【翻訳】Twitterファイル #8 - 米国国防総省による秘密心理作戦

この投稿はリー・ファン(Lee Fang、@lhfang)氏の2022年12月21日のツイート(下記のリンクを参照)の翻訳です。
誤訳や訳漏れがある可能性がありますので、記事の内容を参考にする場合は必ず下記リンクの英語原文に依拠してください。
また、できる限り原文に添付されている画像の内容を確認しなくても話の流れを理解できるように表現を変えたり、日本人に伝わりやすいように原文にはない文言や説明を追加したりしておりますので、ご承知おきください。
英語原文:


1. Twitterファイル #8
Twitterが米国国防総省によるオンラインでの秘密心理作戦を密かに支援した経緯
巨大なSNSであるTwitterは国家による秘密のプロパガンダを阻止すると約束しているにもかかわらず、内部資料によると米軍の干渉作戦を直接支援していた。
 
2. Twitterは、長年にわたり、政府が支援するプラットフォーム上での世論操作を検知し阻止することに組織的に取り組んでいると主張してきた。この文書(下記の画像リンクを参照)で、Twitterは国家が支援するあらゆる秘密情報活動や虚偽的なプロパガンダを迅速に特定し阻止することを宣誓し、連邦議会に宣言している。
(画像:https://pbs.twimg.com/media/FkclyD0X0BolziM?format=jpg&name=large

3. しかしその裏で、Twitterは米軍によるオンラインでの心理干渉作戦を許可し、特別に保護していた。米国国防総省のプロパガンダアカウントが正体を隠して活動していたにもかかわらず、約2年以上、Twitterはその多くを停止しなかった。一部のアカウントはいまだに停止されていない。
 
4. 2017年、米中央軍(CENTCOM)の職員が52個のアラビア語アカウントのリストをTwitterに送り、CENTCOMが「あるメッセージを拡散するために使用している」アカウントだと伝えている。そして、認証マークを付与してほしいアカウントを1つ、「ホワイトリスト」に入れてほしいアカウントを5つ指定し、計6つのアカウントへの優先対応を要請した。

5. CENTCOMがリストを送付したその日の内に、Twitter社員はツールを使用して特別な「ホワイトリスト」タグを付与した。このタグが付与されると、基本的には青色のチェックマークが付与されていないアカウントにも認証ステータスが与えられ、スパムフラグや悪用フラグが適用されなくなるほか、ユーザーの目に留まりやすくなったりハッシュタグがトレンド入りしやすくなったりする。
 
6. リストに挙げられていたCENTCOMのアカウントは、反イラン的なメッセージの展開、サウジアラビアと米国が支援するイエメン内戦に関する宣伝、テロリストのみに命中したと言われる米国の「正確な」ドローン攻撃など、中東における米軍の重要事項に関わるツイートを頻繁に行っていた。

7. その後、CENTCOMは戦略を変え、そのTwitterアカウントとCENTCOMのつながりがばれないようにした。アカウントのプロフィールは一見すると自然な内容に変更され、あるアカウントの名前は「Euphrates pulse」になっていた。別のアカウントではプロフィール写真に明らかなディープフェイク画像を使用し、イラクに関する情報を発信するアカウントであると紹介していた。

8. あるTwitter社員は筆者に、この秘密の策略には裏切られた気分だと語っている。しかし、2020年中のたくさんのメールを見ると、Twitterの上級幹部は国防総省がフェイクアカウントと秘密のプロバガンダからなる巨大なネットワークを構築していることを十分に認識した上で、アカウントを停止しなかったようだ。
 
9. たとえば、Twitterの弁護士であるジム・ベイカー(Jim Baker)は、国防総省との次回の会議に関する2020年7月のメールで、「拙いスパイスキル」を使ってネットワークを構築した国防総省が「アカウント同士のつながり、国防総省とアカウントのつながり、あるいは米国政府とアカウントのつながり」がばれないようにするための戦略を模索しているという考えを述べている。
 
10. 同じくTwitterの弁護士であるスタシア・カーディル(Stacia Cardille)は、国防総省がSCIF(機密情報隔離施設)での会議を希望していたことから、過去のものも含めてSNSでの活動を機密扱いにし、「Twitterでの活動を隠そうとしている」可能性があり、「過剰な機密扱いによって厄介な問題を回避しようとしているのかもしれません」と返信している。

11. 2020年にやり取りされた別の複数のメールで、Twitterの上級幹部と弁護士は国防総省の秘密のネットワークについて話し合い、CENTCOMから受け取った2017年のリストを再配布した。さらに、未公表の国防総省アカウントが157個記載された別のリストも共有した。それらのアカウントの大部分は、やはり中東の軍事問題に特化したものだった。
 
12. 2020年5月のメールで、Twitterのリサ・ロマン(Lisa Roman)は国防総省に2つのリストを送付した。1つは「過去にTwitterに提示されたアカウントのリスト」、もう1つはTwitterが検知したアカウントのリストだ。それらのアカウントはロシア語とアラビア語でシリアやISISにおける米軍の話題についてツイートしており、多くは国防総省とのつながりを明かしていなかった。

13. 筆者が確認した記録によると、米軍の秘密のプロパガンダアカウントの多くは、遅くとも2020年には(もっと早い可能性もある)Twitterに検知されていたにもかかわらず、今年も一年を通してツイートし続けており、2022年5月以降になってようやく一部のアカウントが停止された。
 
14. 2022年8月、スタンフォード大学インターネット観測所(Stanford Internet Observatory)のレポート(下記のリンクを参照)により、米軍がFacebook、Telegram、Twitterなどのアプリ上でプロパガンダネットワークを構築し、偽のニュースポータルやディープフェイク画像を使用して米国の敵対国にとって不利な情報を発信していたことが明らかになった。
(レポート:https://public-assets.graphika.com/reports/graphika_stanford_internet_observatory_report_unheard_voice.pdf
 
15. 米国のプロパガンダネットワークは、ロシアや中国などの諸外国にとって不利な情報をどんどん流していた。たとえば、「イラクにおける水の安全保障を脅かしていること、国を覚醒剤で溢れさせていること」、アフガニスタン難民の臓器を摘出していることについて、イランを非難している。
 
16. スタンフォード大学のレポートでは、米国のネットワークを構成するすべてのアカウントを特定できてはいないが、指摘されているアカウントの一つはずばり、2017年のメールでCENTCOMがホワイトリストに入れることを要請したTwitterアカウントだった。筆者はそれをTwitterの社内ツールで検証した。そのアカウントにはAIで作成したディープフェイク画像が使用されていた。

17. しかし、その後の報告では、Twitterは「西側の政治的立場を支持し宣伝する偽のユーザーアカウントのネットワーク」を排除しているという理由で、その公平性を称えられている。この話題を取り上げたメディアは、Twitterは公平にポリシーを適用しており、事前対策によって国防総省のアカウントを停止させていると説明した。
 
18. しかし、現実はそれよりはるかに胡散臭い。Twitterは2017年にCENTCOMのネットワークを積極的に支援した。そして、遅くとも2020年には、それらが人々を欺いて言論を操作するために考案された秘密のアカウントであり、Twitterのポリシーや約束に反しているということに気付いていたが、数年経ってようやくアカウントを停止した。
 
19. Twitterのコミュニケーション部門は記者と緊密に連絡を取り、Twitterが担った役割を矮小化しようとした。そのおかげか、ワシントン・ポストは国防総省のスキャンダルを報じた記事でTwitter社員について言及せず、主に国防総省に焦点を合わせていたため、Twitter社員たちは喜んだ。

20. Twitterは2016年以降、タイ、ロシア、ベネズエラなどの国家が支援する干渉作戦に関わる秘密のアカウントを迅速に特定し取り締まっていると豪語していたが、米軍の秘密のネットワークに対しては正反対の対応をしていた。
 
21. この問題については、以下の記事でより詳しく取り上げている。筆者は数日間、Twitterに立ち入ることを許された。契約や合意は一切なく、Twitterが筆者の行動や執筆内容について意見することもなかった。ただし、調査はTwitterの弁護士が行ったため、筆者が目にしたものは制限されていた可能性がある。
(記事:https://t.co/AgcFy71fE3


訳者注記:
誤訳や訳漏れがある可能性がありますので、記事の内容を参考にする場合は必ず上記リンクの英語原文に依拠してください。

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