【翻訳】Twitterファイル #6 - TwitterはFBIの子会社なのか?

この投稿はマット・タイービ(Matt Taibbi、@mtaibbi)氏の2022年12月17日と2022年12月19日のツイート(下記のリンクを参照)の翻訳です。
誤訳や訳漏れがある可能性がありますので、記事の内容を参考にする場合は必ず下記リンクの英語原文に依拠してください。
また、できる限り原文に添付されている画像の内容を確認しなくても話の流れを理解できるように表現を変えたり、日本人に伝わりやすいように原文にはない文言や説明を追加したりしておりますので、ご承知おきください。
英語原文:


1. Twitterファイル #6
TwitterはFBIの子会社なのか?
 
2. Twitterの内部資料の調査では毎日、政府がどのようにSNSのコンテンツを収集、分析、ピックアップしているのかが明らかになっている。
 
3. Twitterは、まるでFBIの子会社であるかのように、FBIと絶えず広範に連絡を取っている。
 
4. 2020年1月から2022年11月までに、FBIとTwitterの前信頼・安全部門責任者ヨエル・ロス(Yoel Roth)との間で150件以上のメールがやり取りされている。
 
5. その中には日常的なやり取りもあり、たとえばサンフランシスコ支局の捜査官であるエルビス・チャン(Elvis Chan)が新年の挨拶と共に「翌週に予定されている四半期ごとの電話会議」への出席確認を行っている。そのほか、捜査中の事案に関係のあるTwitterユーザーについての情報提供を要請している場合もある。
 
6. その一方、FBIがTwitterに選挙に関する誤情報に対して措置を講じるよう要請していることが、驚くほど多い。これには、フォロワー数の少ないアカウントによるジョークのツイートさえ含まれている。
 
7. FBIは、FTIFと呼ばれるSNS特捜部を2016年の大統領選挙の直後に発足させ、捜査官を80人に増員し、Twitterと連絡を取って外国勢力による工作の疑いや選挙に関する不正行為などの特定に取り組んできた。
 
8. Twitterには連邦政府の情報局や法執行機関が介入しており、たとえば米国国土安全保障省(DHS)が警備会社やシンクタンクと協力してコンテンツのモデレーションを行うようTwitterに圧力をかけていた。
 
9. 政府がテロ容疑者の追跡や景気予測などのあらゆる目的で大量のデータを分析していることは、周知の事実だ。
 
10. しかし、Twitterの内部資料の調査により、FBIやDHSといった政府機関が事前にピックアップしたSNSコンテンツを複数の手段で日常的にTwitterに送信し、モデレーションを要請しているという新たな事実が判明した。
 
11. 目を引くのは、政府からのレポートの多さだ。その中には一般から通報を受けて収集された情報もある。

12. 分からないのは、FBIやDHSといった政府機関は組織内で自らピックアップ作業を行っているのか、それとも外注しているのかだ。「政府内ではあらゆる種類の大量のデータ検索やAI検索を行えるということを私に証明していただかなければ、その疑問には答えられません」と元情報部員は述べている。
 
(訳者注:下記13のツイートは、原文では番号の記載が漏れていますが、訳文では番号を追記しました。)
 
13. 「Twitterご担当者様」から始まるこの2022年11月のメール(下記の画像リンクを参照)には、「FBIサンフランシスコ支局」が4つのアカウントに対する措置を求めていることが記されており、FBIがTwitterを完全に手懐けていることが見てとれる。
(画像:https://pbs.twimg.com/media/FkIBObgXEAAdh6H?format=jpg&name=4096x4096

14. Twitter社員は全4アカウントを停止する口実を探す羽目になったが、そのうちの一つである@frommaのツイートは、「民間の誤情報」とされた11月8日のツイートを含め、ほぼすべてがジョークだった。

15. FBIが右派に対しても左派に対しても強く介入していることを明らかにするために、もう一つ例を紹介したい。FBIは民主党寄りのアカウントである@ClaireFosterPHDのジョークに対しても審査を行うようTwitterに要請している。しかし、このアカウントはジョークをたくさんツイートしており、そのツイートもジョークであることは明らかだった。

16. コンテンツのピックアップについて話を聞かれた@ClaireFosterPHDは、「明らかな風刺と現実を区別できない人は、他者について判断を下したりFBI捜査官として働いたりするのにふさわしくありません」と述べている。
 
17. 上記の2件のメールでは計6つのアカウントが取り上げられており、そのうちの2つ(@ClaireFosterPHDと@FromMa)が停止された。
 
18. 2022年11月5日以降の社内メールによると、サンフランシスコ支局は、告発を受けて取り次ぎを行うFBIの国政選挙本部(National Election Command Post)から、「追加措置を講じる必要があると思われる」アカウントをまとめた長いリストを受け取っている。

19. エルビス・チャン捜査官は、「Twitterの皆さん」宛てにそのリストを転送した。

20. Twitterは、講じた措置のリストを返信した。それを見ると、俳優のビリー・ボールドウィン(Billy Baldwin)には情けをかけ、措置を講じなかったことが分かる。

21. リストに挙げられているアカウントの多くは風刺的で、ボールドウィンと@RSBNetworkを除くほぼすべてのアカウントはエンゲージメント数が比較的少なかったが、一部は停止され、ほとんどにはTwitterによる措置が講じられたことを通知する一般的なメッセージが送信された。

22. FBIによるピックアップについて話を聞かれた@Lexitollahは、このように答えた。「私がまず思ったのは、1.明らかに米国憲法修正第1条に違反している、2.閲覧者数の少ないアカウントなのになぜ私なのか、3.他にどのようなアカウントを調べているのか、ということです。」
 
23. また、@Tiberius444は次のように述べている。「FBIがTwitter上のジョークを取り締まっているなんて、信じられません。馬鹿げています。」
 
24. 2022年9月16日、法務担当幹部のスタシア・カーディル(Stacia Cardille)は、前副法務顧問(元FBI主席弁護士)のジム・ベイカー(Jim Baker)へのメールで、「まもなく週次開催になる」FBI、DHS、米国司法省(DOJ)、国家情報長官室(ODNI)との会議の結果を説明している。

25. そのメールによると、カーディルは、極秘情報を「産業界と」共有することに「制約」はあるのかをはっきりと質問したという。それに対する答えはどうだったのだろうか。「FBIは情報共有に関する制約はないと断言しました」とカーディルは述べている。
 
26. このやり取りは、TwitterとFBIの間に一つの幸せな大家族のような独特の関係があることを明確に示している。FBIは極秘情報を共有することに「制約はない」と軽率に認めたが、他にどのような企業と共有しているのだろうか。
 
27. カーディルはそのメールの最後に、会議で「エスカレーション」された事案のリストを記載し、それらにはすでに「対処しました」と述べている。
 
28. その一つについて、カーディルは次のように記している。「イリノイ州で選挙結果の送信にモデムが使用されたことに関するツイートは、市民活動の阻害に関するポリシーに違反している可能性があるため、フラグ付けしました(実際に限られた状況下でその技術が使用されています)。」
 
29. 2021年1月の別の社内メールでは、Twitter幹部がFBIから報告されたツイートのリストを「違反の可能性のあるコンテンツ」として処理している。

30. その際も、ほとんどが「水曜日は外に出て投票に行こう!」というお決まりのフレーズを含むエンゲージメント数の少ないツイートだった。FBIはそんなことに時間を費やしているのだ。

31. 2021年3月のメールでは、FBI側の担当者がTwitterの上級幹部やチームと話し合いをする機会を得られたことについてお礼を述べ、「資料」一式を送っている。

32. その「資料」とはDHSの本物の公報であり、法執行機関と「民間パートナー」の協力を強化する必要があることを強く主張する内容のものだった。Twitter幹部はそれを社内に配布した。

33. 検閲システムを構築するための表向きの口実としてロシアによる2016年大統領選挙への介入があちこちで話題になっていることは、決して侮ってはならない事態だ。9・11がきっかけで安全保障の拡充が図られるようになったのと似ている。

34. DHSは「資料」で、「寛容な」SNSプラットフォームがロシア人の「活動を助長」していると非難し、さらに「国内の暴力的な過激派の脅威」に対処するために「情報格差」を解消する必要があると説明している。

35. ある事案で、FBIは「違反の可能性のあるコンテンツ」に関する大量のレポートを送っており、Twitter社員はそのレビューという「大変な仕事」を成し遂げたことをSlack上で称え合っている。

36. Twitterには、政府のピックアップレポートが複数の手段で送られてきた。エルビス・チャン捜査官からヨエル・ロスへのメールでは、FBIからのレポートを受け取る手段としてTeleporterというプラットフォームについて言及されている。

37. また、他の政府機関からのレポートもあった。このメッセージ(下記の画像リンクを参照)では、社員が「DHSなど」から得た証拠に基づいてコンテンツを「バウンス」(排除)することを推奨している。
(画像:https://pbs.twimg.com/media/FkIGAWOWYAAXX5z?format=png&name=900x900

38. また、州政府もコンテンツをピックアップしていた。
 
39. たとえば、DHSと提携している米国の非営利団体Center for Internet Security(CIS)が生み出した連絡窓口であるパートナー・サポート・ポータル経由で、Twitterはレポートを受け取っていた。
 
40. 以下のやり取り(下記の画像リンクを参照)では、カリフォルニア州当局者から「パートナー・サポート・ポータル」経由で警告を受けたTwitter幹部が、「なぜ対処しなかったのですか」と尋ね、トランプのツイートに措置を講じるかどうかについて話し合っている。
(画像:https://pbs.twimg.com/media/FkIGQXoXgAACBAA?format=jpg&name=largehttps://pbs.twimg.com/media/FkIGTRkXEBoK8Wi?format=jpg&name=large

41. こちら(下記の画像リンクを参照)では、スタンフォード大学の公正選挙プロジェクト(Election Integrity Project、EIP)から報告されたビデオについて話し合われいる。見たところ、その報告内容はCISの情報に基づいているようだ。
(画像:https://pbs.twimg.com/media/FkIGek1XEAMXuhT?format=jpg&name=medium

42. これがややこしいのは、DHSの請負業者であり、DHSのサイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁(Cybersecurity and Infrastructure Security Agency、CISA)の「パートナー」を称するCISが関与しているからだ。
(訳者注:原文では「Cyber and Internet Security Agency」となっていますが、「Cybersecurity and Infrastructure Security Agency」の誤りであるため、訳文では後者に修正しています。)

43. EIPは大量のコンテンツのレビューを行う政府系シンクタンクの一つであり、米国のシンクタンクであるAtlantic Councilのデジタル科学捜査研究所(Digital Forensics Research Laboratory)や、正しい情報に基づいた社会の実現を目的とするワシントン大学のインフォームド・パブリック・センター(Center for Informed Public)などが参加している。
(訳者注:原文のCenter for Informed Policyは、Center for Informed Publicの誤りであり、訳文では後者に修正しています。)
 
44. 結局のところ、多くの人が「ディープステート」と呼んでいるものの正体は、政府機関、民間請負業者、NGO(政府の出資を受けた団体である場合もある)の複雑に絡み合った協力体制なのだ。そして、それぞれの境界は意味をなさないほど曖昧になっている。
 
45. Twitterファイルの記者たちは現在、さまざまな新しい領域の調査を進めている。今後もバリ・ワイス(Bari Weiss、@bariweiss)、マイケル・シェレンバーガー(Michael Shellenberger、@shellenbergermd)、そして私が次々と新たな調査結果を公開する予定だ。



1. Twitterファイル – 補足
 
2. 2020年7月、サンフランシスコのFBI捜査官エルビス・チャンはTwitter幹部のヨエル・ロスに対し、サイバー脅威に対処する部局横断グループである外国干渉捜査本部(Foreign Influence Task Force、FITF)から質問状が届くと予告した。

3. 質問状の作成者は、7月20日の「DHS/ODNI/FBI/産業界によるブリーフィング」でTwitterが「昨今は自社のプラットフォーム上で公的なプロパガンダ発信者の活動はそれほど見られない」と示唆したことについて不満を抱いているようだ。

4. これは良い知らせであるように思えるが、政府機関の捉え方は違うようだ。
 
5. チャン捜査官は、米国インテリジェンス・コミュニティ(United States Intelligence Community、USIC)を引き合いに出し、「貴社に説明を求める上で、USIC内で少しだけ議論がありました」と強調した。
 
6. FITFは、いかにしてそのような不評を買う結論に至ったのかを説明するようTwitterに求めた。奇妙なことに、その質問状の参考文献一覧には、外国勢力の脅威が浸透していることの裏付けとして、ウォールストリート・ジャーナルの記事などの一般の情報源が含まれている。これはまるで、Twitterが間違った思い込みをしていると指摘しているかのようだ。
 
7. 質問状を受け取ったロスは、他の幹部にも配布し、「当局からの要請というより議会の委員会からの要請のようで、率直に言うと困惑しています」と不満を漏らしている。

8. ロスは続けて、「当局(拡大解釈するならインテリジェンス・コミュニティ)が書面での回答を求めていることが不安」だと述べている。多くの情報機関は国内での活動を禁じられていることを考慮すると、FBIがインテリジェンス・コミュニティのパイプ役を担っているというのは面白い考えだ。
 
9. ロスはその後、別の社内メッセージで、「公的なプロパガンダはTwitterにとって間違いなく重要事項であると過去に明確に伝えてある」ため、質問の前提が「間違っている」と主張し、斜体で強調している。

10. ロスは、「できる限り早くエルビスと電話で話してこれを率直に伝え」、公的なプロパガンダがTwitterにとって「重要事項」ではないという政府機関のイメージを払拭することを提案した。
 
11. このやり取りは、特に奇妙だ。なぜなら、FITFが挙げた「参考文献」の一部は情報部員を情報源としているにもかかわらず、今度は情報部員がその一般の情報源を参考にしたことになるからだ。
 
12. FBIはTwitterファイル#6に対して、このように反応している。「判明している有害な外国人工作員、反体制活動家、地下活動、秘密活動、犯罪活動などに関する情報を提供するために日常的に民間企業と関りを持っています。」

13. それは本当かもしれないが、これまでのところTwitterの内部資料では確認されていない。それどころか、ほとんどはフォロワー数の少ない普通の米国人のアカウントやビリー・ボールドウィンに対するモデレーションの要請だ。
 
14. バリ・ワイス(@BariWeiss)とマイケル・シェレンバーガー(@ShellenbergerMD)からの新たな内部資料調査報告をお楽しみに。


訳者注記:
誤訳や訳漏れがある可能性がありますので、記事の内容を参考にする場合は必ず上記リンクの英語原文に依拠してください。

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