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決めるは易し行うは難し

本日。
愛するボスに入店条件を増やされてしまいました。

ボスにとっては、めんどくさいことを言ってしまったのです。

私はボスを独占したいからさ、ボスが他人のことであいつの口説き方スゲーよな、みたいなことを言っていて。
女に溺れるのってカッコ悪いから、俺がそうなったらとか思うとイヤなんだよね。

って言ってました。
でも、ボスだって、泥酔すると片鱗を見せるわよ。と思って。
じゃあ、ボスがそうなったら私がカッコ悪いですよ、っていうね。

「なんでお前にそんなこと言われなきゃならねーの」

と、怒ってしまいました。
「お前の入店に条件増やすわ」
えっ。

「誰かと一緒、っていうのに加えて、俺が許可したら、っていうのを増やすわ」
ガーン、、、、
えー!?やだ。そんなのやだ!

「納得しないなら出禁にする」

、、、、わかったよ。。。


ドライブの最中なのに。
まだ、途中なのに。
二人で無言になってしまって。

私は少し、泣きそうになる。

だって、ボスもちゃんと口説こうとしてるときあるもん。私じゃない誰かのこと。
私がいつもどんな気持ちでいるか。。
ちょっと口出ししただけじゃん。
ボスってばすぐ怒る。
私だって、何にも言わない女になりたいよ。
でもなれない。。
ボスも更年期なのかな。。。


そっと息を吐いて、もう10分先のコンビニに寄ろうと思う。トイレに行きたいし、ちょっと逃げたい。
「おトイレ寄ってもいいですか?」
「聞くな」
まだ怒った声色でそう言った。

コンビニが10メートル先に見えて、瞬く間に近くなる。
「寄ります」
小さく言って、私は駐車場に入った。
ボスは降りないから、エンジンをかけたままで、私は鞄を手繰り寄せる。
「捨てて」
ボスが短く、私に飲み干したボトルを差し出した。先ほどまでコーヒーが入っていたボトル。
はい、と受け取って、私は車内から逃げ出した。

トイレに向かうと二つある個室は塞がっていて、私は少し待った。やっと呼吸が楽になって、ドリンクコーナーを眺める。
ボスにお茶持っていこうかな。コーヒーがいいかな。だも、コーヒー飲んだばっかりだしな。。

考えていると、トイレの扉が開いて人が出てきた。今のうちだな、と私はトイレに入った。

用を足して出てきて、私は冷たい麦茶を購入した。コーヒーも迷ったけど、やめた。

車に戻ると、ボスの姿があったことに安心した。もしかしたら歩いて帰ってしまうんじゃないかと懸念していた。ここからじゃ遠いけど、ボスならやりかねない。

ボスはスマホで動画を見ていた。YouTubeかな。TikTokかな。お笑い芸人さんが何人かで楽しそうになにかを検証しているようだった。
「はい!どうぞ!」

私は元気よく麦茶を差し出した。
ボスはスマホ画面を見たままで受け取り、ん。と短く答えた。
私がシートベルトをしていると「なんでコーヒーじゃないんだよ」とぶっきらぼうに言われる。
苦情だけど、私に言ってくれたことが嬉しくて、胸のなかで喜ぶ。
「買ってきましょうか?!」
思わず顔を見つめる。
スマホを眺めながら、口元だけで小さく笑っていた。
「いい」
まだ意地悪そうな声色。
「いらないんですか?今のうちですよ?」
「いらねえ」
はい、と答えて私は車を発進させた。

もしかして、今日はこのまま動画を見て終わってしまうんだろうか。少し寂しく思ったけど、すぐに動画は終わってしまい、ボスはスマホをダッシュボードに投げ出した。

ほっ、としたのもつかの間、また無言。
なにか、話したい。ボス、なにか言ってくれないかな。まだ怒ってるのかな。
いや、、、私の胸の感情の色をきっと視ている。私が怖がっていると見抜いているんだろうな。私が悲しんでいるかどうかを感じているに違いない。。。

そう思って、私は、気持ちを切り替えなくてはいけないと、息を長く吐いた。
不安になるな。落ち着け。楽しいことを考えろ。。。
前を見据えながら、胸の中は光のことを思った。隣のボスはまだ冷たいオーラを放っていたけど、私は自分を光のなかに置いた。

ふと、外を眺めているはずのボスの視界では、花壇を整備しているたくさんの人達が作業していた。
「、、、大変そうですね」
思わず口から出て、ボスは答えないかも、と思った。

「、、、どうせ暇な奴らがしてるんだろ」

ボスが返事してくれたので、ちょっとびっくりした。
「ボランティアの奴らだろ?暇なんだからいいんだよ」
声がまだとがっている。ボスも、きっかけを探しているんだといいな。
「ボランティアじゃないかもしれませんよ?少しは謝礼が出るのかも」
「そんな活動あるかよ」
「ん?集落の依頼とかだとありますよ?緑化推進活動とかって。行政の予算を少しもらおうって、申請するとくれたりするんですよ」
そこから他愛のない話をポツリポツリ。

ボスは一向に声が和らがないけど。
帰り道に差し掛かってやっと、いつもの声色に近づいてきた。
「TikTokで、気になるのがあってさ。昨日見たんだけど。80歳以上の人に聞いた、人生の後悔、ってやつ」
「はい?」
「なんか、胸にクルものがあってさ」
と言いつつ、スマホを取り出す。
「10位まであって、第一位が、他の誰かの目を気にしないでいれば良かった」
「ん???」
以外にも普通すぎる後悔、でしょうか?

「他人の目を気にしすぎながら生きてきたってことなんだろうな。第二位が」
あ、教えてくれるの?もしかして全部??
思わずスクショしたというその画像を読み上げてくれた。
そして、何位か忘れてしまったけれどよく通るいい声でボスは言った。

「もっとやりたいことをやればよかった」

やりたいことを。

「人生の終わりにさ、もう残り時間も少ない年寄りでさえそう思うんだよな」

それって、私に言ってるのかな。
もっと、自分がやりたいことをやれ。お前も。
暇だからって、俺を呼び出すんじゃなくて。

私は、どうしていいかわからないんです。
社会から自由になったら、どうしていいかわからないんですよ。
時間はあるのに、動き出せないんです。。

「次、旦那さんの予定は?」
ボスのお店で、知人がマッサージしてくれるから、その事を言っている。約束するとその日だけ出張してくれるんだ。
「分かんない。聞いてない」
あの人なら、予定が決まれば教えてくれるはずだ。言わないってことは、決まってないってことだ。
「友達のねーさんは?」
「調子悪いみたい。。この間誘ったけど、眩暈がひどいって。真面目だから仕事は行ってるみたいだけど」
「、、、それが原因で仕事を辞めることになるかもしれないよな」
はっ、として私はボスを見た。

「そう、かもしれないいよね、、」
頑張りすぎな友人のことを思った。
それと同時に、ボスがいつお店に来るか計っているのだろうか、と思った。私の予定を把握しようとしている?他のお客とブッキングしても大丈夫かどうか照らし合わせている。

今の私はいつボスに会えるかわからない。
予定がない。
私は毎日でも毎夜でもボスに会いたい。
恋をして、アタマがバカになっている。
旦那との離婚も視野に入れている。
私は仕事を退職して、退職金をボスにつぎ込んでしまった。もう手元にはお金がない。ボスは私からお金を巻き上げたりはしないけど、私が貢ぎたくて仕方なかったのだ。
叶うなら、今も。
離婚したからって、ボスとの未来があるわけじゃない。でも、私の気持ちが整理できる。
私が別な心配をしなくて良くなるから、私は一歩を踏み出したいのだ。
ボスと結婚できたら幸せになれるなんて思ってないけどさ。そうならなければ幸せになれない訳じゃないものね。

ボスは、怒りを静めて、私のことを心配している。多分。私がボスのお店に行くのが至上の幸せだと知っている。そこを制限されて、行けなくなって、私が死ぬほど悲しむことを知っている。だからこそ制限するし、だからこそ制限しない方向でいるのに。
ボスの理想の女性には近づけない。
なんにも言わないって、難しいなぁ。。

私は今、成長の過渡期なのかなぁ。
人生のジレンマを見つめ直して、自分自身のクセを見直して、幸せな未来をつかみ取るための。
できるかな。できるかなぁ。。
私ならできると、信じる強さをください。
私の希望も光も、全てがボスに向かっている。

私のなかの私よ、今こそ力を示せ。。


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