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水母

それは、耳のない猫である。

死んでいたんじゃないかな。
そう言ったのは紛れもなく耳のない猫だった。

死んでいた、それは生きていたことを示唆するものだ。それをまるで昨日は晴れていた、とでも言うように宣う猫。
 
 
 
その猫のひげを爪弾く女と、本体がどちらかを熟思うとでも云わんばかりのひげがジヨン、ジヨン、ジヨンと掠れる。

召し上がれ。
女が猫のひげを爪弾きながら呟いた。

そうであるなら、甘んじてみるのが人の性と思うことしかり、わたしは遠く、遠く脳裏からもテーブルからも離れていくひげの音を聴きながら目の前の皿と共に内なる臓となるしかないのだろう。腹をくくる。

なぜだろう。つづく

 
 


 
 
 

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