②田坂広志「21世紀の資本主義」を語る。読書メモ。

前回1-3話までのメモをしたので、4話目からの読書メモです。

【第四話】ウェブ革命は、ボランタリー経済を復活させる。

ウェブ革命は、企業や市場や社会の「複雑系」としての性質を強め、自己組織性や創発性、共鳴や相互進化、生態系の形成など、「生命的システム」としての性質を強めていき、その結果、この情報革命は自然に人々の価値観に影響を与え、社会に「生命的世界観」を広げていく。

では、その結果、何が起こるのか?

人々が、善意や好意など、自らの自発的意思によって行う経済活動である、ボランタリー経済(自発性の経済)が広がっていく。

・現在の資本主義社会において支配的になっているのが、人々が「貨幣」の獲得を目的として行う経済活動「マネタリー経済」(貨幣経済)である。
・ボランタリー経済は実は、人類最古の経済原理である。
・貨幣経済の前は、物々交換経済、その前は「贈与経済」(ボランタリー経済)が人類の社会やコミュニティにおいて支配的であった。

家事や育児、子供のしつけ、老人介護、地域での相互扶助や環境保全はいずれも無償のボランタリー経済であるし、それがなければマネタリー経済そのものが活動できなくなるほど重要な経済活動である。

そんな大事なボランタリー経済がなぜ、陰の経済になっていたか?
①その経済活動が、家庭や地域という「狭い世界」に限定されていた。
②貨幣などで客観的に評価できない「目に見えない」経済活動だった。

ネット革命によって、このボランタリー経済が「広い世界」に解き放たれ、「目に見える」ようになった。

このボランタリー経済が復活していくときには、「新たな経済原理」が生まれてくる。

【第五話】ウェブ革命が、新たな経済原理を誕生させる。

ボランタリー経済が「古く懐かしいものが、新たな価値を伴って復活する」という「事物の螺旋的発展」の姿になると、弁証法のもう1つの法則「対立物の相互浸透の法則」が起こる。

対立物の相互浸透の法則とは、、、
対立し、競い合うもの同士は、相互に浸透し、融合していく。

この法則に基づくと、当初対立する経済原理だった、「ボランタリー経済」と「マネタリー経済」は互いに浸透し、両者が融合した「新たな経済原理」が生まれてくることが予見できる。

例:アマゾンは「マネタリー経済」だが、支えているのは「ボランタリー経済」である草の根書評。

これらはウェブ上だけではなく、現実の世界でも起きている。

【第六話】CSRと社会起業家の潮流が、資本主義を進化させていく

マネタリー経済側から生まれている動きの1つが
「CSR(企業の社会的責任)」

ボランタリー経済側から生まれているのは、
「社会起業家」

 この新たな経済原理である、ハイブリッド経済によって、「資本主義の進化」が起こる。
これからの時代には、ボランタリー経済を包摂し、ハイブリッド経済を基盤とする、全く新たなパラダイムの資本主義が生まれてくる。

その時、日本における資本主義に何が起こるのか?

【第七話】日本型資本主義が、世界の資本主義の進化を導く。

古くから存在する日本型経営の価値観に向かってくる。
CSRなどは、もともと日本にあった価値観である。
「企業は、本業を通じて社会に貢献する」
「利益とは、社会に貢献したことの証である」
「企業が多くの利益を得たということは、その利益を使ってさらなる社会貢献をせよ、との世の声である。」

日本方経営が古くから掲げてきた「企業の究極の目的は、社会貢献である」との思想は、「社会的企業」の思想そのものである。

渋沢栄一が語った、「右手に算盤、左手に論語」の思想であり、これらの潮流が世界に投げかけている「我々は何のために働くのか?」という問いと、「労働とは、社会に貢献するためにある」という労働観。これらは、我が国が古くから大切にしてきた「労働観」である。

【第八話】生命論的パラダイムの経済原理が生まれてくる。

企業や市場や社会というシステムが、その内部での相互関連性が高まり、複雑系としての性質を強めている。複雑になることで、経済システムが人間が自由に、「操作」や「制御」できないシステムに変わっていくことを意味している。

バタフライ効果のようなことが起きている。サブプライムローンが世界全体の経済危機を起こす、など。
これは、経済学が限界になっていることを意味している。

操作主義的経済=機械論パラダイム
市場や経済を機械的システムとみなし、そのメカニズムを分析、解明することによって、それらを自由に設計し、構築し、操作し、制御し、管理しようとする発想。
複雑系経済=生命論的パラダイム
市場や経済を生命的システムであると考え、その自己組織化や創発を促すことによって、経済生態系の相互進化を促していく発想。

【第九話】「複雑系経済」に処する3つの方法

第一の示唆→複雑系は、意図的に設計、構築、管理ができない。
第二の示唆→複雑系は、突如、崩壊する可能性がある。
第三の示唆→複雑系は、個々の要素の挙動から創発が起こる。

管理できず、突如崩壊の危険性もある「複雑系」には、「個々の要素の挙動から創発が起こる」が重要な方法である。

複雑系全体の挙動を決めるのは、全体を支配するルールではなく、個々の要素の行動ルールである。ということ。
管理でも放任でもない、「自律」という方法に他ならない。

それは、企業自らが率先して、法令を遵守し、企業倫理を大切にして活動すること。社会的責任を自覚し、倫理基準や行動規範を守って活動すること。

【第十話】市場原理主義を超える「CSR」の潮流

CSRという言葉で考えると、利益を得るための手段となってしまっていて、本来は利益追求とは別次元にあるはずのものを同じ文脈にしてしまっている。

「倫理」とは、本来は「競争」や「利益」を超えたものだからである。

どのようにすれば、企業で働く個人の倫理観を高めていくことができるのか。


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