【翻訳】Twitterファイル #9 - TwitterとCIA

この投稿はマット・タイービ(Matt Taibbi、@mtaibbi)氏の2022年12月25日のツイート(下記のリンクを参照)の翻訳です。
誤訳や訳漏れがある可能性がありますので、記事の内容を参考にする場合は必ず下記リンクの英語原文に依拠してください。
また、できる限り原文に添付されている画像の内容を確認しなくても話の流れを理解できるように表現を変えたり、日本人に伝わりやすいように原文にはない文言や説明を追加したりしておりますので、ご承知おきください。
英語原文:


1. Twitterファイル
TwitterとCIA
数週前から始まった「Twitterファイル」シリーズにより、FBIとTwitterが緊密に連携してSNSコンテンツのモデレーションを行ってきたことが明らかになったことを受け、FBIは水曜日に声明を発表した。
 
2. FBIは疑惑に対して反論しなかったが、「FBIの信用に傷をつける」ことを「唯一の目的」として「偽情報」を発信する「陰謀論者」を非難した。

3. FBIの信用に傷をつけることが「唯一の目的」であるなら、我々は志が低いと思われても仕方がない。しかし、Twitterの内部資料を見ると、さまざまな政府機関が自ら信用を傷つけていることが分かる。となれば、FBIだけで終わるはずがない。
 
4. 内部資料からは、FBIが国務省、国防総省、CIAなどのさまざまな連邦政府機関が参加する大規模なSNS監視・検閲プログラムのパイプ役を担っていたことが見てとれる。
 
5. この活動はTwitterファイル#6(以下のリンクを参照)で取り上げた80人規模の外国干渉捜査本部(Foreign Influence Task Force、FITF)より遥かに大規模であり、地方警察、メディア、州政府などの比較的小さな機関からも幅広く円滑に要請を行えるようにしている。
(【翻訳】Twitterファイル#6:https://note.com/kininaruhonyaku/n/nd83866234d96
 
6. Twitterはあまりに多くの政府機関と頻繁に連絡を取っていたため、幹部は何が何だか分からなくなっていた。今日は国防総省で、明日はFBI。週次の電話会議もあれば、月次会議もある。あまりにも目まぐるしかった。

7. 結局、FITFやFBIサンフランシスコ支局を通じて、あちこちから大量の公式「報告書」がTwitterに流れ込んだ。
 
8. 2020年6月29日、サンフランシスコのFBI捜査官であるエルビス・チャン(Elvis Chan)が、2人のTwitter幹部にメールを送り、次回の会議に「OGA」を参加させてもよいか尋ねている。

9. 複数の元情報部員や請負業者によると、OGA(Other Government Agency)は「他の政府機関」を意味し、遠回しにCIAを指している。一人は、「ミステリアスだと思っているのでしょうが、余計に目立ってしまっているだけです」と笑っていた。
 
10. 「他の政府機関とは、私が27年間勤めた場所です」と元CIA職員のレイ・マクガヴァン(Ray McGovern)は述べている。
 
11. Twitter幹部の中には元CIAがおり、それは社内では公然の秘密だったのだが、チャン捜査官は会議に関するそのメールの中で「OGA」(すなわちCIA)のことをその幹部の「元雇用主」と呼んでしまった。
 
12. メールを受け取った2人の幹部のうち、最初にそれに気付いた幹部は取り繕って隠し通すことを諦め、もう一方の法務担当上級幹部スタシア・カーディル(Stacia Cardille)にメールを送り、「かつてCIAに勤めていた方なので、エルビスはそう言ったのです」と説明している。

13. Twitter経営陣の中でも特に注意力のあるカーディルは、「もちろん知っています」「沈黙しておけば、私は知っているということが伝わると思いました」と返信した。

14. その後、カーディルは、元FBI弁護士でTwitterに雇用されたばかりだったジム・ベイカー(Jim Baker)に会議の詳細を連絡した。

15. カーディルは、「FBIを呼びましたが、CIAも参加するようです」とベイカーに伝え、「あなたは参加していただかなくて構いません」とわざわざ付け加えている。
 
16. 政府はTwitterだけでなくほぼすべての大手テック企業と常に連絡を取っていた。
 
17. たとえば、Facebook、Microsoft、Verizon、Reddit、Pinterestなどだ。企業同士も政府を交えずに定期的に会議を行っていた。
 
18. 最も日常的に開催されていたのは、複数の機関で構成される外国干渉捜査本部(FITF)の定例会議であり、多数の幹部とFBI職員に加え、「ODA」と称する人物がほぼ毎回1-2名参加していた。

19. FITFの会議では、ほぼ必ず、最初または序盤に「OGAのブリーフィング」が行われ、通常その議題は外交問題だった。ここであることに気付く。

20. FITFとFBIサンフランシスコ支局は、「外国による干渉」への対応を正式に付託されているにもかかわらず、州政府や地域警察といった国内機関からの大量のモデレーション要請を伝えるパイプ役になっていたのだ。

21. Twitterへは、Teleporterというプラットフォームを通じてたくさんの要請が送られてきた。TeleporterはFBIからTwitterへの一方向の連絡手段であり、時間が経つと履歴が削除される。

22. 特に2020年の選挙が迫ると、FITFとFBIは問題のあるアカウントを何百個も記載したリストをTwitterに送付し、対応を要請した。

23. 選挙前にはサンフランシスコ支局から矢継ぎ早にメールが届き、多くの場合、Excelファイルが添付されていた。

24. 政府からの要請が非常に多かったため、Twitter社員は優先順位を決めるための仕組みを即席で作らなければならなかった。

25. FBIは明らかにTwitterポリシーに合わせて調査を行っており、要請の際にはほぼ必ずどこかに、時には件名に、「サービス利用規約違反のおそれ」と記載されていた。

26. Twitter幹部は、FBIにはTwitterポリシーへの違反を探すための人員がいるようだということに気付いていた。
 
27. スタシア・カーディルは次のように述べている。「バルチモア支局と本部に、キーワード検索で違反を探している職員がいます。この5日間でFBIの要請に対処したのは、これが10回目です。」

28. 元FBI弁護士のジム・ベーカーもその考えに同意し、「Twitterポリシーへの違反をFBIが調査しているとは、おかしな話です」と返した。

29. FBIニューヨーク支局は、米国のニュースサイトDaily Beastの記事で取り上げられたたくさんのアカウントの「ユーザーIDとユーザー名」を提示するよう要請したこともあった。上級幹部は、この要請に応じることを「支持」し、「全く心配はない」と述べている。

30. 「外国干渉」捜査本部はDHS(米国国土安全保障省)と共に大量の報告書を転送してきたが、そのほとんどが非主流派のコンテンツに関する「国内問題」の報告書であることを不思議に思った者はいなかったようだ。

31. 2017年に上院がTwitterをはじめとするプラットフォーム企業を連邦議会に引っ張り出して以降、「外国による干渉」はモデレーションを強化するための表向きの口実とされていたのだ。

32. その裏で、Twitter幹部は、Twitterなどのプラットフォームでおそらく外国による干渉が行われていると主張する政府に手を焼いていた。

33. Twitterの内部資料によると、幹部は外国による干渉が行われているという説を検証するよう常に圧力をかけられていたが、重要な主張を裏付ける証拠は見つからなかったことようだ。
 
34. あるアナリストは「ロシアとのつながりは見られませんでした」としつつも、「ブレインストーミング」をすれば「強いつながりが見つかる」かもしれないと提案している。

35. 別のアナリストは、「状況から見てつながりがある可能性は極めて低い」と述べている。

36. 前信頼・安全部門責任者のヨエル・ロス(Yoel Roth)は別の事案で、「該当するアカウントはありません」と述べ、検証を要請されたアカウントの一部は「明らかにロシア人」だが、「サウスカロライナ州の賃貸住宅」のアカウントもあると指摘した。

37. ロスはさらに、ニコラス・マドゥロ(Nicolas Maduro)大統領を支持するベネズエラ人のアカウントに関する事案でも、ロシア企業であるInternet Research Agency(IRA)とのつながりはないと結論づけている。理由は、そのアカウントのツイート数が極めて多いことだ。

38. そのベネズエラ人は「ツイート数が極めて多く...それは他の多くのIRAの活動には見られない特徴です」と、ロスは述べている。
 
39. 元「OGA」の経歴を持つ例の幹部は、ある重要なメールで、国務省が不確定であるにもかかわらずロシアによる干渉を公に主張しているというニュースを受けて、Twitterにとって不都合なことが起こっていると説明した。
 
40. その幹部は次のように述べている。「Twitter側に技術的な証拠がなかったため、私は基本的に放置して、もっと証拠が出てくるのを待っていました。政府側がより積極的に追究し始めているということは、この件について私たちの道は閉ざされつつあります。」

41. つまり、「政府側」が「より積極的」になったため、独立した立場を取るというTwitterの「道」は閉ざされたのだ。
 
42. 「OGA」は最終的に、FBIやFITFを通じて、TwitterだけでなくYahoo!、Twitch、Clouldfare、LinkedIn、さらにはWikimediaとも情報を共有するようになった。

43. 元CIA情報員で内部告発者でもあるジョン・キリアコウ(John Kiriakou)は、この報告書(下記の画像リンクを参照)の書式を覚えているという。
(画像:https://pbs.twimg.com/media/Fkwe7MPaEAcn1Do?format=jpg&name=4096x4096

44. キリアコウは「まさにこれです」と言い、「(切り取り線(「Tearline」)の)上の切り取られる部分に書かれているのが、作成元のCIAオフィスとコピーが送られたオフィスです」と説明した。
 
45. インターネットプラットフォームが外交政策に関するニュース記事のモデレーションについて情報機関から指示を受けているのかどうか、疑問に思っている人はたくさんいるだろう。どうやらTwitterは、FITFやFBIから指示を受けたことがあったようだ。
 
46. 次に取り上げる報告書は、その内容が事実かどうか、国内問題の報告書よりも遥かに大きな議論を呼ぶものだ。
 
47. 情報機関が作成したある報告書には、「ウクライナの『ネオナチ』プロパガンダ」とつながりのあるアカウントが記載されている。そのプロパガンダとは、たとえば、ジョー・バイデンが2014年にクーデーターの画策を支援し、「自身の息子をウクライナの石油・天然ガス企業であるBurismaの取締役にした」というものだ。

48. 別の報告書では、ワクチン供給に関する「汚職」があったと「バイデン政権」を非難しているアカウントはロシアの工作活動に関与していると述べられている。

49. 多くの場合、情報は簡潔な報告書の形式で提供され、親マドゥロ派、親キューバ派、親露派などと見なされたアカウントの長いリストが添えられていた。

50. あるレポートによると、「ウクライナ人が人権侵害を行っているという噂を立証しようとしている」ウェブサイトがあり、それはロシア人工作員によって運営されているという。

51. このようなアカウントの怪しい素性に関する情報は、正しいかもしれない。しかし、ネオナチ、ウクライナのドンバス地方における人権侵害、そして米国政府に関する情報の中にも、少なくとも多少は正しいものがあるかもしれない。そのような情報を遮断すべきだろうか。
 
52. これは言論のジレンマという難しい課題だ。米国人(や外国人)が親マドゥロ派や反ウクライナ派のアカウントを閲覧することを、政府が妨げようとしてよいのだろうか。
 
53. 情報機関の報告書には、「反ウクライナ的な言説」を唱えた新聞、ツイート、YouTube動画の長いリストだけが記載されていることが多々ある。

54. いつもではないが、場合によっては、TwitterとYouTubeはそのようなアカウントを停止させた。しかし今なら皆さんにも、ヨエル・ロスに圧力をかけていた「当局(拡大解釈するならインテリジェンス・コミュニティ)」(Twitterファイル#6を参照)の正体が分かるはずだ。
(【翻訳】Twitterファイル#6:https://note.com/kininaruhonyaku/n/nd83866234d96

55. 「誤情報」と「ゆがんだプロパガンダ」の境界は曖昧だ。「より積極的」になった政府からたくさんの企業にたくさんの報告書が送られている状況に、私たちは安心してよいのだろうか。
 
56. CIAはまだ、Twitterなどのテック企業とCIAの関係がどのような性質のものであるか、コメントしていない。Twitterが筆者の行動や執筆内容について意見することはなかった。しかし、調査は第三者が行ったため、筆者が目にしたものは制限されていた可能性がある。
 
57. 今後もバリ・ワイス(Bari Weiss、@bariweiss)、マイケル・シェレンバーガー(Michael Shellenberger、@shellenbergermd)、リー・ファン(Lee Fang、@lhfang)、そして私が、新型コロナウイルスからTwitterと議会の関係まで、幅広い問題について新たな調査結果を公開する予定だ。



注:Twitterファイルにおけるリベラルと保守
 
大手メディアはどんなニュース記事にも難癖をつけて貶めようとする。Twitterファイルにも同じことが行われている。しかも、ワシントン・ポストはさらりと、筆者を「保守的なジャーナリスト」と呼んだ。

このプロジェクトは、左でも右でもない。筆者が関心を持っているのは、Twitterのような企業がどのように情報機関に取り込まれ、その手先となってしまったのかであり、これはリベラルか保守かではなく、明るい未来か破滅かを分ける問題なのだ。しかし、そのような話は受け入れられづらく、私たちはいつもの愚かな行為を繰り返している。
 
それでも、善意の人々は疑問を抱いている。
 
以下の記事のとおり、筆者は長年にわたって左派にインタビューをしてきたため、左派の意見がたくさん「モデレーション」されていることを知っている。
(記事:https://t.co/UiU6gvPs2X
 
しかし、Twitterファイルの記者は皆、優先順位を決めて時間を使おうとしており、ほとんどの記者は個別のアカウントを調べるのではなく、「FBI」、「COVID」、「DHS」といった一般的な言葉を検索して調べている。
 
筆者は、内部告発ウェブサイトWikiLeaksの創設者であるジュリアン・アサンジ(Julian Assange)に関連するアカウントを調べた。「PV2」(Twitterユーザーのプロフィールを表示して「トレンドブラックリスト」などのフラグの適用状況を確認するための社内システム)で彼のページを見ても異常な点はなく、単に使用されなくなったアカウントが自動処理によって停止された状態であり、政府主導の措置が講じられた記録は見当たらなかった。

しかし、だからといってそのような介入が行われていないとは言い切れない。Slackやメールなどで行われたかもしれない。記者たちは干し草の山の中から針を探すような調査を続けているのだ。
 
共和党支持者と民主党支持者の両方に対して措置が講じられたことも何度かある。たとえば、複数のFBI支局が明らかに「November 4」(11月4日、2020年大統領選挙の投票日)を検索し、他人をだまして投票に行かないように仕向けている人を見つけ出そうとしていた。その結果、途方もない数のバイデン支持者とトランプ支持者の両方が網にかかった。

また、左寄りなのか右寄りなのか曖昧で面白い取り組みもあった。たとえば、Twitterは、バイデンまたはトランプに関わるモデレーションについてのあらゆる判断を4人の幹部だけで行うようにすることを検討していた。

しかし、Twitterの社内文化は明らかに、政治指向が偏っていた。筆者は、「RNC」(共和党全国委員会)と「DNC」(民主党全国委員会)の両方を検索し、上級幹部の名前と照合してみた。そうすると、「RNC」ではTwitterを訴えている共和党員に関するページ、「DNC」では大量の執拗なモデレーション要請が見つかった。
 
後者の中には、真相に迫るかなり面白いデータもあった。
 
また、Twitterが初めからジョー・バイデンの風刺動画を削除しないという判断を下した事例が複数ある。その理由は、動画が明らかにパロディであり、「現実世界で害を及ぼしたり、混乱を招いたりする可能性は低い」と考えられたからだ。
 
たとえば、咳をするバイデンの姿を切り取り「人をだますことを意図した編集」を施した動画(https://t.co/VVbHIz82dK)や、トランプが投稿した「Todos Con Biden」のイベントに関するパロディ動画(https://youtu.be/n-CgjeGJUFQ)がある。
 
Twitterには通常、ある口達者なDNC職員から苦情が寄せられていて、その頃はまだそのようなコンテンツに警告ラベルが適用されていた。しかし、ある事案で、Twitterは動画を削除することも警告ラベルを適用することも拒否した。
 
その際、「この動画は副大統領の演説を改変せずに抜粋したものであり、文脈は無視されていますが、人をだます意図はないと弊社は考えています」とTwitterが伝えると、その職員は「そのルールは改正する必要があります」と怒りをあらわにした。
 
その過程でTwitterはモデレーションの判断基準が記された奇妙なフローチャートを送っている。そのチャートで特に気になるのは、人をだます意図のないコンテンツにもラベルが適用される可能性があるという点だ。咳をするバイデンの動画がその後どうなったかよりも、このチャートの方が興味深い。

現在はそのような機械的な言論統制が一様に行われているとしても、ユーザーには見えない執行機関職員がレバーを押せば、明日には方針が変わる可能性がある。
 
このような話は、誰がやったのか、誰が不利益を被ったのかということばかりが注目され、延々と議論される。しかし、Twitterファイルの意義はどのような力が働いたのかを皆さんに示すことであり、記者たちはそれを試みているのだ。


訳者注記:
誤訳や訳漏れがある可能性がありますので、記事の内容を参考にする場合は必ず上記リンクの英語原文に依拠してください。

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