【翻訳】Twitterファイル #11 - Twitterへのインテリジェンス・コミュニティの侵食
この投稿はマット・タイービ(Matt Taibbi、@mtaibbi)氏の2023年1月4日のツイート(下記のリンクを参照)の翻訳です。
誤訳や訳漏れがある可能性がありますので、記事の内容を参考にする場合は必ず下記リンクの英語原文に依拠してください。
また、できる限り原文に添付されている画像の内容を確認しなくても話の流れを理解できるように表現を変えたり、日本人に伝わりやすいように原文にはない文言や説明を追加したりしておりますので、ご承知おきください。
英語原文:
1. Twitterファイル
Twitterへのインテリジェンス・コミュニティの侵食
2. 2017年8月、Facebookが「ロシアにルーツがある」と思われる300件のアカウントを停止することを決定した。しかし、Twitterは全く心配していなかった。Twitterにはロシアに関する問題はないと経営陣は確信していたのだ。
3. Twitter社内のやり取りでは、次のように言われていた。「重大な相関は見られませんでした。」「特筆すべきパターンはありません。」「Facebookは数百件のアカウントに措置を講じるようですが、Twitterは25件ほどになると思います。」
4. ロシアに関する問題はないと確信していたTwitter幹部の間では、「Facebookの動向を引き続き注視」しつつ、何も公言せずにFacebookの報告者を黙って非難するのが最善のPR戦略であると、意見が一致した。
5. この時、「現時点でロシアによる選挙への干渉に関する調査の焦点となっているのは、Twitterではなく、Facebookです」とパブリックポリシー担当副社長のコリン・クローウェル(Colin Crowell)は述べていた。
6. Twitterは通り一遍の調査を行った後、2017年9月に上院への報告を行った。その際、約2,700件の不審なカウントを手作業で調査し、その中からロシアのものである可能性のある22件のアカウントと、そのアカウントと「つながっている可能性」のある179件のアカウントを停止したと伝えた。
7. このようなわずかな成果しかあがらなかったことを受け、バージニア州選出の上院議員で情報委員会の一員である民主党の有力者マーク・ウォーナー(Mark Warner)は激怒し、すぐに記者会見を開いて、Twitterの報告は「率直に言ってすべてのレベルで不十分」であると非難した。
8. ウォーナーの記者会見の翌日、クローウェルのもとにウォーナーの再選運動の案内状がメールで送られてきた。内容を確認すると、「5ドルで構わないので可能な金額」の寄付を求めるものだった。クローウェルが「皮肉なものですね」と物思いに耽っているようなメッセージを送ると、法務顧問のシーン・エドゲット(Sean Edgett)は「LOL(爆笑)」と返信した。
9. 議会指導者との会議の後、クローウェルは社内メールに次のように記している。「ウォーナーは政治的な動機でこの問題をトップニュースにし続け、Twitterや他の同業者に継続的に圧力をかけ、自分たちに有利なネタを作らせ続けようとしています。」
10. クローウェルはさらに、民主党員はヒラリー・クリントンの真似をしていると述べている。その週、ヒラリー・クリントンはこのように主張していた。「Twitterはそろそろ重い腰を上げ、サイバー戦争のツールとして利用されているという事実に向き合わなければなりません。」
11. Twitterでは、PRに関する問題への不安が高まり、積極的に自己調査を推進するために「ロシア・タスクフォース」が結成された。
12. 「ロシア・タスクフォース」はまず、主にFacebookの同様の組織から共有されたデータを利用し、ロシア企業であるInternet Research Agency(IRA)とのつながりが疑われるアカウントを中心に調査を行った。しかし、このロシアの工作活動に関する調査は失敗に終わる。
13. 2017年10月13日の報告:「組織的な取り組みの証拠はなく、発見されたアカウントはすべて、単独の活動であると思われる(タイミング、支出額、ターゲットが異なり、広告支出額は1万ドル未満)。」
14. 2017年10月18日の報告:「ロシアに関する第1回目の調査... 危険性の高いアカウントが15件あり、そのうち3件にロシアとのつながりがあるが、2件はロシアのニュース専門メディアRussia Todayである。」
15. 2017年10月20日の報告:「新バージョンのモデルを構築。精度は低下するが、再現率は向上するため、より多くの情報を捕捉することが可能。明らかに不審なアカウントは発見されず。支出額の少ないアカウントが20件ほど発見される見込み。」
16. 2017年10月23日の報告:「調査終了... 2,500件のアカウントを完全手作業で検証した徹底的な調査だった言える... 不審なアカウントが32件あり、そのうちロシアとつながりがあるのは17件のみ、支出額の多いアカウントは2件のみで、1件はRussia Todayのアカウント... 残りのアカウントの支出額は1万ドル未満。」
17. Twitterの調査結果では、特筆すべきアカウントは「2件のみ」で、「そのうちの1件はRussia Today」であるとされていた。しかしその後、この調査で使用したのと同じデータから、「Facebookだけで1億2,600万人のユーザーがロシアによる干渉の対象に」という衝撃的な見出しの記事が生まれた。
18. 「ロシア・タスクフォース」が「ネタ」作りに失敗したことにより、TwitterではPRに関する問題がさらに悪化した。
19. マーク・ウォーナーの記者会見から数週後、情報委員会を情報源とする記事が次々とニュースになった。たとえば、米国の政治ニュースメディアであるPoliticoは10月13日、「Twitter、ロシアに関する捜査において極めて重要である可能性のあるデータを削除」という見出しを打った。
20. ジョンズ・ホプキンズ大学の教授で情報委員会の「専門家」でもあるトーマス・リッド(Thomas Rid )は、Politicoに次のように語った。「Twitterがロシア連邦保安庁(FSB)の請負業者だとしたら... 偽情報を発信するのにこれ以上効果的なプラットフォームはありません。」
21. 議会はTwitterに多大な損害をもたらす法律の制定をちらつかせ、Twitterは委員会に焚きつけられた非難報道にさらされるようになったため、ロシア問題の重大性に対する認識を改めた。
22. コリン・クローウェルは次のようなメールを送っている。「ご存知でない方のためにお知らせします。本日のワシントン・ポストの記事によると、Twitterの政治広告に影響する法律(または新たなFEC規制)が制定される可能性があるようです。」
23. 最初のブリーフィングから数週後、ワシントンにおいて、上院のスタッフはTwitterの経営陣に、「ウォーナー上院議員はテック業界が何か月も現実から目を背けていたと感じている」と伝えた。さらに、情報委員会のスタッフは、「削除されたアカウントに関するPoliticoの記事に強い関心」を持っていると述べた。
24. Twitterは、「法整備を目指す情報委員会に協力することを誓約」した。
25. ポリシー担当取締役のカルロス・モンジュ(Carlos Monje)は、その直後、メールに次のように記している。「議会の監督を受けるようになることを未然に防ぐために広告ポリシーや製品の変更が行われると思いますが、ここで上院議員のマーク・ウォーナー、エイミー・クロブシャー(Amy Klobuchar)、ジョン・マケイン(John McCain)が制定しようとしている法律に関する情報を共有しておきます。」
26. Twitterは広告ポリシーを変更してRussia Todayやロシアの通信社Sputnikを排除し、議会の怒りを鎮める準備をした。しかし、さらにヒートアップした議会は、Twitterが提出した2,700件のアカウントのリストをリークしたようだ。
27. そうすると、あちこちの記者がロシアとのつながりについてTwitterに電話で問い合わせ始めた。米国のオンラインメディアであるBuzzfeedは、シェフィールド大学と協力し、Twitterが上院に提出したアカウントリストを基に「ロシアに関連するボットアカウントと密接な関係のある新たなネットワーク」をTwitter上で発見したと主張した。
28. TwitterはBuzzfeedとシェフィールド大学の調査結果を受け入れようとしなかった。社内のやり取りでは、「そんなことをしても相手をつけあがらせるだけ」だと述べられている。
29. しかし、Buzzfeedの記事が公開されると、Twitterはリストに記載されているアカウントについて「何がどうなっているのか報告書を提出」するよう上院から求められ、「何らかの報告を手早くまとめる」ことにした。Twitterは、当初の報告でそのアカウントには問題がないと上院に伝えていたことをすぐに謝罪した。
30. 議会が法整備をちらつかせ、メディアが議会や情報機関の情報に煽られて恐ろしい見出しを打つことにこだわり、Twitterがモデレーション要請に屈するというサイクルがこのようにして生まれ、のちに連邦法執行機関との協力によって正式に定着することとなった。Twitter社員は、「記者たちはこのやり方が効果的だと気付いています」と危ぶんでいた。
31. Twitterはすぐに、将来のあり方を見出した。表向きは「独自の判断」でコンテンツを削除し、その裏では米国のインテリジェンス・コミュニティによって国家の支援を受けてサイバー作戦を実行していると認定されたあらゆるユーザーの広告を非公式に「オフボーディング」(差し止め)したのだ。
32. こうして、Twitterのモデレーションプロセスは、「米国インテリジェンス・コミュニティ(United States Intelligence Community、USIC)」に侵食された。USICが手を引くことはないだろう。コリン・クローウェルはTwitter経営陣へのメールに次のように記している。「Twitterは今後、現在の状態に戻れなくなります。」
33. 今後も、バリ・ワイス(Bari Weiss、@bariweiss)、マイケル・シェレンバーガー(Michael Shellenberger、@shellenbergermd)、リー・ファン(Lee Fang、@lhfang)、デイビッド・ツワイク(David Zweig、@davidzweig)がTwitter内部資料のさらなる調査結果を公開する予定だ。この後まもなく、筆者がもう一つスレッドを投稿するので、お楽しみに。
訳者注記:
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