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アイシードール問題について② ~アイシードールってどこがダメなの?~


はじめに

この記事は当店のSNSアカウントで過去に投稿した内容を元に再編集してまとめたものです。SNSで一瞬話題になってもすぐに埋もれてしまうので、記録のために作成しています。
またドールオーナーとしてショップのオーナーとして、ある程度の事情は推察できるもののメーカー側の人間でもなく、専門家でもないため、誤った情報が含まれる場合もあります。訂正が必要な箇所があればご指摘ください。
そしてみなさんのフォローやスキ!が励みになります。

まずブライスとは?

こちらがブライス公式サイトの正規品情報

来歴が複雑なので公式サイトからの引用でざっくり説明すると…

ブライスの生い立ち

ブライスは1972年にアメリカで一年間だけ幼児向けのドールとして発売されましたが、人気を得ることはなく販売は一年間で中止となりました(通称ヴィンテージブライス)。

ブライス公式サイト(https://www.blythedoll.com/whats/#history)より引用

30年近くを経た1999年に、クロスワールドコネクションズ(CWC)のニューヨーク支社が開催した展覧会のオープニングパーティで、CWCの代表でありクリエイティブプロデューサーのジュンコ・ウォングは、スナップ写真の中に映っているブライスに出会い、その瞬間からブライスに惹かれました。

2000年12月には、CWCプロデュースによるブライスをモデルにしたファッションビルのテレビCFが放映。ブライスのキュートな魅力は、見た人たちの心をつかみセンセーショナルを巻き起こし、ブライスを日本で復刻版を発売するという企画がすすめられました。

ブライス公式サイト(https://www.blythedoll.com/whats/#history)より引用

新生ブライス

復刻に際し、ブライスを子供向けの「お人形」ではなく、大人が楽しめる「ファッションドール」として、新しいドールカルチャーの創造を目指しました。
ブライスのライセンス元であるハズブロ社の許可を受け、2001年6月にCWCのプロデュース、株式会社タカラ(現:株式会社タカラトミー)の製造・販売により、日本生まれの新生ブライス(ネオブライス)第1弾が発売されました(※発売初期の数種類は復刻版のブライスでしたが、以降オリジナルコンセプトのもとデザイン・プロデュースしています)。
<中略>
2022年より、株式会社グッドスマイルカンパニーが製造メーカーとなりました。

ブライス公式サイト(https://www.blythedoll.com/whats/#history)より引用

現在、正規品として日本国内で発売されているのは新生ブライスの「ネオブライス」で、これが主にみなさんが「ブライス」と呼んでいるものです。

アイシードールの製品としての問題点

模倣品が既に蔓延している

こちらのスクリーンショットは日本からも手軽に利用できる中華ECモールで「ブライス」と検索して表示された画面です。
公式サイトのブライスの画像と比べていかがでしょう?

某中華通販サイトの「ブライス」検索結果のスクリーンショット

これ全部、模倣品です。
ブライスに多少なりとも詳しい方なら顔の造形やボディの形状、髪の毛の色などでぱっと見でも違和感を覚えると思いますが、ドールオーナー歴はあるけどブライスは門外観という方、ドール初心者、ましてやこれからドールにハマるかも知れない一般の方が正規品のブライスと見分けるのはかなり困難だと思いませんか?

そして、いわゆるアイシードールというブライスの模倣品は、変な話ですがユーザーニーズのキャッチが上手く、初めてドールをお迎えしようかな、ドールのカスタムしたいな…と思う人にとって肌色のラインナップ、ヘアスタイルのラインナップ、パーツのばら売りなど、かゆいところに手が届く。
そしてこれくらいなら買って試してみてもいいかなと思える値段で手に入ってしまう落とし穴があります。
どれだけラインナップが豊富かまろのすけさんがnoteで解説してくださっているので、こちらもご覧ください。

具体的にどこを模倣している?

種類がありすぎて全てを網羅できませんが、この記事を書いている時点でのメジャーなものとしては下記の通り。

【フェイスパーツ】

  1. ファクトリーブライス
    製造工場から流出した金型によって非正規に製造された偽物

  2. ファクトリーブライスの劣化コピー

  3. アイシードール(ICYドール)
    コピーや模造が繰り返されるうちに微妙に削りや肉付けの造形アレンジが入ったり、ブライスの開口カスタムを模したものなど何でもあり

  4. 最近、新たに別名称の派生が出ている?

【ボディ】

  1. 正規品に類似したボディ
    ファクトリーブライスと同様の経緯で生まれたと思われる偽物

  2. アゾンインターナショナルのピュアニーモボディのコピー
    ブライスは元々肘膝などの関節可動がないボディのため、ブライスカスタムの際にポージングの幅を広げるためにピュアニーモボディへのボディ交換が行われていたため、そこにコピー業者が目をつけたと思われる偽物

  3. メジャーな他ドールメーカーの正規品に類似したボディ

【アイギミック】
後頭部の紐を引くと白目が回転して瞳の色が変わるアイチェンジの構造とプルリングの形状の模倣


まとめると
アイシードールは単純な模倣ではなく、コピー&コピーのキメラドール

ヘッドおよびヘッド内のアイギミックは「ブライス」の模倣、
ボディは「ブライス」およびアゾンインターナショナルをはじめとするメジャーなドールメーカーのボディの模倣。
ここに反論の余地があるのならぜひ教えていだきたい。


アイシードールの特徴

【サイズのラインナップ】
レギュラーのサイズに加えてミディ、プチなどサイズシリーズのラインナップはブライス以外のドールで同じ名称を使用しておらず、サイズラインナップも模倣。

【ミディアイシードール】
ミディブライスはややまぶたが下がり気味だが、ミディアイシードールは目を見開いたような顔の造形。ボディはアゾンインターナショナルのピコニーモの模倣?

【プチアイシードール】
ご丁寧にボディのパンティのプリントまで再現されている。
(プチブライスが最後に発売されたのが2014年なので、現在カスタムプチブライスとして売買されているものの一部はプチアイシードールなのではないかと疑念を個人的に抱いている)

【裸のまま売られている】
基本的には服や靴などは付属していない
ハンドパーツの付属はあったりなかったり
※現時点までで正規品として新品素体のみの販売を行っていません

【パーツばら売り】
※現時点までで正規品として新品パーツのみの販売を行っていません

【パッケージや説明文の添付がない】
主に14歳未満の子どもが使用することが意図された玩具には、国内外にさまざまな規制と製品の安全性を示す表示の義務があり、それ以外の玩具は推奨年齢15歳以上と表示されています。
アイシードールにはパッケージもなければ、説明文の添付もありません。
対象年齢は?安全性は?製造元は?販売元は?

参考資料
経済産業省「消費生活用製品の安全確保に向けた論点 (玩具関係)」https://www.meti.go.jp/shingikai/safety_security/consumer_products/pdf/006_03_00.pdf

ブライスとアイシードールを、リカちゃんと100均などで売られているチープドールの関係に例えて「あれと同じようなもの」「似ているけど別物」という発言を見かけましたが、チープドールにはちゃんとパッケージがあり、注意書きや表示もあります。チープドールとアイシードールは私は同列には語れないと思います。


アイシードールがどんなものか踏まえた上で…

A○azonでブライスを検索してみる

A○azon「ブライス」で検索して表示された画面

アイシードールの特徴に合致するものが普通に表示されます。
正規品のブライスと一緒に並んでいたら知識がないと「裸だから安いのかな?」「パーツ売りだから安いのかな?」と勘違いしそうです。
そして、まろのすけさんのnoteにも取り上げられていましたが、ドール服にも模倣品が存在します。そのいくつかが表示されています。

正規品と模倣品がごちゃ混ぜになっている検索画面で、初心者が正規品を見分けるのは至難の業です。A○azon以外にも楽○市場、Yah○o!ショッピングなども同じような状況です。さまざまな業者が出品する大手ECモールで1円でも安く買おうとする行為は(ドールに限らずですが)偽物を買ってしまうリスクを跳ね上げます。

ドール初心者や目利きに自信のない人は、
『メーカー直販、もしくはメーカー公式サイトの取扱店リストに掲載されている小売店で新品箱入りを買う』を徹底した方が安全です。

フリマサイトでブライスを検索してみる

某フリマサイトで「ブライス 本体」で検索して表示された結果

この画像は某フリマサイトで「ブライス 本体」で検索して表示された画面のスクリーンショットです。
マスキングしていますが、この中にタイトルに「アイシードール」とばっちり書かれているものも含まれています。見分けられますか?

そして例え正規品が使用されているカスタムブライスだとしても、削り盛りのあるものは原型を留めていないものもあるので、元ドールの情報が書かれていても、いなくても出品者の言葉を信じるしかないのです。

初心者がカスタムブライスをお迎えするのはとてもリスキーなのがご理解いただけるでしょうか?
(そして先ほども書きましたが、最後に発売されて10年近く経っているカスタムプチブライスの出現率が高すぎるのではと個人的に違和感を持っています。)

この記事の最後に

コロナ禍の外出制限があるなかで、ペットのお迎えブーム、ハンドメイドブームなどお家時間を楽しもうという時期がありました。その中でドールに興味を持ってお迎えを検討したり、実際にお迎えする人もかなりいたと思います。それがアイシードールが蔓延するきっかけの一つになったのではないかと私は考えています。

SNSやネットを見る時間が増える→ドール好きなフォロワーさんのポストが流れてくる→何となく見ているうちに興味が湧き始めて
ドール欲しいな…と思ったらまず最初にどこを見ますか?
多くの方はまずネット大手ECモール、中古でもいいかな…でフリマサイトではないでしょうか?

しかし、画像で見ていただいた通り、いかかでしょう?
偽物を買わない自信ありますか?

ドールは決して安い買い物ではありません。
しっかり見極めてお迎えしてください。

また「ヒトガタ」とも言われるように人間の姿を模したもの。
太古の昔から人が心を寄せてきたもの。
そこに願いや思いが宿ると考えられているもの。

大切に可愛がろうと思ってお迎えしたものが、実は模倣品として物議のあるものだったらどうしますか?
簡単に手放したり、捨てたりできるものですか?

ここに書いた情報が全てではありませんが、検討材料にはなると思っています。よく考えてお迎えしてくださいね。


余談

プーリップの金型も実は一部流出している。ブライスに比べて市場規模がまだ大きくないため今は延焼せずに済んでいるが、探せば出てくるので実はプーリップファンとしては戦々恐々としている。



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