私は自殺すらできない

大学生の頃、5歳くらい年上の彼氏と付き合っていた。
高卒で正社員になったことのない彼氏を私は見下していた。

いつも「仕事やめたい」みたいなことを言っていて、ひとつの仕事が長く続いてない人だった。
月収はかなり低かったようでいつも節約、節約とストレスを溜めているところを見てきた。
仕事を辞めては親の脛を齧っていた。

こんな大人になりたくないと心のどこかでいつも見下していた、そんな私も大学を卒業して就職した。
もちろん正社員だった。
元々、精神疾患があり高校1年生から精神科に通っている私は、体調が悪い中フルタイムで働き、どんどん体調を崩していた。

本当は在宅ワークとか障がい者雇用とかを選びたかったのだけど、両親が一般雇用の正社員しか許さないと頑なだった。
大学3年生の時に「障がい者雇用で求人を探している」と親に打ち明けたら、「なんのために大学に行かせたと思っているんだ」と受け入れてもらえなかった。

利率?がつかない奨学金(高校の成績がいいと審査が通る)を借りていたのだけど、その頃から親は「奨学金を借りるのはやめだ」と言い、月に3万程の仕送りをくれた。
残りは私がバイトをして4万円くらい稼いで、月7万円で大学生活を送っていた。

自己主張というものができる機会がほぼない中、就職し、1年ほど経った時に根を上げた。
そもそも病状の重い私にはフルタイムの正社員など無理だった。

でもどこかで変なプライドがあって、「私はできるのに」と思っていた。

職場では休職をさせてもらい、数年経って「もう会社には迷惑をかけられない」と辞めた。
鼻から分かっていたことだったから、私は1年間で100万円を貯めていた。
親は助けてくれるどころか私に暴力を振るう精神障害者(実際に通院や入院あり)だし、自分の生活は自分で回していくしかないから傷病手当金と貯金でなんとか体調を回復させようと休んでいたけど、休まるわけがなかった。

自分の好きな物になんかお金を使ったことがない。
「私には病気がある、でも誰も助けてくれるわけではない、だから自分でどうにか生活を回していくしかない」「親は一般雇用の正社員しか許してくれない、また暴力をふるわれるかもしれない」と親の呪縛から逃げることができなかった。

半年くらい経って春が来て、体調なんかいい訳ないのに貯金がないからとまた正社員で働き始めた。
仕事は褒められて嬉しかったが、新卒で入社してきた同期が暴力的で、そしてその自覚がないタイプの人間だった。
机の上に置いてある私の手の上に、バンッ!と書類を置いてくるような男性で、虐待を受けてきた私は酷く怖がっていた。
上司に相談しても、「そこそこ良い大学出てる子だから社員として大事にしたい」といった雰囲気で解決することはなかった。
年末にはその会社を辞めた。

どうしても履歴書の空白期間ができることが怖くて、たまたま知ったぼったくりバーで働いたりなんかした。
私は解離性同一性障害(多重人格と記憶障害)を患っており、暴力的な人格が出たことで警察沙汰になった。

今思えば、なんだか変だった。
お酒に何か薬でも混ぜられていたのかもしれないと思うくらいには精神的に不安定になり、そしてそれを店員が狙ったかのように私は人格交代した。
普段はそんなことは有り得ないし、お酒に強いから変な酔い方をするのも理解が出来なかった。

結局、「両親を呼んでこれば許す」という相手側の申し出通りに動き、両親には迷惑をかけてしまった。
ただ、その時初めて両親は私が暴力的な人格に交代したのを見た。
母親は「ただ怒鳴ってスッキリしているようにしか見えなかった」と理解を示さなかったが、「娘の体調が思ったよりずっと悪かった」という共通認識が両親との間に生まれ、生まれて初めて私は「働かずに自宅療養してくれ」と両親からお許しが出た。

だからって実家に帰るとか仕送りをくれるとかはない。
それを頼りにするつもりもなかったけど、世の中精神疾患のある人は一人暮らしをした経験がなかったり働いた経験がなかったりする人は多い。

両親が言う、「一人暮らしをさせることがこの子のためだ」という意見はよく分かる。
親亡き後、突然今までと違う環境で生きていくのは難しいと思うし、できることなら一人暮らしをして自己管理のスキルを養うことは大事だ。

ただ、私には収入源のない中、「じゃ、後は自分でなんとかしてね」という状況だったので、自分であれこれ調べて一人暮らしをしながら自宅療養ができるよう私ひとりで環境を作り上げた。

そんな20代を過ごしている時、同世代は何をしているか?
健康なんかに気を配る必要もなく当然のように仕事をし、そのお金で好きなものを買ったり友達と旅行へ行ったりしている。
彼氏がいたり結婚したりしている子もいる。

私は?
私は、そんなどこにでもあるはずの幸せがない。

一人暮らしもしたことがなく実家で親のスネをかじり、仕事もせずに自宅療養している人に比べたら私は幸せなのか?
そうとは限らない。
親との関係性が良好で治療に専念できているのならば、私より回復が早いかもしれない。

私には何もない。

趣味でやってきた写真、一応国立大学を卒業したこと、働いた経験はあること、一人暮らしができていること、それしか私にはない。

物凄く寂しい。

本当なら好きなことをしたり結婚を考えたりしている頃なのに、私は精神障害者でニート。
そんな人と付き合おうと思う人はどこか病んでる。

最近、1週間だけ同棲した彼氏がいた。
蓋を開けてみればモラハラで自己愛性人格障害のような男性で、解離性昏迷や過呼吸を起こすまで追い詰められた。
虐待してきたうちの親とよく似ている人だった。
アラサーでこんな恋愛しかできない自分を惨めに思った。
そんな人間でもその人は働くことができていて、「住む世界が違う」とまで言われてしまった。
綺麗なお金を稼いでないくせに偉そうに、と思ったけど、自分で自分の生活を回すために死に物狂いで働く姿には共感を覚えた。

私は、ただのニート。

みんなが楽をしている時に私は苦しんできた。
それが報われたらいいのに。
例えば、アルバイトくらいはちょこちょこやれるくらいになって、後は障害年金を貰えば生活できるとか。
理解のある人に出会えて養ってもらえるとか。
精神障害者の女となればそんな道しか残っていない。

悔しい。
私は高校だって上から数えた方が早いところへ行った。
子どもの頃から何をしてもすぐできた。
どれだけ病気が苦しくても国立大学に行った。
ちゃんと正社員にもなった。

虐待さえ受けなければとか、精神障害さえなければとかそんなifを考えるのは嫌いだ。
嫌いだけど、それでも考えてしまう。

私はただのニート。

社会のお荷物。

みんな苦しくても仕事をして金銭的に自立しているのに。

正社員になったことのない元カレを見下していたけど、私なんかニートだ。

希望がない。
治るタイプの病気でもない。
あまりに深刻すぎる。

どう生きていけば許されるのか。
どうすれば私は私を許せるのか。

歳を重ねる毎に、なりたくなかった大人になっていく。
その度に自分や他人を許すしかない。

私は自分じゃない他の誰かになりたかった。
社畜とか言いながらでも働いている人とか、恋愛が上手くいっている人とかになりたい。
それはそれで大変なのだろうけど、私には社会での最低限をクリアしている人間に見えている。

私って、なんで生まれてきたんだろう。
社会のお荷物になるためなの?
今までどうして頑張ってきたの?
その結果がモラハラ彼氏?ニート?

あまりに酷すぎて、生きてる意味とか考えないと辛い。

私に生きていてもいい理由をください。

生きているだけで素晴らしい訳がないだろ。
だから私は自殺を止めない。
その人はどれだけの重い事情を背負ってると思う?
誰かが代わってあげることなんかできない。
それなら、本人が自分の人生に対してある種の責任を持つことも、自分の人生を自分で決めることも私には否定できない。

それで私は人生で1番の大事な人を亡くしたけど、自殺を止めるなんて上から目線で無責任で大嫌いだ。

一生苦しみを背負ってあげることもできないくせに。
生きることが1番の苦しみなのに。

人がいつ死ぬかなんて本当の本当に分からないんだよ。
だから、できることを最大限するしかなくて。

私はなんだかんだ、ダラダラ人に迷惑をかけながら生きていきそうだけどね。
だって、解離性同一性障害だから自殺願望がない人格もいるんだもの。
自己主張というワードからかけ離れた位置にいるような病気。
自殺は一種の自己主張なのかもしれないね。

私は自殺することすらできない。

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