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『危険なビーナス』第8話感想

「正直は最大の戦略」ですが「正直とバカ正直は似て非なるもの」。伯朗さんの心情を思うとなんだか真剣に胃が痛くなってきちゃったよ、な第8話。もうあらゆる方向からお気の毒に感じられてしまって、ねえホントに大丈夫?

…とにかく、本当のことを本当のまま話す人がいない。矢神の家の魑魅魍魎達は、自分以外は利用することしか考えず、自分の都合の良いことしか話さないから、誰を、何をどこまで信じられるかわからない。基本的に「大切に思う人を疑わない」はずの伯朗さんが、禎子さんや康治さんを疑う羽目になるのも、祥子さんや佐代さんにいろいろ吹き込まれたからで、余計わからなくなる…のは、視聴者も同じ。本当は信じたいはずの2人は、もう問い質すこともできないんですものね。
『ひとを好きになれば、なんだってするかもしれませんよね?』
そんな言葉をギリギリの小康状態を保ってる重病人にむけてしまうほどに、伯朗さんは追い詰められてしまってます。…それって要は、自分自身のことだよね?

楓さんのことを想う気持ちは、絶対に認めるわけにはいかない。わかってるんですよ、わかってるけど認められないから、誰に突っ込まれても否定しまくって、でもこんなところで本音が出る。
自分だってなんだってしちゃいかねない気持ちがはっきりあるから、こんなこと言ってしまう。
疑心暗鬼を生ず。つくづく人は主観で生きる生き物です。魑魅魍魎相手に、正直を戦略に採るのはあまりに分が悪すぎます。

結局、信じられる情報をくれたのは赤の他人…研究熱心な医師である康治さんを知る方でした。康治さんは心から伯朗さんの父親でありたい、家族でありたいと願っていた。そんな話を赤の他人から知らされて、伯朗さんはどう思ったか…恥じたのでしょうね。信じるべき人を信じないでいた自分を。楓さんに黙って佐代さんと取引した自分を。以前勇磨さんに仕掛けられた罠は、自分が正直であることを武器に楓さんと協力して回避することができた。今も、もちろんそうあるべきだ。そう思った…んですよね。でも。

楓さんが話す自身のことがどこまで本当なのかは、全くわかりません。でもここまでは、少なくとも見てる側がはっきり嘘だとわかる嘘を伯朗さんについたことはなかったはずです。けれど今回は違った。見ている側がはっきり嘘だとわかってしまって、伯朗さんが騙されているとわかってしまって、さらにそれには勇磨さんとの口裏合わせがあるとわかって、さてそれは何のために。
佐代さんの言う通りです。
『きっとあるんですよ。私達を切り捨ててまで手を組むメリットが』
…本筋としての最大の謎はここにあるんですね。楓さんの正体、明人君の行方、遺産の在処とその行く末。それら全てを望む形で手にすることで生まれるメリット。たしかに、もう知らずに済ますことはできません。

そして、お話をこんな形に引っ張ってこれたのは、間違いなく勇磨さんの功績です。
120%のザ・敵役。あああああ腹が立つ!
…ごめんなさいこの「腹が立つ」はわたしにとって〈不覚にもどきっとしてしまってそんな自分の動揺を全力で笑ってごまかしたい〉時に出てくる言葉です。もう今回は。勇磨さんが出てくるたんびに、ずーっと笑いながら「腹が立つ!」と叫んでました。なんなんですか、このひと(笑)。
今までずっと一緒に悪巧みしてきた佐代さんにも本当のことは伝えず、胸倉掴んで問い質されても
『まさか。私が貴女を裏切るわけないじゃないですか。私のために全てを投げうって生きてきた貴女を』…表情はまるで動かさず感情も浮かばせない。冷たい能面がほんの少し、ほんの少しだけ口角上げてみせる。うわぁうわぁ、もう。
楓さんの部屋のシーンもそうでした。
『失せろ、負け犬』台詞もですけど、でもなによりもその画!楓さんの肩を抱いて並ぶ画の強さ!これが見せたかった、この画そのものに伯朗さんを圧倒する説得力を持たせたかったんだなと思えて、ああああああもう腹が立つったら!
伯朗さんに決定的な敗北感を与えなければならないシーン、妻夫木さんという〈ちょっとダメだけど優しい、でもきっちり二枚目〉の作れる俳優さん相手に、それを凌駕するだけの〈上からパワープレイ〉を見せられるお芝居。勇磨さんがディーンさんだからできたことだと思いますし、これがやりたくてディーンさんがキャスティングされたのかとすら思えて。
俳優ディーン・フジオカの持つ破壊力、十二分に堪能いたしました。素晴らしかったです。

それにしても、お話も最終盤にきてなお謎は深まるばかり。
楓さんは何者で、何を欲しているのか。明人君は誰に監禁されているのか無事に帰ってこれるのか。予告で誰かに口を塞がれていた百合華さんに危険は迫るのか。…今、見直していて思いましたけど、勇磨さん、あのタイミングで伯朗さんの前に現れたのは楓さんに〈余計なこと〉を喋らせないため、ですか?楓さんが〈お義兄様〉への情に絆されて本当のことを話してしまって、自分の企てを台無しにされないため?肩に手を回して部屋に連れ戻したのはそのためだったようにも見受けられました。
勇磨さんが勝利を確信したゲームとは何を指しているのか。そして、波恵さんが手にしていた遺伝子鑑定の結果…あれは誰のもの?えーちょっと待ってここからまだ「本当は親子」とか「兄妹」とかそうじゃないとかが出てくるの⁇
かなり、かなり奥深い闇がまだ矢神家(と手島家、ひょっとしたら兼岩家)には残されているようです。でもお話はあと2話(もしくは3話)を残すのみ!全ての謎が最後には明らかになると信じて願って、次の日曜21時を待ちたいと思います。
…叶うことなら、勇磨さんが最後まできっちり〈悪い人〉でいてくれますように。

#危険なビーナス #日曜劇場
#矢神家の一族
#最後の最後本当に康治さんが亡くなってしまうのかも謎

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