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生成AIと共に創る実験的SF小説第6日目「臨床試験の闇」

目覚めると、男は自分の体がまるで変わっていることに気づいた。肌はツルツルとしていて、しわや傷跡は一切なかった。

髪は黒くてツヤツヤとしていて、見慣れた白髪はどこにも見当たらなかった。

体は軽く引き締まっていて、筋肉も増えたようだ。

男は自分の姿を鏡で見て驚いた。自分はまるで別人のように若返っていたのだ。

この奇跡の理由に男は気付いていた。

実は数ヶ月前に、ある臨床試験に参加したのだ。

その試験では、マイクロRNAというメッセージ物質をカプセルに入れて体内に投与するという方法で、癌細胞を攻撃するとともに、正常な細胞を再生させるという効果が期待されていた。

男は癌の末期患者だったので、躊躇すること無く、この試験に参加することを決めた。彼には何も失うものがなかったからだ。

試験では、毎日カプセルが投与された。そのカプセルは体内で溶けてマイクロRNAを放出し、血液の流れに乗って彼の全身に運ばれた。

マイクロRNAは免疫細胞に働きかけて癌細胞を見つけ出し、これを攻撃した。同時に、マイクロRNAは正常な細胞にも働きかけて、老化や損傷を修復し、新しい細胞を作り出した。

これによって、男の体は癌から解放されるとともに、若々しく健康な状態に戻ったのだ。

彼はこの結果に感動した。男は自分の命が救われただけでなく、新しい人生が始まったと思った。

自分の家族や友人にこのことを伝えようと男は思った。しかし、その前に彼はもう一つの驚きに直面することになった。

彼は自分の部屋から出ようとしたとき、ドアが開かなかったのだ。
ドアノブを回しみても何も反応がなかった。更に男がどんなにドアを叩いても誰もやって来なかった。

彼は窓から外を見ようとしたが、窓も開かなかったし他に何も見えなかった。彼は自分が閉じ込められていることに気づいた。

男はパニックに陥った。彼は助けを求めて叫んだが、誰も答えなかった。

更に壁や床や天井を殴ってみたが、何の音もしなかった。

このとき彼は自分の部屋が防音されていることに気づいた。

彼には理解できなかった。
この部屋で何日間も過ごしていたのだが、こんなことは一度もなかった。

実は、彼はこの部屋がどこにあるのかも知らなかった。

この試験に参加する際に、男は自分の身元や連絡先を提供したつもりだったが、今はそれらが本当に届いているのか、どうかすら疑わしくなった。

彼は急に、この試験の目的や意味に疑問を感じ始めた。

自分は癌治療の被験者だとばかり思っていたが、もしかしたらそれだけではなかったのだろうか?

彼は自分が何か他の実験の対象にされていたのではないかと想像し、恐ろしくなった。

マイクロRNAが体内でどんな影響を及ぼしているのか、誰かが今この瞬間にも観察しているのではないか?

カプセルは本当に安全なのか?

この若返り効果は永続的なのか?

恐ろしい副作用やリスクがあるのではないか?

彼は混乱し、助けを求めて叫んだ。「誰か!説明してくれ!俺をここから出してくれ!」

だが、誰も答えなかった。

彼は何とか部屋から脱出する方法を探したが、何も見つからなかった。

その後、彼には食事や水も与えられなくなった。

男は飢えや渇きに苦しみ始めたが、不思議なことに、体調は悪化しなかった。

彼はマイクロRNAが自分の代謝を調整しているのだと思った。
だが、彼には果たしてそれが恩恵なのか呪いなのかわからない。

彼は孤独と絶望に打ちひしがれた。男は自分の家族や友人に会いたくてたまらなかった。

このままでは、彼は自分の人生に意味があるのかさえ疑わしかった。

男は自分が人間として扱われているのかどうかも疑い始めた。更に彼は自分がまだ生きているのかどうかすら疑わしくなった。

そんなある日、彼は部屋の壁に小さな穴を見つけた。

穴からは光が差し込んでいた。

穴に近づいて男は目を凝らした。

すると、彼は驚愕した。

穴の向こうには、自分とそっくりな人間が何人もいたのだ。

彼らはそれぞれ別の部屋に閉じ込められていて、様々な表情や仕草をしていた。

男は彼らが自分のクローンだと気づいた。

彼は恐怖と怒りに震えた。

自分が実験の一部であることを確信した。

自分がマイクロRNAの効果を調べるために作られたコピーであることを確信した。

今や自分が個性や尊厳もなく、ただの試料であることを確信した。

彼は叫んだ。「俺は人間だ!俺には名前がある!俺には人生がある!」

しかし、どこからも応えは返って来なかった。


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