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イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル レポート



女性に力を与えた帝王の視点が、我々の前に明かされる

イヴ・サンローランとは

 1936年8月1日、フランス領アルジェリア・オランにて出生。世界的ファッションブランド「イヴ・サンローラン」の創業者。
 クリスチャンディオールのアシスタントとしてキャリアをスタートさせ、以降2002年の引退まで40年に渡ってフランスのファッション界をリードした通称「モードの帝王」。

今日のスタイルは紙から産まれた

 最初の見どころは、紙で作成された服のデザイン画です。非常に精巧につくられている上、デザインも現代でも通用するほど洗練されています。入場口から入ってすぐの場所に展示されてあるそれからは、偉大な才能を感じることが出来るでしょう。

「ファッションは流行遅れになるが、スタイルは永遠である。」

 一人の少年が紙で描いたコレクションを通過すると、その次にはサンローランが世に産み出した様々なスタイルが展示されています。黒を基調とした、着る人に自信と力強い印象を与える服の数々は、我々に時代を超えた普遍の美を教えてくれます。同じ黒でも、濃淡や光沢の有無によって見る人に全く違う印象を与えるのは、彼の持つ優れた色彩感覚のなせる業でしょう。
 この展示で、個人的に気に入ったのはサファリですね。サンローランと言えば、黒でしっかりした格好のイメージがあったので、軽装を手掛けていたのは意外でした。そのサファリも女性の持つかっこよさを引き出すデザインとなっており、系統は違えど彼の「女性により大きな自信を」という信念が感じられます。

動物、異文化、舞台、映画、芸術ーあらゆる美を服にー

 サンローランは様々なものから着想を得ていたようです。それは時には動物であり、民族衣装でもあり、芸術でもあり、そして舞台や映画でもありました。彼がそれらから閃いた作品も展示されています。その中でも個人的に気に入ったものをご紹介します。
 まずはフェザーを使用したドレス。一枚一枚丹念に取り付けられた羽は、宝石のように煌めいていました。服で動物と言えば毛皮のイメージがありますが、このドレスを見ればそのイメージにフェザーが加わる事でしょう。
 お次は映画「昼顔」の主人公の衣装です。エレガンスと実用性を兼ね備えたデザインは、公開当時に社会現象となり女性達はこぞって真似したとか。その理由も頷ける程の完成度です。
 三つ目は、聖母像の衣装です。協会からの依頼で制作されたもので、聖母の衣装に相応しい荘厳な雰囲気を醸し出した作品となっています。細部にまで細かい刺繍がしてあり、近くで見るとより美しく感じます。
 最後に紹介するのは、ポスターにもなっているカクテルドレスです。ピートモンドリアンという画家の作品から着想を得た、三原色と黒で構成されたモダンアートを思わせるデザインと簡潔な服のカッティングが組み合わさったこのドレスは、まさに芸術を服という形に留めています。

「ファッションは奇抜なものではなく、社会に必要とされるものが形作られたものである」

 イブ・サンローランが打ち出したスタイルの数々は、まさしく時を超え現代に生きていると言えます。現在、服の男女の垣根が取り払われつつありますが、彼はそれを遥か前に形にしていたーそれが何よりの証でしょう。
 未来にも残るスタイルを確立した、帝王の視点を知りたい方はぜひこの展覧会へ足を運ぶとよいでしょう。それを見て刺激を受けたあなたが、未来に残るスタイルを産み出すかもしれませんよ。

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