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いつまでも新刊を待ちたい小説『レアリア』

※ぜひともこの記事は『レアリア』や雪乃紗衣先生の作品が好きな人に読んでいただきたい。(そして面倒でなければ何かしら短くて大丈夫なのでコメントをいただきたい)


何を隠そう、私は雪乃紗衣先生の大ファンだ。
雪乃先生は賞を獲って『彩雲国物語』という作品でデビューした。この角川ビーンズ文庫から出た『彩雲国物語』シリーズは私にとって中・高・大学時代を彩ってくれた人生のバイブルであり青春である。新刊が読めることが生き甲斐だった。それくらいこのシリーズを愛している。

『彩雲国物語』は主人公の紅秀麗【こう・しゅうれい】が男性しか許されなかった国政に足を踏み入れ、挫折しながらも周りの信頼を得、出世街道を爆進していくという、超絶カッコいい中華風ファンタジー小説だ。また、彩雲国の王様との恋愛や頭脳明晰でイケメンな男性陣とのやり取りがとても面白い逆ハーレムもののライトノベルだとも言える。巻を追うごとに個性的な登場人物もドンドン出てくるし、主人公がカッコよく成長していく姿がうかがえるのは読んでいて爽快感があって、何度でも読めた。
何より、完結したのが悲しくもあり嬉しくもあった。雪乃先生の書きたいように主人公たちの生き様が描けていたのではないかと感じられる最後だった。物語の終わりを見届けられた嬉しさに、本を閉じても心臓がドキドキしていたのを今でも忘れていない。

2014年の夏のことだった。8年くらい続いた『彩雲国物語』が終わった後、新潮社X文庫から雪乃先生は『レアリア』を出すと情報が入った。どこかのインタビューで読んだが、雪乃先生が好きなものを色々詰め込んだ話になるとか。いつしか社会人になった私は本に費やす時間もお金も削られていたが、これは迷わず購入して読んだ。
『レアリア』は魔術や呪いがまだ生きている帝国が舞台で、偉大な魔女軍師である大おばを慕う少女ミレディアが、まもなく停戦協定の切れる王朝との戦を止めるべく孤軍奮闘する洋風ファンタジー小説だ。『彩雲国物語』ははじまりこそ逆ハーレムものでだんだんと大河小説になっていったが、こちらはお察しの通り(?)はじめから大河だ。『彩雲国物語』後半で漂っていたトロリとした暗さが今回は前面に出てきている感じもする。さらに、登場人物たちがまぁまた濃ゆくて愛おしい(ちなみに私の推しはアリルだ)。読了後、また私の生き甲斐を見つけてしまったと思った。

2017年に第3巻(前編・後編)が発売されて以降、私はずっと新刊の知らせを待っている。3巻後半は、ミレディアが笑顔を作れないほど心が擦り切られたグランゼリア戦の出来事が鮮明に描かれていて(トトや十三翼将たちが死にゆく様に電車の中でも涙ぐんだものだが)、石を鳴らしたアリルたちのその後が、かれこれこの5年ほどとても気になっている。いつ新刊が発売されてもいいように『レアリア』を定期的に読み直しているので---雪乃先生と出版社さんは安心していつでも出してください。構いません私は。

勝手に予想すると、次の巻は皇帝戦のことが描かれるのではないかと思う。ユーディアスが何と書いて封印したのか、地方の票はどう傾くのか、地方の人間模様や魔女六支族の中の新たな登場人物、次の皇帝はラムザなのかアリルなのか、はたまた枢機卿ロジェ(アキ)なのか。また、ちらちらと描かれる王朝の人間模様も気になる。そもそも、もっと昔の三人---アリュージャ、オレンディア、ユーディアス---がいた鳥籠のことも知りたい。
気になること山の如し(違う)。どうなりますか雪乃先生。

まだちょっと語らせてほしいのだが、『レアリア』で描かれている神話・伝承は、今後の物語の展開を表すような重要な根幹だと推察する。それゆえ、月の女神を大地に縫いとめた黒髪の青年のように、アリルはアキに惹かれるミレディアを、戦争に向かわねばならないミレディアを、きっと手放さないと想像する。アリルなら、6月までと決まった幸せな時間をどうしたって閉じ込めてしまいたいと思うのではないだろうか。それは、3巻の最後に躊躇いなくナイフを抜いたシーンで仄暗い部分のアリルが如実に表されていると思われる。(基本ハピエン勢だがこういうのも大好きな私)

いや、待ってくれ。見てて恥ずかしいまごついたミレディアとアリルの日常生活も読みたいぞ…。ほのぼのにも鬱々とした展開にも振り切れる『レアリア』、すごい。
私は命が続く限り新刊を待つつもりだ。新刊が出た暁にはぜひnoteで感想を綴っていきたい。

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