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よもつくに

それの川縁を歩く。
行き交うものは多くない。
 
 
舟はない、あるのは九つの橋。長い長い歳月、幾つか橋を遣り過ごすうち、少し疲れて木橋の欄干に凭れた。
 
 
 
風にびょうびょうと雨に轟轟と流れる川も、折りに川底へ阿ることもあった。

或る日、物見遊山のヘーゼルアイがやってきて尋ねる。
コレハナニトイウカワデスカ。
ここでは少々飽いた問いにも

三途の川だと教えると、
サンズノカワ、サンズノカワ

と唱えながらヘーゼルは満足げに、よもつくにへと去っていった。嗚呼、
 
 
 
屠る功徳、地獄は橋の下だよ。

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