RTCA DO-160 – Section 20.0 – Radio Frequency Susceptibility (Radiated and Conducted) 前編

1.背景

今回の記事は、機器レベルの認証基準の一つであるsection 20についての概要紹介です。これまでの記事で、航空機レベルと機器レベルの話はしてきましたので、今回の記事の中心は少しだけ、機器レベルにフォーカスします。

2.航空機レベルと機器レベルの明確化

過去記事において、これまで、機器レベル、航空機レベルという言葉を使ってきましたが、明確化のために、要求規則を示します。

<航空機レベル>
14 CFR part 21.sec21.41 type certificate
14 CFR part 21.sec21.147 Amendment TC
14CFR part 21. sec21.113 STC
AC43-210A  Field Approval

<機器レベル>
14CFR PART21 SUBPART-O Technical Standard Order

3.DO160 sec 20の要求を航空機レベルの要求から考える!

例えば、14 CFR 25.1317(c)には、次の記述があります。ここでは(c)項を例示に説明します。

sec. 25.1317(c)
Each electrical and electronic system that performs a function whose failure would reduce the capability of the airplane or the ability of the flightcrew to respond to an adverse operating condition must be designed and installed so the system is not adversely affected when the equipment providing the function is exposed to equipment HIRF test level 3, as described in appendix L to this part.

上記の25.1317は、(c)項ですので、HIRF CERTIFICATION LEVEL Cに分類(AC20-158A参照)される機能を有する機器システムのためのHIRF耐性の要件となります。実は、条文の一言一句に深い意味のある単語やフレーズが頻出していますが解釈的なことは全部省略して単純化すると、安全性解析におけるシステムの重要度の評価が、Majorに区分される機器には、Appendix Lで規定されるequipment HIRF test level 3のHIRF耐性値が要求されることになります。

航空機によって安全性解析の評価は異なりますが、HIRF CERTIFICATION LEVEL Cに該当する機器は、安全性解析で、その重要度がMajorに区分される機器システムであり、具体的なシステムを例示すると、VHF COMNになります。では、このVHF COMMNに要求される具体的な航空機レベルのHIRF証明要求値を見てみましょう。APPENDIX-Lからの引用です。

(e) Equipment HIRF Test Level 3.

(1) From 10 kHz to 400 MHz, use conducted susceptibility tests, starting at a minimum of 0.15 mA at 10 kHz, increasing 20 dB per frequency decade to a minimum of 7.5 mA at 500 kHz.

(2) From 500 kHz to 40 MHz, use conducted susceptibility tests at a minimum of 7.5 mA.

(3) From 40 MHz to 400 MHz, use conducted susceptibility tests, starting at a minimum of 7.5 mA at 40 MHz, decreasing 20 dB per frequency decade to a minimum of 0.75 mA at 400 MHz.

(4) From 100 MHz to 8 GHz, use radiated susceptibility tests at a minimum of 5 V/m.

Appendix Lには上記のような記述であり、周波数領域ごとにCS試験とRS試験が要求されています。この航空機レベルの要求は、DO160 sec20で規定される証明カテゴリのzCAT.TTに完全に一致します。つまり、HIRF Certification level-Cのケースでは、機器レベルの認証基準であるCAT.TTを満たせば自動的に航空機レベルの証明要求を満たせることを意味します。同じことがLevel-Bについてもいえますが、その場合の機器レベルの証明カテゴリは、CAT.RRです。certification level-Aの場合は、事情が違ってきますが、複雑なので今回記述では割愛します。

DO160 sec20に話を戻すと、証明カテゴリのCAat.TTやRRですが、最初の1文字目がCS試験の要求であり、もう一つがRS試験となります。参考までにHIRF certification level-Aに該当する機器の場合は、CmCat.OGやCat.WFの可能性があります。場合によってはCat.Yを使用しなけてればならないケースも出てきます。機体のHIRFプロテクションによって証明カテゴリが異なる点がLevel-A機能を有する機器システムの特徴といえます。

4.証明手順


DO160は他のsecも含めて概ね下記の手順に従うことになります。

/1/証明カテゴリの決定
/2/試験法案の作成
/3/試験の実施
/4/試験後の評価

=証明カテゴリの決定=
前述のように、安全性解析を行い、その結果に応じて、HIRF観点で再度の評価がなされ、HIRF certification levelを決定。特にLevel-B/Cに分類された場合は、機器レベルの証明カテゴリは簡単に決定できます。

特に注意が必要なのは、航空機開発者が、認証済みのTSO機器を選択する場合で、多くの人は単純に証明カテゴリだけに着眼して評価をしがちです。開発機体の配線の艤装条件が、TSO認証時の条件に適合するかの判断が必要となってくるのですが、特に配線シールドの有無やシールド線の端末処理の条件は絶対的な評価ポイントとなります。他機でどれだけ使用実績があったとしても、開発機体の配線の艤装条件に一致しない条件で試験証明された機器は、それがTSO認証機器であったとしても、統合システム試験でfailする大きな可能性があり、コストと時間を節約する意味でも、対空性を保証する意味でも、実績品を使用する場合の類似性の評価は確実に行うことが大事になってきます。

=試験法案の作成=
具体の内容は後日の後編に記載したいと思いますが、正しく試験を行ための前提は、開発機体の配線条件、つまり、バンドルの仕方、バンドル内の配線数、シールドの端末処理、Pigtail長など、完全に開発機体の条件に一致させて試験を行うことが基本となります。

=試験の実施=
FAAのDERやFAA職員の立ち会いの下で試験が実施されることがあります。基本的に試験セットアップが試験法案通りにできているかが評価されます。使用するっ測定器の校正記録なども確認されます。

=試験後の評価=
モニターする機器の機能の挙動を評価します。判定基準は、試験法案に定義するPass/Fail criteriaです。この評価基準は本記事の冒頭で引用した、sec25.1317の解釈が重要になってきます。ただ、どれだけ考え抜いた判定基準を用意したとしても現実には合否の判断に迷うケースもあり、最終的な判断は後日に行うのが一般的です。 しかし、安易に合格判定をしてしまうと、その後に実施される統合システム試験でfailするリスクが高まるので、ある意味、そこでの試験にfailしないために機器試験を行っている側面があることには留意が必要です。こうしたリスクを軽減する意味でも、FAAの認証試験の前に社内で試験を行っておき、正しく挙動を評価できるpass/fail criteriaを準備することも選択の一つです。

免責
本記事の内容は細心の注意を払って記載はしていますが、本記事によって発生したいかなる問題について一切の責任を負うものではありません。



















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