型式証明と製造認定、その他

1.背景

航空機の設計製造は、欧米がリードし、新規に参入するには非常に高いハードルである型式絵証明を取得しなければなりません。この型式証明の要件は、世界的にほぼ共通でですが、米国、欧州、カナダ、ブラジルが実質的には定め、それらの国のIEMによる寡占状態となっています。

WEBなどはでは、この欧米の型式証明の要件が曖昧で、証明には独自のknowhowが必要と説明されていることもありますが、多くの要求項目に対して証明要件は明確に指示されていることも事実です。むしろ、その要求内容自体を理解することが難しく、広範囲であり、最近はますますエスカレートしているのが実情のような気がします。今回の記事では過去記事とは異なり、もう少し広い視点での記事にしたいと思います。このため、本投稿には技術的な価値はありませんが、一般論として見て頂けるとと幸いです。

2.サプライヤー

最近の航空機は、アビオニクスの進化が著しく電子機器の性能がその航空機の安全性や商品性を左右します。航空機の見た目は、50年間変わっていませんが、搭載するアビオニクスを中心に電子制御の分野で大きな進展があります。このため証明要求もそうしたものに応じて次々と発行され日進月歩となっています。

こうした傾向から型式証明の主役は機体製造者というより、これらの電子装備品を供給するサプライヤーという側面にシフトしているように感じられ、極端に言えば、自作パソコンを制作するような感じではないでしょうか。型式証明のOEMに必要とされることには、サプライヤーの製品をインテグレートすることですが、サプライヤーの仕様等も理解する必要があり、ますます高いスキルが求められる時代になってきています。航空機に搭載される数多の装備品は、TSOにより一定程度の証明が完了していますが、そのTSOで証明されている範囲はどこまでの範囲で、どの部分の証明が流用できるのかを見極めるスキルもOEMには必要です。また、非TSOの製品を使用することも仕組み上は可能ですが、OEMが自ら設計していない装備品まで完全に責任を負うことは困難です。こうしたケースではPMAと呼ばれる認証方式を選択することも可能です。

このように話すとTSOやPMAを取得した製品でシステムを構成すればOEMの証明は不要だと思われる方もいらっしゃると思いますが、それは全くの迷信であり、OEMは、自社の開発する航空機の要件に応じて、サプライヤーの証明範囲を十分に確認しなければなりません。とても重要なことなので繰り返して言うと、一般に、TSO製品で証明された製品なら、どの航空機にもインストール可能だと思われがちですが、これは全くの迷信だと断言できます。サプライヤー視点から考えてみると、どのような装置に連接されるのかわからない、どのような飛行機に搭載されるのかわからない、どのような場所に、どのような配線に接続されるのかわからないのですから、そんな範囲まで責任は負えないからです。OEMは、とにかく、サプライヤーから購入する製品の証明範囲を確認し、自社の機体の条件を比較分析できる能力が必要です。

4.安全性解析

型式証明のプロセスに安全性解析が含まれているのですが、こうした活動はプログラムの初期段階で完了していなければなりません。特に解析という言葉から数値解析をイメージしがちですが、それは副次的なものであると理解してください。例えば、冗長設計されたアビオニクスを機体のどこに配置するかと言ったことはとても重要です。冗長設計のために重複設計を行なってシステム全体の故障率を低減させたとしても、同一アビオニクスを同一エリアに配置してしまった場合、火災等のリスクを考えると冗長設計が機能しないからです。どこにアビオニクスを配置することが最も有利なのか、様々なリスクを想定して最適化することが安全性解析の基本です。

この点からだけでも数値解析だけがメインの要素ではないことは明らかですが、忘れてはいけないのが配線設計です。せっかくの冗長設計、異なる場所の配置を行っても、同一バンドルに配線されてしまったら意味がありません。安全性解析は、その解析という言葉の響きのイメージとは違い、様々なリスクを想定し、その設計をあらゆる側面から最適化することです。別の言い方をすると妥協を図る、あるいはバランスを取るといった要素が強いように思います。

4.設計と製造

型式証明は、Type certificateと呼ばれるもので、デザイン面の評価が必要実施されますが、もう一つ、Production Certificateと呼ばれる認証も必要になってきます。PCは、TCとは違う部署で審査され、設計通りに製造し続けることが要求されます。航空機は、多数の部品から構成されますし、それこそ多種多様なサプライヤーが製造や設計に関与します。設計通りに製造すると一口にいっても、例えば、あるサプライヤーが事業を辞めてしまったり、電子部品を変更したりすることは想定されます。OEMから見れば、勝手に装備品の仕様が変わってしまうことになりかねません。こうした製造上の変更は、Amendment TCに相当する可能性がありますので、OEMは、こうした製造都合による変更を常に把握し、必要に応じてAmendment TCの手続きを申請する必要があります。

5.Continued Airworthiness

いわゆる耐空性の継続に対する責務が型式証明のホルダーには求められます。型式証明を晴れて取得して、航空機が運航される状態になっても様々な不具合が発生するものです。この不具合には、安全性に影響の大きいものからそうでないものまで様々ですが、いずれにしても全ての不具合をモニターして安全性に問題がないことを確認し続け、必要に応じて設計変更を行う必要があります。

6.まとめ

今回の投稿では、型式証明にまつわる一般的な事項を少し書いて見ました。型式証明の本質は、個々の証明要求を正確に把握することが必要ですが、型式証明全般に関する一般的な情報も必要と思い簡単ではありますがご紹介させて頂きました。次回からは、再びEMCに関連bする技術要件についての記事に戻しますにで興味のある方は是非ご覧ください。

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