「おれは無関心な貴方を傷付けたい」を読んだ感想

「おれは無関心な貴方を傷付けたい」という本を読んだのでその感想を述べたいと思います。

この本はお笑いコンビウーマンラッシュアワー村本大輔さんの著書であり、Twitterでこの本の存在を知った時タイトルを見ただけで鳥肌が立ちました。
言いたいことが直ぐに分かり、僕と全く同じ思いを抱きながら活動している彼の勇姿を感じ取ったからです。

彼は数年前のある時から年に一度放送される「the manzai」という番組で政治的な風刺を織り込んだ漫才を披露する様になりました。
その漫才が毎年の様に話題になり、一貫して伝わってくるメッセージは「日本の1番の問題は国民の意識の低さ」です。

常に僕が感じている社会に対するイラつきを影響力のある彼が全国ネットのTVで代弁してくれている事が僕にとってとても救いになっている所があります。
そして彼を始め様々な有名人の社会問題についての発言が増えてきたり、徐々にですが社会全体が「僕たちこのままで良いのだろうか?」という思いが芽生えてきているのも肌感覚で分かります(気のせいかも知れない)

でも一貫してテレビのニュースに流れてくるのは芸能人の不倫、有名人の不祥事ばかり。
テレビというものはマス(多数)を捉えにいく傾向があるので国民の意識の反映と考えても差し支えないと思います。

被災地で今も苦しむ方々が山程いる、沖縄で国と戦っている人達がいる、犯罪被害に遭われた方も山程
いる。
そして世界情勢を見ても山程問題にしなければいけない事があります、虐殺されているロヒンギャの問題だったり、人権弾圧を繰り返している中国政府のあり方などどれもニュースにしなければいけない事だと思いませんか?

村本さんが熊本の被災地に赴き、被災者の事を扱った漫才を披露した時には被災者の方々は涙を流しながら笑っていたと言います。
村本さんに近づき、「ありがとね、思ってくれている事が嬉しい」と伝えた被災者の方の思いこそが本質だと思いました。

被災者だって好きで被災したわけでは無い、偶発的に生まれた災害により苦しんでいるだけだ。
それを実質的に無視している日本社会はどう考えてもおかしく無いでしょうか?

日本人の意識が低いのは別に僕や村本さんの感想なんかでは無く投票率から見たって顕著ですよね?
過半数が選挙に行かないんです、自分たちの国がどうなろうが知った事では無いという事の現れです。

北欧を見てください投票率が90%近い国もあります。
データ上も日本人の意識が低いのは間違いありません。

この本には社会学者の宮台真司さんの言葉が記述されていました、「今の人は仲間以外は皆風景」
自分に関わりのある人以外の事は単なる風景でしか無い。
言い得て妙だと思いました、もっと言うと仲間と言ってもかなり親密な仲で無ければ気にかけたりする事は少ないと思ってます。

噂話は大好きですが、誰々が酷い目にあっていようが助けに行くようなアクションは起こさない、まさにクズが溢れているのが現実かなと思いました。

この本に記述されている印象的な話を紹介します。

村本さんがあるお笑いライブに参加していた時の事、ある芸人が喪服姿で顔を赤くして遅れてライブに参加してきました。

息を切らして走ってきた彼に他の芸人達は「どうした?何かあったん?」と彼の父親が自殺した事を知っていながらあえていじる姿勢を見せたのです。
それに答える様に喪服姿の芸人は「知ってるやろ!」と素早く反応し、客席は最初は引いていながらも彼らのやりとりに大笑いしだしたと言うのです。
「なんやねん!お前ら最低やな!」と嬉しそうに突っ込む喪服姿の芸人。
ライブが終わると彼は他の芸人に対して「ありがとう、楽になったわ」と言いました。
村本さんはその時の事を「誰かの傷を笑いが癒した瞬間を確かに僕は見た」と言います。

この話を聞いた時にふと思い出したのが、僕の父親が専門学校時代に事故で亡くなってから初めて学校に行った時の事。
思っている以上に誰も僕の父親が死んだ話に触れてこなかった事を記憶しています。

僕だけなのかも知れませんがその時に僕は「父親が死んだ事を聞いてくれた方が僕も気持ちが楽になるのになあ」と思ったんです。

勿論周りからしてみればあまり触れない方が良いという配慮だったのは理解出来るのですが、僕には配慮になった訳では無く単純に孤独が増しただけだったんです。

ちょっと異常に思えるかも知れませんが僕はそこから積極的に自分の父親が亡くなった話を自分でいじり始めました。
「そろそろ帰らなきゃ〜父さんが待ってる、あ、死んでた笑」とか誰かの父親の話が出た時は「いいよねー父親がいるって」と皮肉を込めて言ってみたりしました。
でも皆一貫してそこに関して笑う事がダメかの様に自分を律していました。
僕が自ら発信してるんだから少しぐらい笑ってくれても良いのになあ〜と笑
勿論単純に面白くなかったのもあるかも知れませんがそこには「笑ってはダメ」という感覚が根深く刷り込まれている印象は受けました。

その証拠に僕が一貫して父親の死を自分自身で弄り続けると本当に仲の良い友達は大笑いしてくれる様になりました。
「え?おまえ父さん死んだの?笑」等と弄ってくれる様にもなりました。
側から見たらどう思われるかは分かりませんが、確かに僕はその時傷が癒された感覚がありました。
自分の父親が忘れられていない、それが僕にとって1番重要でした。

つまり僕が言いたいのは身近な人の不幸もある程度触れてあげた方が案外人は癒されるものなんじゃないかな?と言う事です。

少なくとも僕はそうでした、皆さんはどうですかね?
弄るのはさておき人の悲しみは積極的に触れてあげた方が「関心を持ってくれてる」と感じるのが人間なのかな?と思いました。

ウーマンラッシュアワー村本さんの出現で日本の笑いが変わっていく事を願っています。
海外では芸人が社会風刺をネタに織り込むのは定番にすらなっていて、アメリカでは大統領本人の前で政権批判を笑いを交えてしたりします。

言うなればコメディアンが政治の監視役です。
村本さんは言います「この国の最大の悲劇は芸人の沈黙と国民の無関心」

痛快ですね、是非見てみぬ振りをしている自分に気付いた方はこの本を手に取ってみてください。

以上、人の悲しみを見て見ぬふりをしている貴方へ。



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