【非公式】2020年期補習所考査「財務報告に係る内部統制の監査」解答例

注意事項

・内容の正確性について
 本ノートの内容が正確であることについて、筆者は最善の努力を尽くしますが、必ずしも正確であることを保証することはできません。
 また、本ノートの内容が不正確であったために利用者が何らかの不利益を被った場合、筆者は責任を負いかねますので、各自の責任でご利用ください。
・本ノートの著作権について
 本ノートについて著作権者の許可として私の許可が必要な利用を行う場合、以下の条件を全て満たす限り、私の許可があったものとみなします。(ここで言う利用には、編集および再頒布を含みます。なお、引用その他の著作権者の許可を必要としない利用については、以下の条件に拘らず当然に可能です。)
1. (コピーレフト)
 二次著作物について、本ノートと同等の条件を満たす利用の場合、著作権者の許可があったとみなすこと。
2. (無償提供)
 二次著作物を他者に提供する場合は、無償で行うこと。
3. (不適切な編集の禁止)
 著しく不適切な編集等を行わないこと。当該編集には、明らかに誤った内容への編集や利用者に不利益を与えることを目的とした編集を含みます。
4. (盗作の禁止)
 二次著作物の提供に際して、原著作者が自身であるかのような表現を行わないこと。
5. (法令等の順守)
 原著作物が規制の対象となる各種法令や契約等について、二次著作物の提供に際しても当該法令・規則等を順守すること。これには、原著作物中の適法な引用について、二次著作物についても同様に適法な引用を行うことを含みます。

参照したリソース

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金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」『財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)』https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20191213_naibutousei/1.pdf

金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」『財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)』https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20191213_naibutousei/1.pdf

監査・保証実務委員会研究報告第32号「内部統制報告制度の運用の実効性の確保について」
https://jicpa.or.jp/specialized_field/20180406iri.html

監査・保証実務委員会報告第 82 号「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」
https://jicpa.or.jp/specialized_field/files/2-8-82-2-20200417.pdf


問1

答え
①資産の保全
②合理的な保証
③プロセス
④統制環境
⑤情報と伝達
⑥監査証拠
⑦内部統制報告書
⑧有効性
⑨適正に表示
⑩開示すべき重要な不備
⑪期末日

根拠
①~⑤

内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。

内部統制基準 1.内部統制の定義

⑥~⑨

 本基準に基づく内部統制監査の目的は、経営者の作成した内部統制報告書が、一般に
公正妥当と認められる内部統制の評価の基準に準拠して、適正に表示されているかにつ
いて、監査人が意見表明することにある。
 すなわち、内部統制監査においては、内部統制の有効性の評価結果という経営者の主張を前提に、これに対する監査人の意見を表明するものであり、経営者の内部統制の有効性の評価結果という主張と関係なく、監査人が直接、内部統制の整備及び運用状況を検証するという形はとっていない。(中略)
 しかしながら、内部統制監査において監査人が意見を表明するに当たって、監査人は自ら、十分かつ適切な監査証拠を入手し、それに基づいて意見表明することとされており、その限りにおいて、監査人は、企業等から、直接、監査証拠を入手していくこととなる。

実施基準 内部統制監査の目的

(4) 内部統制の有効性の判断
 経営者は、財務報告に係る内部統制の有効性の評価を行った結果、統制上の要点等に係る不備が財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高い場合は、当該内部統制に開示すべき重要な不備があると判断しなければならない。

内部統制基準
3.4 内部統制の有効性の判断

なお、経営者による内部統制評価は、期末日を評価時点として行うものとする。

内部統制基準
3.1 経営者による内部統制評価

問2

答え
①取締役会
②コンプライアンス
③子会社
④内部通報
⑤周知徹底
⑥内部監査
⑦独立性
⑧業績管理
⑨短期

根拠
研究報告p.9~p.12より。一応、この研究報告を知らずとも文脈から推察して解答できなくもない。

問3

解答例

売上高等の概ね2/3程度に達するように選定するとしてもよい

重要な内部統制については観察や再実施も 行う

全社的な内部統制の不備が報告されている事業拠点における業務プロセスを追加することがある

より強力な証拠を得られるように質問や関係書類の閲覧に加えて、より広範に観察や再実施を行う

サンプリングの適用については慎重に検討する。

根拠
①下記を要約して記述する。

内部統制評価の実施基準では、本社を含む各事業拠点の売上高等の金額の高い拠点から合算していき、連結ベースの売上高等の一定の割合に達している事業拠点を評価の対象とするとしている。この一定割合については、各企業により事業や業務の特性が異なることから必ずしも一律に適用すべきものではないが、全社的な内部統制の評価が「有効」である場合、連結ベースの売上高等の一定割合を概ね2/3程度とすることが示されている。

82号92

②④⑤
82号138の表を参照のこと。

経営者がこの全社的な内部統制の評価を「有効でない」と判断している場合は一定割合を引き上げることなどが考えられるが、どの程度引き上げるかは、有効でないとされた全社的な内部統制が財務報告に係る虚偽の記載及び開示が発生するリスクに与える影響の範囲と程度によって判断することになる。この場合、一定割合の水準を一律に引き上げるという方法などのほかに、全社的な内部統制の不備が報告されている事業拠点における業務プロセスを追加する方法などが考えられる。監査人は、企業グループの組織編成(中央集権型、分権管理型等)の状況も考慮し、その妥
当性を検討しなければならない。

82号94

問4

解答例
(1)
潜在的な影響額:230,000百万円
算定の根拠:
 所長による押印は売上高全体に関連する内部統制であり、その不備は売上高なので、売上高の総額を潜在的な影響額とする。
(2)
潜在的な影響額:80,000百万円
開示すべき重要な不備に:該当する
判断の根拠:
 潜在的な影響額80,000百万円は重要性の基準値800百万円を大きく上回るから、当該不備は重要である。したがって、開示すべき重要な不備に該当すると判断する。

根拠
(1)
 所長による押印がない受注があるということは、受注に関する承認という内部統制が適切に機能していない可能性がある。この場合、最悪の場合すべての受注、ひいては売上高全体について内部統制の不備の影響を受ける可能性がある。そのため、研究報告を踏まえると売上高の総額を潜在的な影響額とすることになる。
(2)
 研究報告によれば、補完統制が有効であれば、補完統制の適用される金額については潜在的な影響額から減額できる。本問では10万円以上の注文について有効な補完統制があるから、その総額150,000万円を減額して80,000万円となる。
 研究報告によれば、一定の金額を上回る虚偽記載は開示すべき重要な不備になるから、重要性の基準値を上回ることをもって開示すべき重要な不備と判断できる。

監査人は、業務プロセスに係る内部統制の不備の程度を判断するに当たっては、当該業務プロセスに係る内部統制の不備がどの勘定科目にどの範囲で影響を及ぼすかを検討する。潜在的な影響額は、当該不備により影響を受ける最大の金額をいい、不備の識別された内部統制により影響を受ける財務諸表の勘定残高や取引種類の取引総額に基づき算定する。また、特定の内部統制の不備を補う補完統制がある場合、不備の潜在的な影響額を補完統制の効果を考慮して減額できることがある。例えば、不備のある内部統制により影響を受ける勘定残高又は取引種類のうち、一定金額以上の取引については別の内部統制(補完統制)が適用される場合、補完統制が適用さ
れる取引の金額は不備の潜在的な影響額から除くことができる。

82号196

 内部統制の開示すべき重要な不備は、一定の金額を上回る虚偽記載、又は質的に重要な虚偽記載をもたらす可能性が高いものであり、重要性を判断する際には、金額的な重要性及び質的な重要性の双方について、原則として連結財務諸表に対して検討を行う。なお、内部統制の不備に関わる重要性の判断指針は、最終的には財務諸表の信頼性に関わることから、財務諸表監査における重要性と同一になると考えられる。

82号188