氏真ーゼの「疲れてはいけません」

どうする家康 12話「氏真」

 歴史の表舞台に立たざるを得なかった家康と立ちたかった氏真。
 12話終盤で、家康との最終決戦で氏真は北条へ身を寄せることを決める。そんな氏真に対して家康が、「氏真様が羨ましいです」と言う。それに対して氏真が「そなたはまだ降りるな」「まだまだ苦しめ」と言う。

 これを聞いて真っ先に思い浮かんだのが、銀河英雄伝説のアンネローゼがラインハルトに言った 「でも、まだあなたは疲れてはいけません。」だった。

 キルヒアイスの訃報を受け取ったアンネローゼ。ラインハルトとのテレビ通話にて傷心のラインハルトを慰める。そして、「疲れたら、私のところへいらっしゃい。」「でも、まだあなたは疲れてはいけません。」と言う。

 初見時(OVA)ではこのシーン、ラインハルトはアンネローゼに一時的に慰めて貰ってまた宇宙統一を頑張れば良いのに、なぜアンネローゼは会うことすら拒むのかとちょっと疑問だった。
 しかし、氏真と家康のやりとりを見るとこの時のラインハルトはただ訃報を伝えるだけではなく、表舞台から降りようとアンネローゼに話そうとしていたのでは無いかと思った。

 歴史の表舞台に自ら望んで立ったラインハルトと舞台裏からずっと見守っていたアンネローゼ。
 「あなたが選んだ道は唯一無二の友人を死なすほどの苦しい道なのです。」「だからそんなことで簡単に降りてはいけません。」と言っているように感じた。

 そう考えるとアンネローゼは、実は宮廷から救い出して欲しいなんて1ミリも思って無かったし、出来ればそんな事しないで欲しかったと思っていたのかもしれない。アンネローゼはラインハルトよりもずっとずっと大人なんだなと思った。

 
 氏真の「まだまだ苦しめ」は家康に対する羨望と激励がこもったものであり、アンネローゼの言葉とはまた違うものだが、これらの言葉は歴史において表舞台に立つ人間に一見厳しいようではあるが、非常に相手の事を思った言葉であると感じた。

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