「君に尊敬する人はいますか?」 僕はそれが世界で最も重要なことであるかのように、目の前の男性に質問する。 新宿にあるこの喫茶店はいつにも増して、煙草のけむりが立ち込めている。懐かしいようなジャズの音楽が流れる店内を見渡すと、壁に昭和初頭を思い出させるポスターが貼ってあった。ポスターの中に存在する銀幕スターは、目が潰れるくらいに笑顔でもはやその時代には敵なしだったんだろうなと考えてしまう。自分の席から通路を挟んだ反対側の席には3人の男女が座っている。その内の一人はとても綺麗