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池田明季哉先生『オーバーライト ――ブリストルのゴースト』読書感想文

ここに一枚のサインがあります。

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世界的なゲームクリエイター小島秀夫監督のサインです。
ネットで拾ってきたものではなく、私の所有物を撮影したものです。
新川洋司先生のイラストも御本人様の直筆です。
この時点で既に国宝級なのですが、このサインには本当に美術館に展示されていてもおかしくないエピソードがあるのです。
なぜならこちらのサインは1998年9月3日、プレイステーション専用ソフト『メタルギアソリッド』発売日当日、いちばん最初にいただいたサインだからです。
つまり、メタルギアソリッドのサイン、第一号なのです。

おいおい、ちょっと待てと。
お前には、がっかりしたぞ。
いつもここで妄言垂れ流してるけど、そういう見栄を張るタイプのうそをつくやつだとは思わなかったよ。
確認しようがないからってデタラメを言うんじゃない、と。

いやいや、本当なんですよ。
証拠だってありますよ。
その当時、インタビューだって受けたんですよ。
おまわりさんに「坊主、学校はどうした?」って。
ほかにも、それっぽい人からちゃんとした質問だってされたんですよ。
後日、ドリームキャストで確認したら、コナミの公式サイトだったか、どこかのゲームサイトに私が映ってるのを見つけたんですよ。
さっきゲノム兵の入隊試験に落ちてきましたみたいなツラした小僧がそこにいるんですよ。
当時はいつもこのウィンドブレーカーを羽織っていたので、これと同じかっこうをしていたと思います。

説明の必要はないかと存じますが、今にも何かつぶやきそうな顔してるのが私です。

そもそもなぜ、小島監督のサインを最初にいただけたかといいますと、当然、運がよかったというのもあるのですが、それ以上にちゃんと計画を立てて、狙ってたというのもあるのです。

はじまりは、トレーラーでした。
車じゃなくて、映像のほうのトレーラーです。

20年前の話なので記憶があやふやなんですけど、うちの学校の美術の授業の一環で、校外に出て素材を集めてきなさい的な課題があったのですね。
学校の外に出ていいなんて言われたら、それはもちろん秋葉原にいくに決まってるじゃないですか。
春か夏だったの思うんですけど、その当時の秋葉原といえば基本的にどのお店もメタルギアソリッドのトレーラーを店頭で流していました。
それはそれはすごい衝撃だったんですよ。
私も90年代のゲームキッズなのでメタルギアのことは当然知ってましたけど、それ以上にポリスノーツが大好きで、学校のともだちと連日、ポリスノーツ2はどうなるかと議論に華を咲かせていました。
私としては小島監督に求めていたのはアクションではなく、アドベンチャーであって、雑誌のインタビューにも虹色の青春が落ち着いたらスナッチャー、ポリスノーツ系統の新作の準備に取りかかる的なことをおっしゃっていたような気もするので、そっちに期待して、メタルギアは次のアドベンチャーの前座くらいに考えていました。
そもそもメタルギアに期待していなかった理由として、雑誌の付録だったと思うんですけど、かなり初期のPVが収録されていて、スネークがシャドーモセスのいたるところにC4か何かをしかけて爆破させていくという内容だったと思うのですが、それが個人的にピンとこなくて、小島監督、こういうのつくるなら早く次のアドベンチャーつくってくれませんかと首をかしげていたように記憶しています。
なお、その初期のPVなのですが、どれだけ探しても見あたらないので、完全に私の空想の産物か、何か別のものと勘違いしている可能性も高いです。
それで、ああ、メタルギアもうすぐ発売なんだ。ポリスノーツの続編出ないかなと思いながら見たのがこちらです。

いけませんよ、子供にこんなの見せたら。
そりゃ、動けなくなりますって。
比喩でも大袈裟でもなく、一日中見てました。
メタルギアのトレーラーを見つめる私を見つけたどこかの紳士が、少年よ、そんなにそれがほしいのかい? と話しかけてきてモニターをプレゼントしてくれる勢いで画面に釘付けでした。
同じ店舗にいたら迷惑なので、何回か見たら別の店に移動していました。
いや、それでもじゅうぶん迷惑ですけど。

メタルギアソリッドの発売日が近づくと、都内の各所で小島監督のサイン会が開催されることがわかり、私はどうしても日本で最初に小島監督のサインをいただく栄誉にあずかりたくなって、調べた結果、発売日当日に小島監督が最初に降臨されるお店は新宿のさくらやさんだと判明したので、始発でGOですよ。
幸運なことに一番乗りでした。
仲はよかったけどゲームに興味のない友人についてきてもらって、開店までの数時間、私は彼にこれから買うメタルギアソリッドがいかに歴史的な作品になり得るか、それを製作された小島監督がいかに偉大かと語りつづけました。
MSXのメタルギアにすらさわったことのないにわかの長話を優しい友人は、近所でゾンビ映画のオーディションがあればそのままの姿で合格できそうな表情で聞いていてくれました。
なお、その後その友人とは、私が人生で唯一、派手なケンカ別れをして、それから一度もあっていないことでおなじみです。

で、何が言いたいのかと申しますと、優れたトレーラーには相応の購買意欲を刺激する力が確かにあるということです。

それからおよそ20年後。
2020年4月12日 深夜

YouTubeにお気に入りチャンネルの新着動画が投稿されたとサインが出ます。

あ、いいな、と。
強く好奇心をかきたてられました。
もともと買う予定はあって、紙の本で買おうと思っていたのですが、すぐにほしくなりました。
だから買いました。

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深夜2時30分に本を買える時代になりました。

読んだ感想をいわせていただきますと、文章が好きです。
思わずマーカーを引きたくなる表現目白押しです。

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だけど、そういうことじゃないんですよ。
オーバーライトの感想を言葉で語るのは少し違う気がします。
多くの言葉よりも、一枚のへたくそな写真のほうが雄弁なことだってたまにはあります。
見てください。
オーバーライトの出会いから半年後、場所は飯田橋駅。撮影したのは私。

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あ! オーバーライトだ! オーバーライト!
と、心ではしゃぎながらスマホで撮影ですよ。
オーバーライトと出会う前の私なら確実にスルーしてるただの迷惑行為ですよ。
だけど今はそうじゃない。
ここから何かを見出そうとしている。
それはなぜか?
とある物語から影響を受けたからです。
その物語の書き出しをそのまま引用させていただくと
『それまで存在しなかったものが突然あらわれて、自分の信じていた景色が、まったく変わってしまうことがある』
というやつです。

自分の世界を、価値観を、いともたやすく変えられてしまうことだってある。
それが一冊、693円の本だったとしても。

せっかくなので同じ日に秋葉原で撮影した写真も見てください。
我ながら上手く撮れてると思います。
台湾まぜそばと煉獄さんの生首です。

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特に理由もなくYouTuberのサムネイルっぽくしてみます。

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何か参考にしたわけでもないのに、思ったよりそれっぽくしあがりました。
ところでこれを撮影した日、こんな情報が飛び込んできました。

これは何かの示唆なのか。
とはいえもう電子書籍持ってますし──。

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まだまだ余裕があります。

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何かクッション的なものを入れたいと考えている、そんなあなたに朗報。
どんなご家庭にもある『あれ』を使うだけで、簡単に解決できるんですよ。

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これで問題はなくなりました。
さあ、レッツ投函。

電撃文庫の編集部か池田明季哉先生の自宅のどちらかがうちの近所にあるのか、三日くらいで戻ってきてびっくりしました。
私もいつかやりたいです。

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ここに一枚のサインがあります。
世界的な作家、池田明季哉先生のサインです。
ネットで拾ってきたものではなく、私の所有物を撮影したものです。
この時点で既に国宝級なのですが、このサインには本当に美術館に展示されていてもおかしくないエピソードがあるのです。
なぜならこちらのサインは────

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おまけ
私が世界初の事例であるもの(明確なソースつき)

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ちゆ12歳先生に最初に投げ銭したのは私。


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