【翻訳】Twitterファイル #14 - ロシアゲートの嘘

この投稿はマット・タイービ(Matt Taibbi、@mtaibbi)氏の2023年1月13日のツイート(下記のリンクを参照)の翻訳です。
誤訳や訳漏れがある可能性がありますので、記事の内容を参考にする場合は必ず下記リンクの英語原文に依拠してください。
また、できる限り原文に添付されている画像の内容を確認しなくても話の流れを理解できるように表現を変えたり、日本人に伝わりやすいように原文にはない文言や説明を追加したりしておりますので、ご承知おきください。
英語原文:

予備知識:
ロシアゲート(Russiagate):2016年米国大統領選挙でドナルド・トランプを勝利させるために、ロシアがSNSなどで干渉したとされる疑惑。ロシア疑惑とも呼ばれる。(参考:Wikipedia「2016年アメリカ合衆国大統領選挙におけるロシアの干渉」)

スティール文書(Steele Dossier):元英国情報部員クリストファー・スティール(Christopher Steele)の調査報告書。2016年米国大統領選の選挙運動の前および最中に、トランプ陣営とロシア政府との間で不正や共謀があったとされる疑惑について記載されている。(参考:Wikipedia「Steele dossier」)

Hamilton 68:ロシア政府、中国政府、イラン政府の役人や国営メディアがTwitterなどのSNS、公式のプレスリリース、各国外務省の文書で取り上げている話題を分析し、その概要を表示するダッシュボード。(参考:「Hamilton 2.0 Dashboard」、「How to Interpret the Hamilton 68 Dashboard: Key Points and Clarifications」)


1. Twitterファイル #14
ロシアゲートの嘘①:ロシアのボットに関するデマと#ReleaseTheMemo
 
2. ロシアゲートは、トランプとロシアの共謀疑惑に関する捜査の問題点を指摘した報告書への関心がロシアの「ボット」や「荒らし」によって焚きつけられていると民主党員が非難したことが大きな節目となり、何年にもわたる大騒動に発展した。
 
3. ロシアが干渉した証拠は見つかっていなかったため、そのような非難を受けて驚いたTwitter役員からは、次のような声が上がった。
「私たちが議員による荒らしに反応してしまっています。」
「ロシアとつながりのある顕著な活動は一切見られませんでした。」
「これがプロパガンダやボットだと言うのはとんちんかんな思い込みです。」

4. 政治家とメディアの主張を裏付ける証拠はなく、それどころか問題とされているアカウントはロシアのものではないという証拠があり、それが完全に無視されていると、Twitterは警告した。
 
5. 話は2018年1月18日に遡る。この日、共和党のデビン・ヌネス(Devin Nunes)は、下院情報委員会(House Intel Committee)に機密報告書を提出した。この報告書には、FBIが外国情報監視法(FISA)に基づいて設置された外国情報活動監視裁判所(FISC)からトランプの関係者に対する捜査令状を取得した際に不当な点があったことについて、あの悪名高い「スティール文書」が重要な役割を担ったことを含め、詳述されている。
(参考:Wikisource「司法省及び連邦捜査局による外国情報監視法の濫用について」)

6. のちに、ヌネスの主張はほぼすべて、司法省監察官マイケル・ホロウィッツ(Michael Horowitz)の2019年12月の報告書で立証されることとなる。

7. しかし、2018年1月から2月初旬にかけて、国内メディアはヌネスの報告書を非難した。その際、奇妙なことに、複数のメディアがヌネスの報告書を「ジョーク」という同じ言葉で表現していた。

(訳者注:8はありません)
 
9. 2018年1月23日、民主党所属でカリフォルニア州選出の上院議員ダイアン・ファインスタイン(Dianne Feinstein)と同じく民主党所属でカリフォルニア州選出の下院議員アダム・シフ(Adam Schiff)が、TwitterのCEOジャック・ドーシー(Jack Dorsey)とFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)宛ての公開状を公表した。そこでは、ヌネスの機密報告書の公開を求めるハッシュタグ#ReleaseTheMemoは「ロシアの工作活動とつながりのあるSNSアカウントの後押しを受けて瞬く間に注目の的となった」と述べられている。

9b. ファインスタインとシフは、ヌネスの報告書では機密情報が「歪曲」されていると主張しているが、その内容が誤っているとは言っていない。

10. コネチカット州選出の上院議員リチャード・ブルーメンソール(Richard Blumenthal)もその後に続いき、次のように記された公開状を公表した。「ロシアの情報員がそれほどしきりに罪のない米国人を欺いていることは非難されて当然である。」

11. ファインスタイン、シフ、ブルーメンソール、そしてメディア関係者は皆、ある情報源に言及していた。それは、元FBI防諜捜査官クリント・ワッツ(Clint Watts)が民主主義保護連合(Alliance for Securing Democracy、ASD)の援助を受けて作成したHamilton 68というダッシュボードだ。

12. このダッシュボードには、ウラジーミル・プーチンが何かを企んでいるかのように邪悪な赤いTwitterバードを空に放っている粗末な画像がアイキャッチとして使用されている。しかし、#ReleaseTheMemoがロシアの工作活動とつながりのあるTwitterアカウントの界隈でトップトレンドになっているという結論がどのように導き出されたのかは定かでない。

13. Twitter社内では、幹部がワッツ、Hamilton 68、民主主義保護連合を厳しく非難した。不満な点は主に2つあった。それは、全員がHamilton 68の情報だけを拠り所としている思われることと、誰もTwitterにファクトチェックをしていないことだ。
 
14. グローバル・ポリシー・コミュニケーション部門責任者で、のちにホワイトハウスと米国国家安全保障会議(NSC)のスポークスマンとなるエミリー・ホーン(Emily Horne)は、次のように訴えた。「本件に関するHamilton 68の見解に対しては懐疑的な姿勢をとるべきです。私の知る限りでは、本件に関する数々の記事はHamilton 68を唯一の情報源としています。」
ホーンはさらに、「メディアがASDの操り人形になっています」と述べている。

15. 信頼・安全部門責任者のヨエル・ロス(Yoel Roth)も、「飛び交っているすべての情報はHamiltonに基づいている」とメールに記している。

16. また、ポリシー担当副社長のカルロス・モンジュ(Carlos Monje)は、「ASDがTwitterにファクトチェックを持ちかける気がないなら、こちらから遠慮なくASDのデータの誤りを正すべきです」と主張した。

17. ロシアと#ReleaseTheMemoの間には全くつながりが見られず、ロスは次のように報告している。「#releasethememoが付いた最初の50件のツイートを投稿したアカウントを精査しましたが... どのアカウントにもロシア傘下であることを示す証拠はありませんでした。」

18. Twitterの社内資料では、「社内で調査をしたところ、エンゲージメントは極めて有機的であり(=ボットによる機械的な操作ではない)、VITによって喚起されていることが分かりました」と経緯が説明されている。VITとは「Very Important Tweeter」(超重要ツイーター)を指し、この件ではWikileaksや下院議員のスティーブ・キング(Steve King)がそれに含まれている。

19. ファインスタインのスタッフは、Hamilton 68がどのようなプロセスでロシアのアカウントであると判定しているのかを「把握することは有益」であると認めた。しかしそれは、ファインスタインがロシアによる干渉に関する公開状を公表した後のことだった。

20. Twitterはロシアのボットが#ReleaseTheMemoをトレンドにしているとは考えていなかったため、ブルーメンソールのスタッフと話した際にその説を否定した。

21. また、Twitter社内では、「『ロシアによる壮大なプロパガンダだという考えにあなたの上司が固執しているのは、それが事実でないと分かれば自分が愚かだと思われてしまうからではないですか』とブルーメンソールのスタッフを懐柔してみてもよいかもしれません」という声もあった。

22. あるTwitter幹部は、「ブルーメンソールに別のおみやげを持って行くこともできる」と考え、ブルーメンソールがこの件から手を引くなら今後のPR活動について密かに譲歩すると交渉しようとした。

23. しかしいずれにせよ、ブルーメンソールは公開状を公表した。
 
24. Twitter幹部は結局、ロシアの活動であるという主張を否定するとさらに多くの主張を浴びせられるというスパイラルに苛立ちを募らせることとなった。
 
25. そして、ブルーメンソール陣営に対し、「Twitterは多大なリソースを割いて最初の要請に応じており、それに対してブルーメンソールが何度も要請を繰り返すという形で報いることがあってはならない」と明確に不満を示した。また、「ユーザーに何度も通告を行うと、通告が重要なものと認識されなくなるため、このようなことがあるたびにユーザーに通告を行うことはできない」という思惑もあった。

26. やがてTwitter幹部は、「ブルーメンソールは実際に別の視点からの解決策を求めているのではなく、Twitterをさらに突き上げたという功績が欲しいだけ」だということに気が付いた。

27. 最終的に上級幹部は、「議員による荒らしに反応してしまっている」この状況を、『もしもねずみにクッキーをあげると』(原題『If You Give a Mouse a Cookie』)という児童書に例えた。

28. この物語では、ねずみにクッキーをあげたことがきっかけで、牛乳を求められ、次々とうんざりする頼みごとをされてしまう。そして最後にはまた牛乳とクッキーを求められる。

29. この例えはロシアに関する要請を際限なく受けてしまっている状況を的確に表しており、ある幹部は「初めからそうなると予想できなかったことが本当に恥ずかしい」と後悔した。

30. 社内の全員がこの件にロシアとつながりのあるアカウントは関わっていないと確信していたが、Twitterは記録に残る公の場で異議を唱えることをせず、奴隷のように要請に従い続けた。
 
31. ワシントンDCにコネクションのあるデビボイス&プリンプトンなどの法律事務所の外部弁護士は、「特定のハッシュタグについて、弊社プラットフォームの悪用に当たる可能性のあるあらゆる活動を深刻に受け止めています」というように言明するようTwitterに助言した。

32. その結果、AP通信、Politico、NBC、ローリング・ストーンなどの記者は、全く証拠がないにもかかわらず、「ロシアのボット」の話題をしつこく取り上げた。

33. #ReleaseTheMemoだけでなく、#SchumerShutdown、#ParklandShooting、さらには#GunControlNowにもロシアが関与しているとされた。ニューヨーク・タイムズによると、その目的は「分断の拡大」だという。

34. #SchumerShutdownと#ReleaseTheMemoについて、Twitter社内の見解では「どちらのハッシュタグも有機的にトレンドになっているようだ」とされていた。

35. 筆者は「ロシアのボット」について大きく取り上げたNBC、Politico、AP通信、ニューヨーク・タイムズ、ビジネス・インサイダー、ローリング・ストーンなどのメディアにこの件に関するコメントを求めたが、すべてのメディアが拒否した。
 
36. ファインスタイン、シフ、ブルーメンソールのスタッフも応じなかった。
 
37. しかし、デビン・ヌネスからはこのようなコメントを得ることができた。「シフをはじめとする民主党員は、#ReleaseTheMemo、すなわち私が行ったあらゆる調査活動の裏でロシア人が暗躍しているという、事実に反する主張をしました。ロシアと共謀しているというデマを広めることによって、米国史上最大規模の集団妄想を引き起こしたのです。」
 
38. この#ReleaseTheMemoに関するエピソードは、Twitter内部資料の調査結果のほんの一部にすぎない。ロシアゲート問題を担ぎ上げていたのは、データがないにもかかわらず何年も不安を煽る見出しをでっち上げ続けた臆病で不誠実な政治家と記者だ。
 
39. 今後もマイケル・シェレンバーガー(Michael Shellenberger、@shellenbergermd)、バリ・ワイス(Bari Weiss、@bariweiss)、リー・ファン(Lee Fang、@LHFang)、デイビッド・ツワイク(David Zweig、@davidzweig)らが、新たな調査結果を公開する予定だ。また、Taibbi.Substack.Comで「America Needs Truth and Reconciliation on Russiagate」(米国民はロシアゲートの真実を知り和解する必要がある)という記事もご一読いただきたい。
 
40. Twitterがこの記事の編集について意見することはなかった。しかし、調査は第三者が行ったため、資料は制限されていた可能性がある。


訳者注記:
誤訳や訳漏れがある可能性がありますので、記事の内容を参考にする場合は必ず上記リンクの英語原文に依拠してください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?