【翻訳】Twitterファイル #5 - トランプ追放の真相③
この投稿はバリ・ワイス(Bari Weiss、@bariweiss)氏の2022年12月13日のツイート(下記のリンクを参照)の翻訳です。
誤訳や訳漏れがある可能性がありますので、記事の内容を参考にする場合は必ず下記リンクの英語原文に依拠してください。
また、できる限り原文に添付されている画像の内容を確認しなくても話の流れを理解できるように表現を変えたり、日本人に伝わりやすいように原文にはない文言や説明を追加したりしておりますので、ご承知おきください。
英語原文:
Twitterファイル #5
Twitterからのトランプの追放
1. 1月8日の朝、あと1回ストライク(違反認定)が課されるとTwitterから永久に追放されるおそれのあったドナルド・トランプ大統領が、2件のツイートをする。
(訳者注:「ストライク」について、詳しくはこちらのTwitterポリシー(https://help.twitter.com/ja/rules-and-policies/medical-misinformation-policy)をご参照ください。)
2. 6時46分:「私、AMERICA FIRST、MAKE AMERICA GREAT AGAINを支持して投票してくれた7,500万人の素晴らしいアメリカ愛国者たちの大きな声は、遥か先の未来まで途絶えることはありません。どのような方法でも、どのような形でも、愛国者が蔑視され、不当に扱われることがあってはなりません!!!」
3. 7時44分:「質問をくれた方々にお答えします。私は1月20日の大統領就任式には出席しません。」
4. Twitterは、世界的な指導者をプラットフォームから追放したり議論を呼ぶツイートを排除したりすると人々が重要な情報を知って議論することができなくなるという観点から、何年間もトランプ追放を求める社内外の声に抗ってきた。
5. Twitterの2019年のブログを見ると、「Twitterの使命は、公の議論の場を提供し、人々が情報を得たり指導者と直接交流したりできるようにすることです」と記されている。Twitterの目標は、「指導者の声を聞き、指導者の責任を問うという大衆の権利を守る」ことだったのだ。
(Twitterブログ:https://t.co/rtQjkQQxSs)
6. しかし、Twitterファイル#3と#4でマット・タイービ(Matt Taibbi、@mtaibbi)とマイケル・シェレンバーガー(Michael Shellenberger、@shellenbergermd)が立証したとおり、1月6日以降、トランプ追放を求める社内外からの圧力が高まった。
7. Twitter社内には、反対する人もいた。1月7日、ある従業員はこのように述べている。「中国出身だからだと思いますが、私は検閲によってどのように公の会話が荒廃するかをよく知っています。」
8. しかしTwitter社内では、そのような意見は超少数派だったようだ。さまざまなSlackチャンネルで、多くのTwitter社員がトランプをもっと早く追放しなかったことに憤っていた。
9. 1月6日以降、Twitter社員は経営陣にトランプ追放を求める計画を立てた。「社員はたくさんの意見を主張していました」と、あるTwitter社員は語っている。
10. ある社員は「Twitterは正しいことをしなければならない。このアカウントを停止するべきだ」と言い、また別の社員は「トランプが針の穴に糸を通すようにルールに違反することなく暴力行為を扇動しようとしたことは明らかだ」と言っている。
11. 1月8日の昼過ぎ、ワシントン・ポストは、TwitterのCEOであるジャック・ドーシー(Jack Dorsey)宛てにトランプ追放を求める公開状を公表した。これには300人以上のTwitter社員が署名しており、次のように記されていた。「バイデン次期大統領はこの事件を暴動という適切な言葉で表現した。その共犯者としてTwitterを調査しなければならない。」
12. しかし、ツイートを評価する任務を与えられたTwitter社員はすぐに、トランプはTwitterポリシーに違反して「いなかった」という結論に至った。「これを扇動だというのは難しいと思います」と、ある社員は述べている。
13. その社員は次のように続けた。「トランプは1月6日から、自分に投票したのは『アメリカ愛国者』だと言っていて、テロリスト(そう呼んでいいですよね?)とは言っていません。」
14. 別のスタッフも、「扇動しようとしているようには見えません」と同意している。
15. Twitterポリシー担当者のアニカ・ナバロリ(Anika Navaroli)は、次のように述べている。「私もトランプのツイートには明らかな扇動行為も遠回しの扇動行為も見出せません。チームで評価した結果、トランプのツイートに違反はありませんでしたと、選挙対応用のチャンネルで報告します。」
16. ナバロリは次のように報告した。「お知らせします。安全部門は上記のトランプのツイートを評価し、この時点でTwitterポリシーへの違反はないと判断しました。」
17. (その後、ナバロリは1月6日の事件に関する議院の委員会でこのように証言している。「私は何か月も前から、もし目の前で起こっていることに対してTwitterが一切介入しなければ人が死ぬことになるという現実を問題として取り上げることを願い、期待し、試みてきました。)
18. 続いて、Twitterの安全部門はトランプの7時44分(東部時間)のツイートも違反ではないと判断している。それには疑いの余地がなく、次のように述べられている。「これは明らかに違反ではありません。トランプは大統領就任式に出席しないと言っているだけです。」
19. トランプ追放というTwitterの決定について理解するには、Twitterがイラン、ナイジェリア、エチオピアなどの首脳や政治的指導者にはどのように対応しているかを考慮しなければならない。
20. 2018年6月、イランのアーヤトッラー・アリー・ハーメネイー(Ayatollah Ali Khamenei)はこのようにツイートした。「イスラエルは西アジア地域の悪性がん腫瘍であり、切除し、根絶しなければなりません。これは可能なことであり、実現します。」
Twitterは、このツイートを削除することもアーヤトッラーを追放することもしなかった。
21. 2020年10月、元マレーシア首相が、「フランス人を大量に殺害する」ことはイスラム教徒の「権利」であると主張した。Twitterは「暴力の賛美」に当たるとしてツイートを削除したが、元首相自身は追放されなかった。以下のツイート画像は、Wayback Machineから取得したものだ。
(画像:https://pbs.twimg.com/media/FjzDr6kUYAAt6z-?format=jpg&name=large)
22. ナイジェリア大統領のムハンマド・ブハリ(Muhammadu Buhari)は、次のようにツイートし、ビアフラ支持団体に対する暴力を扇動した。「かつて30か月間戦場に立ち、ビアフラ戦争を体験した私たちは、暴力には暴力で対抗する。」
Twitterはこのツイートを削除したが、ブハリ大統領を追放しなかった。
23. 2021年10月、エチオピア首相のアビィ・アハメド(Abiy Ahmed)が武器を取ってティグレ州と戦うことを国民に呼びかけた。Twitterはそのツイートを残すことを容認し、アハメド首相を追放しなかった。
24. 2021年2月初旬、ナレンドラ・モディ首相(Narendra Modi)率いるインド政府は、首相に批判的だった何百ものアカウントを復元したインドのTwitter社員を逮捕して最長7年間収監すると脅迫した。Twitterはモディ首相を追放しなかった。
25. しかしTwitter幹部は、担当社員がトランプは「遠回し」にも暴力を扇動していなかったと報告したにもかかわらず、トランプを追放した。
26. Twitter社員がトランプのツイートはTwitterポリシーに違反していなかったと判断してから90分も経たないうちに、法務・ポリシー・信頼部門責任者のビジャヤ・ガッデ(Vijaya Gadde)は、実際には「遠回しにさらなる暴力行為を扇動している」可能性があるのではないかと尋ねた。
27. その数分後には、「大規模取締チーム」の社員が、「アメリカ愛国者」というフレーズが暴徒を指していると解釈するならば、トランプのツイートが暴力の賛美に関するポリシーに違反している可能性があると提言した。
28. ここから事態はエスカレートする。そのチームのメンバーが、「トランプは暴動や殺人に関与するテロリストグループのリーダーであり、クライストチャーチモスク銃乱射事件の犯人やヒトラーに匹敵すると考えられ、その前提とトランプのツイートの全体的な内容に基づき、トランプを追放すべき」であると主張し始めたのだ。
29. 2時間後、Twitter幹部は30分の全体会議を行った。ジャック・ドーシーとビジャヤ・ガッデは、トランプがまだ追放されていない理由について、社員の質問に答えたが、さらに社員の怒りを買うこととなった。
30. 「複数の社員が『凡庸な悪』を引き合いに出し、Twitterポリシーを執行している人間は命令に従うナチ党員のようだと示唆しました」とヨエル・ロス(Yoel Roth)は同僚に伝えている。
31. ドーシーは、トランプ追放について簡潔な説明で発表するよう指示した。ロスのメッセージには、このように書かれている。「助かりました。彼はきっとトランプ追放を公表したいのです。」
32. 1時間後、Twitterは、「さらなる暴力行為を扇動するおそれ」があるため、トランプのアカウントを無期限に停止することを発表した。
33. たくさんのTwitter社員が歓喜した。
34. ある社員は、次のように喜びのメッセージを記している。「誰か知りませんが、トランプのアカウントを叩きつぶしてくれた信頼・安全部門の人に大感謝」
35. その翌日には、社員はできる限り早く「誤った医療情報」の問題に対処することにやる気を見せていた。
36. また、次のように述べている社員もいる。「Twitterは長い間、真実かどうかを判断する存在ではないという立場をとってきました。私はそれを尊重していましたが、しっくりきたことはありません。」
37. 当時のCOOで、のちにジャック・ドーシーの後を継いでCEOになるパラグ・アグラワル(Parag Agrawal)は、セキュリティ部門責任者のマッジ・ザトコ(Mudge Zatko)にこのように話している。トランプ追放によって生じる「波及効果について、少人数で話し合うべきだと思います。」
さらに、アグラワルは次のように続けた。「私が思うに、中央集権型のコンテンツモデレーションはもう限界です。」
38. トランプ追放というTwitterの決定を受け、米国外では仏大統領エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)、独首相アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)、メキシコ大統領アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(Andres Manuel Lopez Obrador)らが警鐘を鳴らした。
39. マクロンは聴衆を前に、民間企業によって重大な決定が下される民主主義のもとで暮らしたくないと述べ、さらに次のように主張した。「重大な決定は、議員の投票によって可決された法律や、民主的に議論されて民主的な指導者が承認した規制、規定によって下されるべきだと思います。」
40. メルケルの報道官は、Twitterがトランプ追放を決定したことには「問題がある」とし、言論の自由は「重要な基礎」であると語った。ロシアの反体制派指導者であるアレクセイ・ナワリヌイ(Alexey Navalny)は、トランプ追放は「許されない検閲行為」であると非難した。
41. Twitterファイルでトランプ追放について取り上げるのは今回が最後となるが、ナワリヌイやマクロンに同意する人にとっても、Twitter幹部に同意する人にとっても、あの異例の決定について知るための手がかりとなれば幸いだ。
42. 我々がこの件を調査した目的はもともと、トランプ追放に至った経緯を把握して記録し、その判断の全体像を明らかにすることだった。
43. 結局のところ、ハンター・バイデン(Hunter Biden)のラップトップに関するニュースの検閲、ブラックリストを用いた気に入らない意見の弾圧、大統領の追放といったTwitterの取り組みに対して感じる不安は、SNS企業の幹部がこれまでに行った判断に対する不安ではない。
44. 民間企業で働く一握りの人が力を持ち、公の会話や民主主義に影響を及ぼしていることに対する不安なのだ。
45. このリポートには、@ShellenbergerMD、@IsaacGrafstein、@SnoozyWeiss、@Olivia_Reingold、@petersavodnik、@NellieBowlesが携わっている。The Free Press(@TheFP)をフォローし、我々の活動に引き続きご注目いただきたい。
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訳者注記:
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