見出し画像

かぞくの日常



彼女は、幼女と少女の狭間の子。

春をテーマに自由に絵を描いて、と伝えると、
桜の次に、女の子を描き始めた。

はにかみながらよく喋る彼女は言った。

『 あかちゃんがいたの 』

その後も、赤子の話が止まらない。

名前も、
名前の由来も、
今年迎える歳も、
それが妹であることも、
繰り返して、繰り返して、
いろんなことを教えてくれた。

『 まだ赤ちゃんだから
   おはなしはできなかったの 』

『 わたし、おねえちゃんなの 』

ただ黙って見つめる父の視線を知ってか知らずか
本当に自慢げによく喋る

合流した母に父が、娘が妹を描いていると伝える

半拍ほどの間

ほころびのような笑み

あかるい声で家族の会話

これがきっと
この家族の日常

まだ埋まらない白紙のスペースに
次は何を描くか問うと

『 いもうとのあたらしいおうちかく! 』

そう言って
彼女は明も暗も伴った顔で
筆を進めた

その後どんな絵が完成したのか
わたしは知らない

ただ、どこかしずかで、
ただ、どこかあたたかくて、
ただ、みえない空いた席を、
たしかめながら、包み込みながら、
広がっていく様だった家族の姿を、
少し離れた所から、見守らせていただいた


これ以上ことばは要らない

これ以上のことばは無い


形容し難い表情と後ろ姿を帯びて
日常から日常へと
家族はかえっていったのだ


あたらしいおうちには
この先きっと
この家族が全員集う
きっと遠い遠い未来のことを
しずかに祈るもまた
日常であった

このサポートは、基本的に、僕の、お勉強や、成長の為に、使わせていただきます。 キモチと、キモチが、交われたら、、よしなに。