見出し画像

現代4コマの「本質」に関する考察【#現代4コマ】

こんにちは、きのじです。最近現代4コマという形式そのものに関する議論が多くみられる気がするので、自分の中での整理も兼ねて現代4コマの「本質」に関する考察を行います。


仮説


まず、一般的な漫画は作品世界に読者を没入させ、愛着を持たせるため、様々な工夫を行います。(コマ割り、キャラデザイン、視線誘導など)
そのなかで4コマ漫画はコマのありかたを固定し、漫画に用いられる種々の工夫を引き算する設ける代わりにシンプルさを出す形式と言えるでしょう。

4より少ないコマ数の漫画もありますが、ジャンルとして成立しているとは言い難く、そのため4コマ漫画は漫画のミニマルな形と言えます。

ここまでは一般的なイメージの確認でしたが、これを踏まえて自分が主張したい仮説はこうです。

現代4コマは4コマ漫画へのさらなる引き算の挑戦である

この仮説の説明の前に少し別の話をします。

2種類の処理

漫画に限った話ではありませんが、人は作品を鑑賞するときに2種類の情報処理を行います。それが「ボトムアップ処理」「トップダウン処理」です

ボトムアップ処理は脳の神経回路に生得的に備わっている処理、
トップダウン処理は経験や知識に基づき目の前のイメージの意味を推測する処理です。

ボトムアップ処理によって我々は人の絵を見れば人がいると感じ、家の絵を見れば家があると感じます。漫画は子供にもなじみが深いメディアであるということからも察せられるように、大部分をこのボトムアップ処理によって鑑賞可能な形式です。
一方のトップダウン処理は複雑かもしれないので例を挙げます。

この画像を見てどう思うでしょうか?何がモチーフなのかわからない人が多いかと思います。

こうするとどうでしょうか?今度はキリストのような男性の姿が見えると思います。ひとつ前の画像を見直しても同じように見えるはずです。

再考


ここで前半に提唱した仮説に立ち返ると、現代4コマはの本質は引き算的発想により、従来の4コマ漫画に慣れた読者が頼るボトムアップ処理をかき乱すと同時にトップダウン処理を刺激することであると思います。

このトップダウン処理への刺激のために従来の4コマには見られないものが追加されることもありますが、本質を担っているのは引き算の方だと思い、先ほどの仮説に至りました。

具体例

ここからは具体的な作品に即してみていきます。

3分経った
作:いととと

『3分経った』はコマから絵や変化を引き算しています。これによりボトムアップ処理からはタイトルとカップ焼きそばのようなものが見えるという情報しか得られませんが、それらと知識、経験を合わせることで読者は意味に到達します。

心電図
作:なむさん

『心電図』も同様にコマから絵などを引き算していますが、こちらの方がよりラディカルであると言えるでしょう。読者はタイトルと特徴的なコマ枠を認知し、人が死ぬときの心電図の波形の変化についての知識により意味を得ます。

以上、現代4コマの本質に関する考察でした。本質は引き算であると言いましたが、それゆえに作品単体では未完成であり、欠けている部分を埋める読者の積極的な参加とイマジネーションによって成り立っているとともに、その引き出し方が作品の面白さやオリジナリティにも大きく関わっているということを最後に付け加えておきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?