ジャズ・ピアノを始めよう

     積み上がるほどたくさんのジャズピアノ演奏をこよなく愛する愛好家にとっても、ジャズピアノの習得を始めたばかりのジャズピアノ初心者にとっても、またプロ並みもしくはプロのジャズピアニストにとっても、少なからずバド・パウエルやビル・エヴァンスやキース・ジャレットの影響を受けなかった人はないと思います。
 ご多分に漏れず私もやはり高校生のときに初めてバド・パウエルやビル・エヴァンスやキース・ジャレットの演奏を聴いたときに衝撃を受けました。なにかが違う、彼らの音楽そのものからエネルギーが発散しているというか、彼らの手からほとばしる音楽が力を持っている、そんなふうに感じたのです。
 こんな音楽を弾いてみたい思っても、ピアノを弾いたことがない私にとって、彼らの音楽にどう近づいたら良いのか皆目見当も付きませんでした。ピアノを両手で弾くことさえおぼつかない自分が情けなかったですが、とにかく始めるしかありませんでした。

 まずは街の本屋で買ってきたピアノ教本を前にして1ページの楽譜を1日かけて弾き切ろうと思いました。幸い家には妹が使っていたアップライトのピアノがあったので、それで練習をはじめました。ピアノを弾くといってもまだ両手で弾くことはできませんし、楽譜そのものもヘ音記号に慣れていないのでわけのわからない状態です。

 とにかく両手でピアノを弾けるようにならないと話にならないと思い、簡単な曲を選んで一曲両手で弾いてみるぞと決心しました。これを両手で弾けないならここでピアノはやめたほうがいいとも思っていました。曲はたまたま目にしたある曲を選びました。
 それは「峠の我が家」というタイトルの曲です。ジャズ曲もなんでもない曲です。でもその曲を一日かけて練習して、生まれてはじめて両手で一曲を弾けたときはとても感動しました。

 そこから私のジャズピアノ道が始まりました。ジャズの教本を片っ端から買って、ジャズコードを覚えたり、その教本に載っている数々のジャズメンのレコードを聴いたりコピーをしたりしました。高校から大学にかけて軽音楽部でひたすらジャズのコピーをしまくりました。

 まだ一回生なのに、ピアノトリオを組ませてもらって、人前で演奏できるようになりました。ピアノを始めてから3年が経っていました。石の上にも三年というのは間違いのない格言だと思います。

 ピアノを始めたのが、おそかったのか今でも譜読みは時間がかかります。しかし、音楽は楽譜通り弾く必要はないのです。クラシックを弾くのではない限り、楽譜通り弾く必要なんてないのです。どんどん自分流に音を作っていっていいのです。それがジャズの流儀です。

 特におとなになってから、なにか新しい楽器を始めると、耳は肥えているのに、自分の出す音があまりにみすぼらしくて愕然とするのではないでしょうか。でも心配はいりません。目標を持っていて、一歩一歩歩みを進めれば必ず目標値に到達します。これは登山と一緒です。


 現在わたしはジャズピアノライブを年に数回しつつ、ジャズピアノも教えています。自分でもキース・ジャレットのコピーをしたり、楽譜を作ったり日々研鑽しながら、自分のオリジナルな音楽を作り上げようと努力しています。とても充実した音楽ライフを送っています。年齢は関係ないと思います。ぜひ皆さんも音楽に情熱を傾けて毎日をワクワクして過ごしましょう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?