声 Ⅱ
ずっと、好きな人がいる。
いつも横で、彼を見ていた。
すぐ側にいるのに、届かない。
私の声は途中で止まってしまう。
意味の無い言葉はいくらでも出る。
だけど、心にある言葉は出てこない。
私は、いつも彼を見ているだけだった。
友人の一人が彼に告白したことを知った。
それを聞き、私の世界は闇に包まれた。
その友人は涙ながらに語ってくれた。
友人は彼に振られてしまったのだ。
私は嫌な人間だとこの時知った。
友人が振られてホッとしていた。
それが、とてもとても嫌だった。
だけど、思いは想いに変わった。
私の中で、強い気持ちが爆ぜた。
何もしなければ何も変わらない。
見るだけでは想いは伝わらない。
話だけでも気持ちは伝わらない。
想いは、声に出して伝えるのだ。
勇気を振り絞り、声に出すのだ。
「あの、あのね……、話があるの」
声が別人のように一人歩きする。
彼が不思議そうに私を見つめた。
「ずっとずっと……、好きでした」
好きという言葉が、やっと出た。
彼は驚いていたが笑ってくれた。
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