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The Lazy Mans Guide to...

それは21の時だった。

俺は半年ほど引きこもっていた。

毎日毎日、死にたいと願っていた。

無論、臆病な俺は、死へ向かう事は出来なかった。

死の方からも、やってきてはくれなかった。

どの方向を向いても壁が立ちはだかっていた。

完全に逃げ道がなくなったと感じた俺は、生きる事も死ぬ事も諦めた。

すると不思議な事に、俺の内面から一つの願いが湧いた。

「本当の事を知りたい。」

それはやがて強い祈りへと変わっていった。

誰に祈っているのか自分でわからなかった。

わけがわからないなりに毎日祈り続けた。

「どうか、俺に本当の事を教えてくれ。」

ある日、Yと言う男が突然、一冊の本を持って家に訪ねて来た。

「お前の妹と街ですれ違った。

その時お前が引きこもっている事を聞いた。

お前のことを行きつけのBARのマスターに話したら、この本を持って行ってやれと頼まれた。

一見の客が忘れていった本らしい。

俺には何が書いてあるのか理解出来なかったが、持って行けと言われたのでとりあえずお前にやる。」

と言った。

その日の夜、渡された本を読んだ。

何が書いてあるのか俺にもわからなかった。

しかし、読み終わった後に

「本当の事が書いてある。」

という直感がやって来た。

次の瞬間それは起こった。

時間が止まったように感じた。

人生がまるでジョークのように思えた。

薄暗いジメジメとした部屋が輝いて見えた。

目の前に見える机やテレビが「ここにあるべくしてある。ここ以外には存在し得ない。」というような完璧な配置に感じた。

理由のない幸福感で俺は満たされていた。

そしてその感じは徐々に薄まっていき、またジメジメとしたいつもの部屋へと戻っていった。

「さっきのはなんだったんだ?」

答えを探すべく、俺の探求が始まった。

わかった。と思ったらまたわからなくなった。

しがみつけば突き放された。

これこそが最後だ。と思ったらまた迷い始めた。

何度か同じような事を繰り返しながら、次第に気持ちは穏やかになっていった。

そのうちに本当の事を知りたい。という強い願望は薄まっていった。

気がつけば、その思い自体が消え失せていた。

先ほど久しぶりにふとその本を思い出して、手に取った。

今度は何が書いてあるのか、はっきりとわかった。

これだけで充分だった。

そこにはこう書いてあった。

「理由などいらない。ただ愛しなさい。」

俺は今日もソファーに深く腰掛け、目を瞑る。

「愛」そのもので在るために。

親愛なるすべての怠け者たちに俺からささやかなメッセージがある。

「目の前の現実を愛せ。今すぐに。それがどんなものであっても。」

おはよう。

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