例題公開、問題コンセプトなど

本大会で使用する問題の傾向を紹介するとともに、自分が作問する際に意識していることなどを書き連ねます。本大会における問題コンセプトは「出したい問題を出したいように出す」です。上手く言語化できているかわかりませんが、この記事で本大会で使用する問題の雰囲気が少しでも伝われば幸いです。

例題の前に問題文に関して、自分なりのこだわりについていくつか述べます。

こだわり1:答えとなる事物をよく知っている人がしっかりと答えにたどり着くことのできる問題文であること

ケース1:大学で物理学を専攻している人が、物理学にまつわる用語が答えとなるクイズを出されたときに、その用語を十分に理解しているのにも関わらず押すことが出来ずスルーになってしまい、答えを聞いて「それでよかったのか」となる

ケース2:日本の音楽界に詳しい人が、日本のロックバンド名が答えとなるクイズを出されたときに、問題文中で「代表曲」として挙げられた曲を知らなかったのでスルーしたが、答えを聞いたら知っている上にフェスなどで見たことがあるバンドだった

上二つに示したケースを、見たことがある人や自分自身で経験したことある人は一定数いると思います。このケース、アカデミックな物事を問うときに起こりがちな気がするのですが、今回の使用問題では、なるべくそういったことを起こさせない問題文を作ることを心がけてます。
ただ、ここをクリアするには答えとなる事物の本質をしっかりと理解した上、それをある程度の文字数にまとめ上げるという簡単ではない作業を行う必要があります。また、本質を追求するあまり、そのジャンルに明るくない人からしたら何を言っているかチンプンカンプンな問題文になってしまうということも起こりえます。だからこそ、これが難しいと感じた場合は潔く諦め、同じジャンルで問うものを変えるなどします。問い方を工夫するなどしてここをクリアするという手段を取ることもあります。

こだわり2:答えとなる事物をよく知っている人がいち早くボタンを点けることのできる問題文であること

以下の文章は2021に開かれた自分主催のクイズ大会『KOQ』のコラムから抜粋したもの(一部編集)です。



409.いずれも今年(2021 年)公開された映画で、『花束みたいな恋をした』では八谷絹役を、『るろうに剣心 The Final』では雪代巴役を演じた女優は誰でしょう? A.有村架純

一つ目のヒントである「八谷絹(はちたにきぬ)」を音声として聞くと、
男性か女性かは映画を見ていない人にとって伝わらないと思います。つまり「花恋には有村架純と佐藤健が出演している」という断片的な記憶のみ持っている人にとっては1 フリ目のみでは中々押せないわけです。しかしながら、何となく出演者を知っている人なら「有村架純」と「菅田将暉」の2 択がぼんやりと浮かびます。そして2 フリ目を聞いて「今年のるろ剣に菅田将暉は登場していない」と判断するか「今年のるろ剣に有村架純が出演していた」と判断するかは人それぞれですが押す動機付けにはなると思います。この問題は「『花恋』の出演者やあらすじをしっかり押さえている」「『花恋』の出演者を何となく知っている」「『花恋』は知らないが『るろ剣』は知ってる」といった風に、知識の幅のグラデーションを綺麗に付けることが出来ています。


ここで書いた「知識の幅のグラデーション」がまさに「答えとなる事物をよく知っている人がいち早くボタンを点けることのできる問題文」を実現するために意識しているところです。要は「文頭確定」みたいなのを割と無くしたいと考えてます。上で十分説明されているのでこれ以上説明を加えることは無いです。

こだわり3:自然な日本語で書かれた問題文であること

言わずもがなな こだわり ではあるのですが、やはり意識しなければいけない点だと思います。問われている対象が分かりづらかったりミスリードが起こりやすい問題文を作らないことを心がけます。クイズをやり始めて11年目になりますが、いまだにここを完全にクリアするのは難しいです。大会当日まで可能な限り問題文は精査いたします。

以上3点が問題文に関して心がけている点です。これ以降は本大会の例題です。ただ例題を並べるだけでなく、問題コンセプトを伝えるための説明文を付け加えております。

例題1.よく知られた事物・事象に「面白い」と感じる(前)フリを付けたもの

例題1-1:2019 年よりチーム名にちなんだ「ある動物」を保護する活動を行っている、埼玉県に本拠地を置くプロ野球のチームは何でしょう?
解答:西武ライオンズ(「SAVE LIONS」というキャンペーン ※2022シーズンでこの活動は終了)

例題1-2:最期は「木枯らしや跡で芽を吹け川柳(かわやなぎ)」という「辞世の句」を詠んでいる、俳諧の一種「川柳」の名の由来となった江戸時代の歌人は誰でしょう?
解答:柄井川柳

ここでいう「よく知られた」とは一般認知度というよりは、クイズプレイヤーの中では一定数の知名度を持つという意味合いです。また、1-1と1-2では作問の動機が少し違います。
1-1はニュースでSAVE LIONSキャンペーンの話をしてるのを見て作問したのに対し、1-2は何となく柄井川柳を問いたいと思ったときに「柄井川柳の読む俳句があったら面白いなあ」みたいな動機で調べた結果見つけたものです。要は、1-1は前フリから制作した問題で、1-2は後フリから制作した問題です。

例題1-1 類題:その出っ張った形になぞらえて岬の名前に関されることも多い、動物の嗅覚を司る器官といえば何でしょう?
解答:鼻

例題1-2 類題:2014 年にはイスラエルの大統領選に立候補するも落選し、マスコミからは”準”大統領と皮肉られている、"準"結晶を発見した功績から 2011 年のノーベル化学賞を受賞しているのは誰でしょう?
解答:ダニエル・シェヒトマン

また、1のような問題をペーパークイズやボードクイズなど、ある程度長いシンキングタイムが用意されているラウンドで出題する場合は、答えに辿り着きやすい後フリをカットする(1フリにする)ということもします。これは、限られた情報から答えを導く「ひらめき力」的なものを評価したいという考えからです。

類題:中国語では「三文魚」と表記される魚は何?
解答:サーモン(「サーモン」の当て字)

類題:エドワード・ヨードンが4 つに分類した「デスマーチ」の型の中で、「満足度は高いが成功する可能性は低い」という型の名前に付けられている言葉は何?
解答:kamikaze

ここで言う「面白い情報」とは完全に主観で、文学に長けている人からしたら柄井川柳が俳句を詠んでいるは何も特別面白くは無い情報なのかもしれません。面白さが人によりけりな指標であることを理解したうえで、このようなまとめ方をしました。あと数問このコンセプトに沿った問題を載せておきます。

類題:三二酸化鉄という食品添加物によって特徴的な色が付けられている、滋賀県近江八幡市などで広く食べられているこんにゃくは何でしょう?
解答:赤こんにゃく(もっと植物由来(シソとか)の色かと思ったらゴリゴリの食品添加物による色)

類題:『源氏物語』にならって全54 章から構成されている、プレイボーイの世之介を主人公とした井原西鶴の長編小説は何でしょう?
解答:『好色一代男』

類題:その交友関係の広さから同グループの櫻井翔からは「イケメンのハブ空港」とも言われた、アイドルグループ・嵐の最年少メンバーは誰でしょう?
解答:松本潤

類題:作戦が行われた山荘は「談合谷」という遺跡になっている、1177 年に院の近臣らが平氏打倒の計画を行った事件を何というでしょう?
解答:鹿ケ谷の陰謀

可能な限りこのコンセプトに沿った問題文を制作したいという気持ちはあるものの、このような問題は量産が難しいです。そのために次に書かれた例題2に即した問題のほうが使用問題全体に占める割合としては多くなります。

例題2.シンプルに知識量を問うもの

これに属するものは単純に「知識勝負」だと思って大丈夫です。自分が日常生活で手に入れた情報から、ジャンルのバランスを調整するために意識的に作問されたものまで割と何でもありな括りです。何でもありではあるものの「出したい問題かどうか」は重視します。ここでいう「出したい」は「面白いと思ったからみんなに知ってもらいたい」という気持ちと割と近いです。
作問を行った結果として例題1ほどではないが面白いフリがつくこともあります。
それでは例題です。

例題:東経25 度線という数理的国境によって国境の大部分が定められいるのは、どことどこの国境?
解答:エジプトとリビア

例題:初代の田中光顕から55 代の林讓治まで続いた、戦前日本において内閣の補助を行った、現在の内閣官房長官の前身にあたる官職は何?
解答:内閣書記官長

例題:インターネット上で無料でダウンロードできる「Cakewalk by BandLab」や「Domino」といったソフトは何をするためのソフトでしょう?
解答:DTM、作曲

例題:シンガーソングライターの大森靖子を妻に持つ、ロックバンド「凛として時雨」のドラムを務める人物は誰でしょう?
解答:ピエール中野

例題:ハイブリッドカーには搭載されないことも多い、エンジンの回転数を示すメーターを何というでしょう?
解答:タコメーター

例題:マルクス主義の構造主義的な再評価を目指し、『マルクスのために』や『資本論を読む』といった著書を発表したフランスの哲学者は誰でしょう?
解答:ルイ・アルチュセール

例題:ハンス・ハインリヒ・ランドルトが発見した亜硫酸水素ナトリウムとヨウ素酸カリウム溶液を用いたものなどが良く知られる、反応を開始してから一定時間が経つと突然変色や沈殿物の生成が起こる化学反応のことを何というでしょう?
解答:時計反応

例題:静岡県の天城山、岐阜県の郡上八幡、兵庫県の丹波篠山が三大猟場とされる動物は何でしょう?
解答:猪

例題:生(しょん)、旦(だん)、浄(じん)、丑(ちょう)という4つの役柄が瞼譜によって区別される、中国の古典演劇は何でしょう?
解答:京劇

例題:妻・リツ子の死を描いた連作や、『火宅の人』などの作品で知られる、日本の小説家は誰でしょう?
解答:檀一雄

例題3:シンプルに出したい問題

本大会の問題コンセプトである「出したい問題を出したいように出す」が一番よく反映される場所ところです。当然全問題「出したい問題」であることは前提とした上で、自分の趣味趣向がよく反映されていることから「これに答えて会場が盛り上がるのが見たい」や「これを知っている人に出会いたい」と強く思うような問題群です。自分と趣味趣向が合わない人でも楽しめる大会にするために、使用問題全体に占めるここに属する問題の割合は上手く調整いたします。また、僕の趣味趣向を知っているかどうかによる参加者の有利・不利はなるべく無くしたいので、自分の趣味趣向やバックボーンに関してこの例題の後に紹介いたします。
それでは例題です。

例題:『ヤマサキセイヤと同じ性別』『WANIMA と同じ人数』『いきものがかりと同じ編成』などの楽曲があるように「メンバーは全員男」、「メンバーは3 人」、「編成はボーカル1 人とギター2 人」である、日本のロックバンドは何でしょう?
解答:超能力戦士ドリアン

例題:『Wii Sports』に収録されたボウリングのミニゲーム「なぎ倒し」で、最終フレームの10 フレーム目に置かれているピンは全部で何本?
解答:91本

例題:「バター」「はちみつ」「パセリ」「マスカルポーネチーズ」の4つの素材による甘じょっぱい風味が人気の、カルビーのポテトチップスのフレーバーは何でしょう?
解答:しあわせバタ~

例題:初代のものはルンバを、2代目のものはラジコンを動力に動いている、空気階段のコントに登場する架空のヒーローは何でしょう?
解答:メガトンパンチマン

例題:太平洋上の島国「キリバス共和国」をアルファベットで正しく表記した際、[?][?]に入る二文字は何?
Republic of Kiriba[?][?] ※同じ文字が入るわけではない
解答:ti

自分の趣味趣向やバックボーンなど

まず自分のアカデミックな面でのバックボーンです
文理:理系
高校で選択した理科:物理・化学
高校で選択した社会:日本史
大学での専攻:情報工学(特に音声情報処理の分野)

次にabcのジャンル区分に基づき、「短文基本レベルの難易度」で問題が出題されたと仮定して、得意ジャンルをランキング形式にしました。番号が大きいほど苦手ジャンルです。
1.生活
2.芸能
3.理系
4.日本史
5.言葉
6.芸術
7.文学
8.世界史
9.漫アゲ
10.地理
11.公民
12.スポーツ
1,2は割と抜き出ていて、3~7が団子で、ちょっと空いて8~11も団子で、しっかりと12が一番苦手という感じです。

得意に関してもう少し深堀りすると、生活ジャンルは特にグルメが得意なのだと思います。グルメの問題を名大クイ研フリバで取っては「食い物に強い」ってよく言ってます。グルメをはじめとして、日常生活で手に入れた情報に強いのかなと思います。これは他のジャンルでも言えることです。
芸能は特にお笑い・邦楽に詳しいです。お笑いライブにも音楽ライブにもよく行ってます。音楽に関しては大学で軽音楽部に入っていることから、周りからもいろんな情報が耳に入ってきます。
全体的に趣味趣向はだいぶ非学問よりです。漫アゲやスポーツは苦手ですが…

得意ジャンル・苦手ジャンルはこんな感じで、ジャンルごとに問題が作りやすい・作りにくいを分類すると下のようになります。

作りやすい…生活、芸能、日本史、世界史、文学、芸術
どちらでもない…公民、言葉、地理
作りにくい…理系、漫アゲ、スポーツ

生活・芸能が作りやすくて、漫アゲ・スポーツが作りづらいのはまあ得意・苦手によるものです。日本史・世界史・文学・芸術が作りやすいのは比較的短い文章で答えるのに足る情報を出しやすいというところにあります。固有名詞が入れやすいって感じですかね。逆に理系は80文字程度の問題文にまとめたときに別解の存在とか説明の不十分さとかが不安になっちゃいがちです。公民・言葉・地理はほんとにどちらでもないです。

得意・苦手はあるものの、「面白い情報」へのアンテナの張り方は割と均等なのかなと思います。情報の仕入れ先はインターネットが多いです。ネットニュースやSNS、YouTubeなどから入ってくる情報から作問することが多いです。

中々まとめ上げるのが難しいと感じたので、ここの見出しは随時更新していこうかなと思ってます。

最後に

以上が例題とかその他諸々になります。最後に元も子もないことを言いますが、本大会で使用するすべての問題がこのコンセプトに沿えるかどうかと言われると正直微妙です。自分ひとりで使用問題を全て作る以上は(現状600問制作予定)多分味気のない問題も出ます。まあ味気のない問題も「出したい問題」ということにしておけばセーフってことでお願いします。

問題コンセプトの記事って書くの難しいっすね。もっと小洒落た文章に仕上げたかったです。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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