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生成AIを活用したナレッジ管理とは?導入事例とメリット、注意点を徹底解説

みなさんは、自社のナレッジ管理に生成AIを活用していますか?

AI技術の発展に伴い、ナレッジ管理も生成AIと組み合わせることでより高い効果を発揮できるようになりました。しかし、ナレッジ管理に生成AIを活用することで、データの偏りや技術面などに関する懸念事項が生じるのも事実です。

本記事では、生成AIを使ったナレッジ管理のメリットや注意点、企業の実例などを詳しくご紹介します。

ぜひナレッジ管理に生成AIを活用する際の参考にしてくださいね。ナレッジ管理をより効果的にする生成AIツールもご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください!

ナレッジ管理とは?

ナレッジ管理とは、各社員が共有している技能やノウハウをマニュアル化し組織内で共有していくことで、業務効率化を目指すマネジメント手法です。

1990年代に、一橋大学名誉教授の野中郁次郎教授によって提唱されました。

「各社員が持つ技能やノウハウをマニュアル化し、共有し合って新たな創造に繋げていくことが重要である」という理念のもと、下記の4つのプロセスから成り立っています。

▼ナレッジ管理の4つのプロセス

  • 共同化(Socialization)・・・共通体験をもとに暗黙知(技能やノウハウ)を共感し合う

  • 表出化(Externalization)・・・暗黙知を言葉や図表などで形式知化(マニュアル化)する

  • 連結化(Combination)・・・創造された形式知(マニュアル)と既存の形式知を結合する

  • 内面化(Internalization)・・・連携した形式知から暗黙知を生み出す

それぞれの頭文字を取って、ナレッジ管理を理論的に体系化した「SECI(セキ)モデル」と呼ばれています。

参考記事:ナレッジマネジメントとは? 定義から導入メリット、導入手法まとめ

ナレッジ管理に生成AIを使うメリット6選

組織内の業務に生成AIを使用することへの懸念はまだあるものの、生成AIはナレッジ管理を最適化する強力なツールとなる可能性を秘めています。ナレッジ管理に生成AIを使うメリットを知り、うまく業務に活用していきましょう。

要点だけを確認できる

生成AIは、各社員のニーズに基づいてナレッジの提供をパーソナライズし検索の精度を改善できるため、各社員が欲しい情報の要点だけを確認することが可能になります。

平均的な社員は1日に約3.6時間を情報検索に費やすと言われており、ナレッジの提供方法における時間の節約は大きな利点です。

ナレッジを定量化・分析できる

業務の属人化は組織レベルでの知識やスキルの伝承が行われず、業務のチェックが機能しない状況を招きます。生成AIを活用してナレッジを定量化することで、属人的な業務やスキルを組織で共有できるようになり、組織の弱体化防止が可能です。

さらに、定量化したナレッジを生成AIが分析することによって、社員の教育の効率化が実現でき、問題解決の遅れや業績低下を防ぐことにもつながります。

対話形式で検索がラク

質問を細かく詳細化できる対話型の生成AIを活用することで、ユーザーが自分の要求に合わせた情報の検索・取得がスムーズに進みます。

さらに、文章だけでなく音声でのやり取りもできるため使い勝手が良く、マニュアルなどを参照する手間が省けます。対話形式なので質問しやすく、人間同士の会話のように応答ができる点も生成AIの特徴です。

会話の中から必要なキーワードをAIが判断して適切に回答してくれるため、スムーズなコミュニケーションが可能です。

24時間体制で質問ができる

生成AIをナレッジ管理システムに取り入れることで、時間帯や休日に関係なく24時間いつでも質問を投げかけることができます。

人間による対応では夜間や休日がカバーできず、業務時間外の対応が難しい場合が多々あります。しかし、AIであれば365日24時間稼働することができるため、業務時間内外を問わずリアルタイムで質問が可能です。

業務のスピードが大幅に向上し、稼働時間の制約を受けることなくいつでも知識や判断を得ることができます。

改善案が出せる

生成AIには、膨大な知識やデータを分析し改善案を提示する機能があります。

ナレッジ管理で蓄積した過去のノウハウや業務記録、顧客対応履歴などの運用データをAIが分析し、業務フローや手順の最適化、顧客ニーズとのマッチングなど、より効率的な改善案を提示してくれます。

人間では気づきにくい改善点を多角的な観点から指摘してくれるため、業務プロセスの刷新に向けた参考意見を得るのにも有効です。

また、業務効率化が実現すれば、それに伴って企業全体の生産性向上も期待できます。

顧客向けFAQに応用できる

生成AIは、膨大なデータから必要な回答を生成できるため、顧客からの「よくある質問」などのFAQや、チャットボットに応用ができます。

過去の顧客対応記録やヘルプセンターのQ&Aナレッジを元に、より分かりやすく充実したFAQを生成AIが自動構築してくれます。

また、データを蓄積するごとに質問のパターンを学習するため、カバーしていない質問が出た場合も、事前にある程度予測して回答を用意することも可能です。

人が作成するよりも圧倒的に効率的で、最新の顧客ニーズに合わせたリアルタイムな回答ができるため、顧客サポートの精度が大きく向上します。

なお、AIチャットボットの作り方について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
AIチャットボットの作り方は?自社開発とツール活用の場合に分けて徹底解説!

生成AIでナレッジを管理する際の注意点

ナレッジ管理に生成AIを活用することは、多くの業種や分野に革命をもたらす可能性を秘めています。

しかし、生成AIはまだ発展途上のツールなため、活用する際には十分な注意が必要です。以下で、ナレッジ管理に生成AIを活用する際の注意点を解説します。

ハルシネーションが起こりうる

生成AIは膨大なデータから新しい文章を作り出しますが、そのプロセスで本来の事実とは異なる虚構の内容(ハルシネーション)を含んだ回答をしてしまう可能性があります。

ナレッジ管理業務にはより完ぺきな正確性が求められるため、誤った情報を蓄積・拡散するリスクがある以上、生成された内容の事実確認を人間が必ず行う等の検証プロセスは必要不可欠です。

生成AIの高度な生成能力とリスク管理のバランスが今後の課題と言えますね。

環境構築にスキルを要する

生成AIをナレッジ管理に活用する場合、大量の高品質データの準備と継続的なモデル最適化といった、データサイエンスに関する専門的知見が必要不可欠です。

適切な仕様設計、モデル構築、精度評価、パフォーマンス調整等にはAIエンジニアの関与が重要で、単なる利用者側の運用だけではAIの能力を十分に引き出すことはできません。

コストと効果を見極めつつ、継続的な改善を担保できる体制構築がアウトプット品質維持には欠かせないため、長期運用を視野に入れた設計・投資が必要になります。

なお、生成AI開発の環境の作り方について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
生成AI開発のベストな環境の作り方!エンジニアが開発の流れを解説

生成AIをナレッジ管理に活用した事例4選

ここでは、実際に生成AIをナレッジ管理に活用した企業の事例をご紹介します。実例を参考に、生成AIをナレッジ管理に活用していきましょう!

アサヒビール

アサヒビール株式会社は、日本マイクロソフト株式会社のAzure OpenAI Serviceが提供する生成AIを用いた社内情報検索システムを、2023年9月から試験導入しました。

将来的には、アサヒグループ社内に点在している技術情報を集約・整理し、効率的に取得しやすくすることで、グループの知見を生かした商品開発強化や業務効率化を目指します。

参考記事:生成AIを用いた社内情報検索システムを導入

楽天証券

楽天証券は、楽天グループと共同開発したAIチャットサービス「投資AIアシスタント」の提供を開始しました。

楽天が独自に開発したAIモデルとChatGPTを組み合わせたオリジナルAIを搭載しており、基本的な投資の知識からレベルに合った投資方法などを教えてくれるサービスです。

参考記事:楽天証券「ChatGPT搭載のAIチャット『投資AIアシスタント(ベータ版)』サービス開始のお知らせ」

三井住友海上火災保険

三井住友海上火災保険株式会社は、日本マイクロソフト株式会社のAzure OpenAI Serviceをもとに、情報セキュリティの安全性を確保した生成AIチャットツール「MS-Assistant」を構築し、2023年5月より全社員での活用を開始しました。

ChatGPTを活用して社内業務をサポートするとともに、業務プロセスの改善につなげることで組織の生産性向上を実現します。

また、事故対応サービスにおける人とAIの新たな協業モデルの構築による、顧客対応の品質向上を目指します。

参考記事:対話型AIを活用した事故対応サービスの品質向上取組を開始
参考記事:生成AIチャットツール「MS-Assistant」の全社員活用を開始

燈株式会社

燈株式会社は、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデルを建設業のデータ・ツールに特化させた「AKARI Construction LLM」の提供を開始しました。

「建設業に眠るデータ的資産を生きたものに」するべく、AKARI Construction LLMを活用しながら日本の建設業のさらなる発展を目指します。

参考記事:燈株式会社がChatGPTをはじめとする大規模言語モデルを建設業に特化させた「AKARI Construction LLM」の提供を開始

ナレッジ管理用の生成AIツール3選

ここでは、ナレッジ管理に特化した生成AIツール3選をご紹介します。各社員がもつ知識やスキルの共有だけでなく、人材育成においても欠かせないツールですので、下記を参考にぜひ導入を検討してみてください。

OfficeBot powered by ChatGPT API

Office Botは、社員が持つ知識や経験、ノウハウを企業内で共有することで、企業全体の生産性向上を支援するナレッジマネジメントツールです。

「FAQ学習AI」や「ドキュメント学習AI」、「ユーザーラーニング」など、回答到達率や業務効率を向上させるような機能が豊富に備わっています。

参考記事:OfficeBot powered by ChatGPT API

saguroot

sagurootは、高度な知的業務を実現するため、社内の「ナレッジ(知識)」と「タレント(人)」を見つけることに優れたツールです。

特に、AIによって画像やテキスト含め異なるファイル形式でも一括検索ができる高度な検索システムは、埋もれていた価値ある情報の発見につながります。他にもナレッジ管理をサポート・効率化する機能が多数実装されています。

参考記事:saguroot

Quick Solution

Quick Solutionは、ファイルサーバーやウェブサイト、その他各種社内システムだけでなく、社内外(オンプレミス、クラウド)に点在する情報を、横断的にファイルの中身まで検索できるシステムです。

高度な検索機能だけでなく、共有タグによるナレッジの整理・分類から人材活用まで、1つのツールで完結します。また、AIによる行動分析で、使えば使うほど賢くなる機能が備わっています。

参考記事:Quick Solution公式サイト

なお、ChatGPT搭載の自社専用ボットの作り方について詳しく知りたい方は、下記の記事を合わせてご確認ください。
【ChatGPT搭載】自社専用ボットの作り方3選!徹底検証

生成AIをナレッジ管理に活用しよう

本記事では、生成AIを使ったナレッジ管理についてご紹介しました。

下記に内容を簡単にまとめました。

ナレッジ管理に生成AIを活用するメリットは以下の6つです。

  • 要点だけを確認できる

  • ナレッジを定量化・分析できる

  • 対話形式で検索がラク

  • 24時間体制で質問ができる

  • 改善案が出せる

  • 顧客向けFAQに応用できる

ナレッジ管理に生成AIを使う注意点は以下の2つです。

  • ハルシネーションが起こり得る

  • 環境構築にスキルを要する

ナレッジ管理用の生成AIツールは以下の3つがおすすめです。

  • Office Bot powered by ChatGPT API

  • sagroot

  • Quick Solution

生成AIを活用してナレッジ管理をすることで、大幅な業務効率化と生産性の向上が期待できます。

また、企業の人材育成においても生成AIツールは欠かせません。

ただし、まだ発展途上なツールであるため、活用する際は注意すべき点があることを念頭においてください。記事内でご紹介した企業の実例も参考に、企業内でのナレッジ管理に生成AIをうまく活用していきましょう!

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