14、日本全体の富を増やすためには?④

ライター 三浦優樹

ここまで、日本全体の富を増やすための方法を様々な視点から論じてきました。

しかし、これまで述べてきた視点は国内ばかりに目を向けたものがほとんどでした。

そのため、この項目では日本全体の富を増やすための究極的な方法を考えていくために、日本と世界とのビジネス的な関わり合いについて考察していくことにしましょう。

筆者は、このままでは日本は諸外国とのビジネス関係において『ギブ・ミー・チョコレート化』してしまうと大きな危機感を抱かずにはいられません。

「ギブ・ミー・チョコレート」をそのまま日本語にすると「チョコレートをください」という意味になります。

この言葉は、戦後直後の日本の子どもたちが占領軍のアメリカ兵によく使っていたものと言われています。

戦後直後の日本は大変な食糧不足に陥っており、今日や明日食べるものにさえ困っているという状況でした。

そこで食べ物に困っていた子どもたちは、日本に占領軍として駐在していたアメリカ兵たちに「ギブ・ミー・チョコレート」と物乞いをすることで、アメリカ兵からチョコレートをもらっていたというわけですね。

道義的な観点から日本の子どもたちにチョコレートをあげていたアメリカ兵もいたでしょうが、「敗戦国の憐れな子どもたち」という見下した心情で優越感に浸りながらチョコレートを渡した兵士も多かったことでしょう。

筆者はこのまま日本が衰退の道をたどっていけば、日本という国自体が他国との関係においてこれに似たような状況になってしまうのではないかと危惧しているのです。

これは現在の我が国の食料自給率の低さや輸入頼りのエネルギー資源の諸事情を鑑みれば、極めて現実的な懸念なのです。

そして、最も懸念しなければならないのはテクノロジー分野についてです。

これからの時代は高度なテクノロジーを手に入れた者(企業や国家)が、世界の富の多くを手に入れることができる流れがますます加速していきます。

これは、ITをはじめとする各種テクノロジーを駆使したビジネスを展開しているグローバル企業が企業の時価総額ランキングの上位を独占していることからも明らかです。

反対に、自前でテクノロジーを開発することができずに、テクノロジーの提供を外国に頼っている国家は、「ギブ・ミー・テクノロジー」と物乞いをしなければ生き残っていくことができなくなることになります。

あなたはもしかすると、「そんな大袈裟な」と思っているのかもしれません。

しかし、今の日本は既に「ギブ・ミー・テクノロジー化」しつつあると言ってよいでしょう。

例えば、もし今の日本からグーグル、アマゾン、アップルといったアメリカの超巨大IT企業が撤退したら、私たちの生活はどうなるでしょうか。

今まで当たり前のように使っていたスマホや通販、インターネットが突然使えなくなってしまえば、私たちの生活は瞬く間に崩れ去ってしまうことでしょう。

また、新型コロナウイルスのワクチンの供給が喫緊の課題となっていた時期に、もしも外国の製薬会社が「日本にはワクチンを売らない」と言っていたらどうなっていたでしょうか……。

これらの例だけでも、既に日本は「ギブ・ミー・チョコレート(テクノロジー)化」しつつあることが分かるはずです。

逆説的に言えば、世界各国にテクノロジーを提供する側の国になることができれば、日本全体の富は大きな増えていくことになります。

日本全体の富を増やし、国際社会において名誉ある地位を占めるためには、チョコレートをもらってばかりではなく忘れられないほど美味しいチョコレートをあげる側になることが大きな鍵を握ることになるのです。

これを別の表現に言い換えるとすれば、「世界を『日本依存症』にすることが我が国の大きな繁栄につながっていく」という表現になります。

我々日本人が高度なテクノロジーを身につけ、それを世界全体に提供することで日本は世界各国にとってなくてはならない存在になることができるのです。

それを実現するためには、政府や行政が科学への強力な支援や投資を惜しむことなく不断に継続していくことが必要不可欠です。

そして、我々ひとりひとりの日本人が高度なテクノロジーを身につけるための土壌や文化を育てていくことが何よりも重要です。

例えば、日本には失敗を過度に恐れる風潮が根強く残っています。

テクノロジーはチャレンジと失敗なくして開発することはできないのですから、このような状況では世界ナンバーワンの技術立国を目指せるわけがありません。

また、日本の企業の多くは技術者を軽視している傾向があります。

例えば、外国の一流企業で年間で2000万円の給料をもらえるようなレベルの研究者などを「まだ新卒で20代なんだから、初任給は年収500万円くらいでも良いよね」といった具合で安くこき使おうとするケースもかなり多いです。

こうした企業ばかりでは、優秀な若い技術者たちが外国に逃げ出すのも無理はありません。

日本のテクノロジーを取り巻く現状を改善することなくこのまま衰退の道に突き進んでいけば、本当に我々日本人とその子孫たちは「ギブ・ミー・チョコレート(テクノロジー)化」していくことになります。

言葉を選ばずに言えば、「ギブ・ミー・テクノロジー化」は「現代の奴隷」と言っても過言ではありません。

私たちや私たちの子孫が衰退から繁栄の道に進んでいくために、私たちにできることをひとりひとりが真剣に考えていくことが今一番求められているのです。



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