酒と蕎麦と労働の日記 -悪夢-
11月3日曇り。
ギャスパー・ノエの新作「CLIMAX」を観にいった。夫から観てみようよと言われ前情報はトレーラーとポスターのみで、この週末からの上映スタートで特に周囲で話題になってなかったもんだから2人ともまっさらな気持ちで鑑賞。
鄙びたスタジオで踊るダンサー達。打ち上げが始まりサングリアが振舞われ、DJの音楽に合わせ彼らは踊り続ける。長尺の圧巻のダンス映像の合間、ダンサー同士の会話が挟まれ人間関係が明らかになっていく。その会話というのがいわゆる従来の負の人種イメージの役割を着せたようなゲスで下品でどうしようもないもの。フィジカル&ゲス。踊り続ける最中、自分たちが飲んでいるサングリアにドラッグが盛られていることに気づいたダンサー達がカオスに陥っていくというお話。
映画が始まりしばらく経ってから突然オープニングのタイトルロゴがデンと現れスタッフクレジット/エンドロールが流れたり(もちろんいざ本当に終わったらエンドロール無し)、そして終盤まさかの画面と字幕があんなことに...。「お、おう。すごいね」という仕かけは随所にあるんです。
しかしですよ、中盤夫がぽつりと「俺これ最後まで観れないかもしれない」と。御意。そん時私のメンタルも限界を迎えていた。結局最後まで観たけど。内容はもちろんのこと終盤の演出(というか仕かけ)では吐き気を催してしまいスクリーンを直視できなかった。
日本版のポスターはいかにも陽キャな写真とともに「鮮烈に、堕ちる」というコピーがうたわれているのだけど、仕かけや演出が鮮烈なのであって、ストーリーとしての堕ち方は救いようがなくわりと終始どん底。地獄。メンタルや体調が悪いかたの鑑賞はちょっとオヌヌメできません。ラースフォントリア大好き救いよう無い話が好物の私も辛かった。でもこれ薬物防止キャンペーン映像としてはすごくいいと思うぞ。ちなみに、セルヴァという役の金髪美女ダンサー(ソフィアブテラ)のガンギマって悶える演技は本当に素晴らしいです。あの部分はとても鮮烈でした。
テクノ好きなギャスパー・ノエらしく重要なシーンでWindowlickerが使われていて、そこで頭に浮かんだのは「あぁクリスカニンガムってファンシーだったんだなぁああ恋しいよクリス」。この救いようの無さに比べたらただ優しく甘美なものに感じられたんです。DV男に捕らわれメンタルが壊れモラハラ元カレが恋しくなる的な(違う)。
あと最後にこれだけはどうしても言いたい、全日本の翻訳家のみなさん、字幕のセリフでドラッグ全般のことを「ヤク」と訳すの本当にもうやめよう。ダメ、ゼッタイ。鮨屋で客が「ギョクください」「あがり一丁おねがいします」とか言って滑る感じというか。別称でも隠語でもいいから、覚せい剤なら覚せい剤、LSDならLSD、大麻なら大麻とおっしゃっていただきたい。
古い映画やハリウッド大作でいかにも悪いマフィアが「ヤクはどこだ!」とかなんとか言うのはまあ百歩譲ってイメージのアレでいいとしてもだよ、ギャスパー・ノエで、VICEさんが噛んでて、しかもストーリーの鍵なのに(おそらく)LSDのことを「サングリアにヤクが混ぜられたぜ」って翻訳で表現するもんで、ラストのシーンのあれの伏線回収がしづらいじゃないか。果たしてなんのドラッグだったんだよと上映終了後しばし夫と話し合っててしまったじゃないかもう。
補足:
もっときちんとこの作品と向き合った方の記事はこちら。
ネタバレありですが、映画の素養がある方が観るととこうなるようです。勉強になる。
【釜山国際映画祭・ネタバレ】『CLIMAX クライマックス』ギャスパー・ノエがサングリアに隠した謎を読み解く
https://france-chebunbun.com/2018/10/14/post-17181/
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