど何だっけかな、と考えたら、高校の時に町に「ザザンボ」がやってきたときのあの騒ぎに近いんだと気がついた。いや、あれとは全然違うんだけどでもやっぱり外から何かが来るときのみんなのそれに対する期待っぷりは相似形と言っていいのではないかとおもう。

「ザザンボ」は渡辺文樹監督の東北の閉塞的な家族を描いたドロドロの映画で、各地のの文化センター的な場所を巡回しては上映会が開かれていた。
その宣伝スタイルは目を引くもので、ある日突然町中の電信柱にポスターが貼られる。それもものすごく扇動的なやつ。
激しいタッチの抽象画や、映画の紹介新聞記事の上に赤字で大きくコピーが書きつけられていた。

「これでいいはずあんめい日本人!」

自転車で県道を走ると電柱が出てくるたびその文句が目に入ってくる。退屈な田舎で暮らす私たちには十分すぎる刺激だった。既に上映された他の町では人が殺到して大混乱をきたしたという静岡新聞の記事も相まって、期待はどんどん膨らんでいき、私たちも駅南のアピタで前売り券を買ってその日に備えた。

当日は上映会場のホールは満員、大体が私たちみたいなどこかしらの制服を着た生徒だったから、たぶんきっと町のかなりの割合の高校生がそこに集まっていたのだと思う。

映画は難解だった。いつも静岡市街まで出かけて見ているような大手の有名映画とは全く違ってカタルシスも笑いも涙もない。何が何やら分からないままに終わる映画。座席で呆然とする私たち。これでいいはずあんめい日本の映画!!と思いながら市民文化センターを後にした。
消化できない気持ちを抱えたまま、翌朝にはいつもの学校生活がまた始まった。

結局あれが何だったのか未だによく分からないし、分からないからこうやって20年以上経ってからも思い出すわけで、でもサッカーとお茶しかないあの町を出ようとしたきっかけにはなっていたと思う。

さて、スタバだ。
私たちの故郷には既に1店目のスタバがある。そこは広い公園の隅にあって、公園で遊び疲れたファミリーやら近所の高校生やらであふれている。あふれてはいるものの人口十数万人の町にはここ一軒で十分過ぎると思っていたから、まさかの2店舗目の展開情報に本当に驚いてしまった。

スターバックスの店舗は日本に1300以上あるらしいし、日本の市の数は約800くらいだから単純に割り算すれば確かに市または区ならば1つか2つのスターバックスがあっても不思議ではない。しかしそれはあくまでも「平均」の話だ。スターバックスの店舗の大半は大都市にあるし、うっかりしたら主要駅の周りに3つも4つもある。つまりスターバックスを擁する町(市)はそれほど多くないはずなのだ。そんな中での複数店舗なのだから、これはスターバックス社から藤枝市が大都市認定されたと言っても過言ではない(わけないけど、ここは言い切る)。

もちろん、約1300店舗もあるんだから単純にスターバックスが大衆化して人の住むところ津々浦々に行き渡っただけという側面は否めない(ちなみにマクドナルドは約3000)。

今ある公園の中のスタバは祝祭空間に位置付けられている。公園遊びという祭りの祭壇である。実際、実家に帰省した際にはそうやって公園のスタバを使っている。いや、拝みに行っているという方が適切かも知れない。特別な日のものなのだ。

それが今度できるスタバは駅から少し離れているものの街中にある。ドライブスルーも併設されているのは田舎ならではのご愛嬌だが、地元の友人から聞いた予定地のこの立地はスタバを日常生活の延長に位置付ける意図がないと出店戦略としては絶対に選ばない。スターバックス社は、藤枝市民が毎日でもスタバに通うと踏んでいるのだ!

2店舗目のスタバは、あの町に新しいライフスタイルを持ち込もうとしている。その予感を感じるから「2店目」なのに大騒ぎなのだ。(あくまでわたし調べですけどね)。
ザザンボは期待させるだけ期待させてあっという間に町から去って行ったけが、2店舗目のスタバはどうなのだろう?気がついたら閉店してたってことにならないように、実家に帰省したら必ず家族や親戚にフラペチーノを振る舞えば良いのだろうか…。

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