見出し画像

霜月雑記帳 ♯1

秋の到来を告げる音

“パンッ”
8月もあと数日で終わりという頃。
朝、5時半を少しまわっていただろうか。
相棒(夫のことである)に持たせるおむすびを握る私の耳に、乾いた破裂音が響いた。
ガスコンロの真上の換気扇からは、鳥のお喋りや雨音など様々な音が私の耳を楽しませてくれる。

「あぁ、もうそんな時期だっけ…」
近所の田んぼから聞こえてくる、“雀よけ”の音だ。
「爆音機」というらしい。
何ともド直球なネーミング。

この地域に越してきて10年ほどになる。
住み始めた最初の年は一体何の音だろうと思ったが、今ではすっかり耳に馴染んだ。

思い立って、近くの田んぼの様子を見に行った。
稲穂が一斉にこちらを向いて頭を垂れている。
「もうしばらくお待ちください」
そんな声が聞こえてきそうだ。

田んぼが黄金色に染まるのはもう少し先。
サワサワと稲穂が風に揺れる風景は、見ていてつい時間を忘れてしまう。

…などと気取って書いてみたけれど、“ご飯党”の私にとって一番大事なのは「新米に合うおかず」なのである。
“新鮮な生卵”“焼き鮭”…“秋刀魚”もいいけど、近頃ではすっかり高級魚になってしまった。
お米は、“ふっくりんこ”か“ななつぼし”かなぁ。

そんなことを考えながら、「よっこらしょ」と立ち上がり、その場をあとにした。

“パンッ”
秋空に今日も高らかと鳴り響く。