推し、とはなんぞや②
ミュージカルを観に行くことになった。舞台、コンサート、ミュージカル、歌舞伎、なんでもござれ!の友人が薦めるのだから面白いだろう、という気持ちと、「他のコンサートのチケットもあるしなぁ、舞台のチケットもあるしなぁ?子供の学費も高いしなぁ…」という思いの鬩ぎ合い。とりあえず、数カ月先で、真ん中の見やすい席が取れる日のチケットを予約した。そのときは、まだ急いで取る必要がなかったのだ。そして思った。「こんなにチケット、取れないんだな〜。また高価だこと!!!w」
しかも娘とふたり分。下調べもせず、ただなんとなく。
【これがすべてのはじまり】
私は、結構みっちりとクラッシックをやってきたせいなのか、コンサート=クラッシックであり、歌って踊って音程やリズムを保つなんてと、そんなばかな…!!と思っていた。Nコンを目指す合唱部だったので、歌の辛さも楽しさもわかる。ロングトーンの難しさもわかる。踊って歌がブレないなんて信じられない。くちぱくよね?そう思っていた。
実際、他の劇団のを観た事はあるが、ハマらなかったという過去がある。
話が少し変わるが、その頃の私は混沌とした世界に居た。なにかいつも、頭に靄がかかっていた状態だったし、抗っていたのか諦めていたのか、それもわからなかった。
(先日聞いたラジオで、「混沌」という言葉がでてきて、その当時の自分の状況にあまりにぴったりで…)
自分の老いについて、色んなことが降りかかるであろう未来について、想像し過ぎて疲れていたし、自分が老いを自覚したくないばかりで、今、いまを見ていなかった。そんな時を過ごしていた日々。
幕が上がり…そこに登場した「推し」…
静かに語りから始まる。
……え?息をしていたのか?私。
瞬きをしていたのか、私。
飲み込まれた、というのは
こういうことだろう。
舞台の装置、カラフルな衣装、どこをみていいかわからないほどの人の動きの速さ、響く声、激しいダンス、膨大な量のセリフ。
幕間で調べた、推し様の年齢と経歴。
〜衝撃、同年代!〜
一体私は今までなにをしていたのだろう。
推し様の努力は計り知れない。
そして今も頑張り続けている。
これだけ上り詰めるのに、どれだけの努力と苦労があり、涙してきたのだろう。
相当な夢をファンに与え続けてきたはずだ。
……
私、今からでも頑張れるんじゃないか?
何かができるのでは?
単純かもしれない。
ただ「ミュージカルを観ただけなのに!!」モーゼの十戒のように道が現れ、目の前の靄が消えていき、晴れ渡った瞬間。
そう、混沌とした世界から救ってくれたのは、このミュージカルであり、カレの演技だった。
それから何度、カレの舞台を見たのだろう。過去の作品をみたり、インタビューを読んだり貪るようにカレの今までを知ることに没頭した。
それからしばらくして、カレの老いを目の当たりにして衝撃を受けた。ここで藻掻いて這い上がろうとしている姿もまた、目にしてきた。その度に切なくなるし悲しくなるし辛くなった。共感しすぎてしまった。しかし、カレは頑張っている、同年代の人!そう、カレが頑張ってあるのだから、わたしも頑張れる!
天使でも悪魔でも、カレが私にとって最初で最後の「推し様」。
SNSでお祭り騒ぎをしているアホなファンでしかないが、これから推し様が生きる道を、永遠に応援していたい。
永遠に推し様は
カレ、、ひとりである…
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