見出し画像

【花橘(ハナタチバナ)とカミサマと、花を訪ねて三男里】


たまに和歌熱が出る(季節性の知恵熱みたいな)。
ということで旬の5月の和歌をいくつか集めて感想をぶちかます。


ほととぎす鳴くや五月のあやめ草
あやめも知らぬ恋もするかな
(万葉集・詠み人知らず)

▶︎あやめ=物事の分別
恋に惑い物事の分別がつかない心情を菖蒲にかけて詠んだ技巧が光る歌。昔の5月は今の6月つまり梅雨時で、皐月闇(さつきやみ)や五月雨(さみだれ)など、どんよりして暗いイメージの月なので、今の感覚の新緑眩しい季節ではないのよな。どよーん。ジメジメ。


五月闇みじかき夜半のうたた寝に 
花橘の袖に涼しき
(新古今・慈円)

▶︎五月闇(さつきやみ)…五月雨(さみだれ)が降り続く(今で言う梅雨)頃の月の出ない闇夜

降り続く雨にむし暑く寝苦しい夜、爽やかな涼風が吹いてきた…花橘の使い方がさすがとしか言いようがない。

▪️花橘ってどんな花?
http://www.shiroyama.or.jp/kisetu_info/tatibana_hana_kaika.htm


夕暮はいづれの雲のなごりとて
花たちばなに風の吹くらむ
(新古今・藤原定家)


五月待つ花のかをりに袖しめて
雲はれぬ日の夕暮の雨
(玉葉集・宇都宮景綱)


情景が目に浮かぶ鮮やかな和歌2首。

遠景近景の広さを感じさせる流石の定家、ウエットな情念の立ち上る焚き染めた橘の香がありありと匂う景綱。


忍ぶ恋を競った平兼盛と壬生忠見の歌合せのように勝手に比べてしまうけれど。はろばろと夕暮れを見渡し匂いまで呼び起こす情景美と湿り気を帯びてくらくらと匂い立つ情感の美、うーん甲乙つけがたい。

※追記・解説記事を読むに定家のは源氏物語の夕顔を下地にした弔いの歌なのね。なるほどなぁ。比べるにはちょっと趣旨が違ったな。しかしホント和歌はメタファーとアナロジーの宝庫。脳トレになるなぁ。
https://wakadokoro.com/wonderful-songs/dailysongs/夕暮れはいづれの雲の名残とて花橘に風の吹くら/


他にもこんな比べ方。


さみだれの空なつかしくにほふかな
花橘に風や吹くらん
(後拾遺集・相模)


たちばなの花のしづくに袖ぬれて
雨なつかしき五月雨の空
(拾玉集・慈円)

▶︎なつかしい=心惹かれる(古語のなつかしは懐くに近い)


雨模様の鬱陶しい空も橘の香りによって胸のすく思いがする、と詠む相模、慈雨そして空にも惹かれる慈円。


やはり男性と女性の感覚の違いかな。昔の香りに心惹かれつつも風を受けて前を向いて歩き出しそうな、次の恋に向かいそうな颯爽とした相模と、袖を濡らしてそこに立ち尽くす慈円。


どちらもいいけど、爽やかなのは相模かな。
これもまた私が女性だからなのかしらん。


というような経緯を経て、季節性の知恵熱に浮かされるように花橘の和歌をあれこれ呟いていた翌日、和歌に誘われついでに三男の「かまってあそんでスモウして」に耐えかねて、先週は旦那に留守を頼んで三男と【花(橘)を訪ねて三(男)里】の旅に出てきました…マルコ…


午前中2時間半、12000歩ちょい、8〜9㎞だから三里(11㎞)にはちょっと足りないけど🤣


なんと6株も見つかりましたお目当ての花橘(はなたちばな)✨
知らんかったーーー意外とある🌸


短い花の盛りにギリギリ間に合って✨
この時期だけの出物に会えた嬉しさ。
ちょうど雨上がりにしっとり濡れた花が実に5月らしい。


まるで花そのものが忍ぶ恋に憂えた美しい女の人のような艶やかな風情でござりました。


そこにかすかに香る爽やか+甘みのある香りもGOOD👍
思ったよりささやかな匂いでした。
まぁ西洋のお花たちの芳香とはちがうわな。
ほんのかすかな。でもいい匂い。


実を言えばちゃんと花橘を見たのは初めてで。
そうかこれが数々の和歌に歌われたあの花か…と感慨深くありました。


見つけ方は、まず地面を見る。
木の根元に厚みのある細長い白い花弁がまんべんなく散っている木を探す。そうすると見つかる。
(満開を過ぎた頃限定の探し方)


良い機会をくれた三男グッジョブ👍
後半は特徴を覚えて、最後のふた株は三男が見つけたもの。やるじゃないか。

なかなか花橘を知ってる小学生はいないぞ。
よ、雅男子!(みやびだんし)
ぜひ好きな子ができたら和歌に詠みたまへ。
(無理難題)


三男いわく「神様のおかげだね」と。
えっ、どうした急にスピリチュアル男子?


実は6株見つけたのは本当に最後の最後の帰り道で。前半2時間は空振りで。

「もう無理」と諦めかけたその時に一株目が見つかって、それからはあれよあれよと6株も。


前半「昔からある神社なら植えてありそう」と当たりをつけて近隣の古い神社を回ったんだけど、そのたびにお賽銭を入れて「花橘が見つかりますように」と祈って回ってたんだけど、それがたまたま6社(やしろ)で。

(ひとつの境内にある末社の小さなお社も含む)

「だから神様が見つけてくれたんだよ。ちゃんとお金の分だけ」と三男さま。
いくつのお社にお賽銭入れて祈ったかちゃんと数えていたらしい。すごいね。

(そしてそれぞれ2人分入れてたから知らん間に結構お賽銭使ってたのね。)


というわけで神様のご加護のもと6株見つかったわけです✨


不思議な一致もあったもんだ。
しかもずいぶん焦らしてくださる。
カミサマの焦らしプレイ。(不敬)
その分喜びもひとしおでしたぞ、ありがたや。


こりゃー三男さまに今後は「カミサマが見てるぞ」系の脅しが効くと…?(あかん…我ながら無粋だなぁ、使えるものはなんでも使う子育て脳)


まぁともあれ、良い散歩、よい花橘、よい休日となりました。おしまい。



#今日のお歌 …新曲の断片【ハナタチバナ】…果たして完成するのかしないのか、神のみぞ知る
https://twitter.com/kirakiramamama/status/1525988440390893568?s=21&t=Cpt2LPwhNQgGV6OQF5mzyw

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?