ビストロ・バンビ おいしい時間3
夏休みといえば、スイカ、とうもろこし、蝉、クワガタ、海の家、お盆、しつこい蚊、香取線香、花火、ラジオ体操。
大人になると、てんでだらしなくなるのは誰しも同じで夏休みという長い休みなんてない。
お盆でも仕事のシフトは交代制で、高速道路の渋滞のニュースを横目でTVで見ながら「ふん」なんて言う。
ビストロ・バンビでは自家製野菜の収穫を交代で行っていた。
なす、トマトきゅうり、オクラ、ズッキーニねぎ・・・
土壌の良い場所に畑を作ると、驚くほど大豊作で近所の人からもう、たくさんというほどの夏野菜交換が始まる。
ピーマンやしし唐、唐辛子、すいか、桃・・・鮎。
ん、鮎?
鮎を釣ってくるのは山梨方面の吉田さんだ。
「おーう、いい鮎釣れたんだよ!何回川にむぐったと思う?」真っ黒な顔から大きな微笑を浮かべ太った鮎を自慢しながら、もっと取ってくると豪語する。
ぶりぶりに太った鮎の腹には、子供がおりそれは旨い鮎の塩焼きはもとより
甘露煮もたまらない風物詩だ。
「あーなんか、旨い匂いしまっすねーなんっすか?」バイトの港が鼻をクンクン言わせながら、ゾンビのようにウロウロしているので
「鮎の燻製作ってんだよ」と氏家は笑いながら言った。
「もう、この匂いで飯2杯は食えますよー」
さすが、港らしい表現だ。嗅覚だけで白飯を食べれるチャンピオン選手権に出場は出来そうだ。
「この鮎を食ったら、他の鮎は食えねーぞ。なんせスイカの匂いがするんだからなぁ~」
「鮎なのにスイカなんすか?」
港は目をぱちくりさせ驚いた
「綺麗な川の藻を食ってるから生臭くないんだよ、しかも上流あたりまで真剣に泳いでるから脂ものってんだよ!」
「あーー、鮎ちゃん早く、僕のおかずになっておくれよ~」茶碗にキスをする港は変態に見える。
お盆という暦に、とりあえずビストロ・バンビも休みキャンプや釣りや天然温泉巡りをするには、ちょうどいい場所。
海に行けば、鰺や鯖なんて簡単に釣れるので食材は困らないのだ。
まるまる太ったイカも釣り放題で、ちょっと足を伸ばせば産みたて卵やシメタばかりの地鶏も手に入る。
一つ山を越え、湖の安田さんの所で、米や豚肉も安く手に入るのだからこれ以上に何か必要だというのだろうか・・・。
しいて言うなら、おしゃれってやつに疎くて別に要らない物だ。
別にTシャツと短パンとスニーカーがあれば、夏は過ごせるし冬はジャージかセーターとダウンジャケットの暮らしは10年はしている。
そもそも、コックの白衣を着てるので何をしゃれようというのだろか・・・
服にこだわる位なら、釣竿をもっと性能の良いものに変えたい!
フルセットの工具を買いたいと、氏家は思うのだった。
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