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1977年 殴ってしまった友 4文

 巷はワールドカップ(ドーハ)において、日本がドイツに勝って盛り上がっている日曜日(2022年11月27日)、FacebookからM君の誕生日のお知らせが届いた。早速、LINEでお祝いのメッセージを送る。サザンのライブ巡りをしたいと元気な返信がきていい気持になる。忘れることができない彼との記憶は、ロッキード事件で田中元首相が逮捕された年。高校二年生の私が彼を殴ったことだ。一回ではなく数回、同級生がいる前で。当然学校で問題になり、彼は先生に理由を聞かれた。彼に私は直接確認をしたことはないが「自分が悪かったので殴られた」と言ったのだと聞いている。私は停学という処分がくだり退学にはならなかった。いかなる理由であれ即退学であったに違いない。私は彼に感謝しなければならないのだ。
 彼と初めて会ったのは小学生の時である。秀才で何事にもまじめに取り組む彼の姿は私よりもはるかに大人に見えた。現役で地方の国立大学に入り大企業に入社し研究者となった。
 「○○君(私の名前)じゃない?」阪神電車の梅田駅近くで声をかけられた。24歳の頃である。高校卒業後彼は我々のふるさとから家族ともども引っ越していったため、消息が分からなかった。彼に引き合わせてくれたことに感謝しなければならない。あれから四十年経ってもやり取りができているのだから。
 彼が務めていた会社は清算せざるをえなくなり、彼が研究していた分野の事業を引き取った会社に移ることになり、いろいろと苦労してきたと思われる。私が新卒で入った会社も、事業は存在しているが会社名は変わってしまった。後悔しているのではなく、今の自分を育て創り上げてきてくれたことに感謝している。彼もそう思っているに違いない。今までお互いにここまでこれたことに・・・。
 先週、真っ赤なアバルト595を衝動買いしてしまった。納車したら、茨木に住んでいる彼にドライブがてら会いに行こうと思う。会うのは九年ぶりである。
彼は何も言わずに、優しい目をしているだけかもしれない。小学生の時のように・・・。
LINEの返信が来た。ルパンが乗っていた車で近くに寄った時は来てくれと。
高校の時に先生に訊ねられた「殴られた理由」についてどう応えたのかをたずねてみよう。
2022.11

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