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雷撃ゾーンの定義

1.背景

過去記事で、型式証明に関する米国の証明要求に関する記事を幾つか投稿しましたが、今回の記事では航空機が被雷するゾーンについて記事にしたいと思います。

機体のどこに雷撃がヒットするかを特定することで、必要な保護設計の程度や試験要求などが決まってきますので、型式証明のプロセスの一つのステップとして、このことが必要になってきます。このステップのことをAircraft Lightning Zoningと言いますが、単にzoningと呼ばれることもあります。zoningを行うには、雷撃のentry pointとexit pointを定義する必要があり、試験と試験後の分析の両方を用いてzoningを定義します。雷撃に関する安全性解析と並び、このzoneの定義は、型式証明プロセスの初期の段階で実施されることになります。今回の記事は、プログラムの初期段階で実施されることになるzoningについての紹介となりますが、このzoningが、雷撃の型式証明全体のプロセスにおいてどのような役割を担っているか等の全般的な位置付けについては過去記事の「型式証明における雷撃保護設計の証明プロセス」をご覧ください。

2.航空機のどこに雷撃を受けるのか?

雷が避雷針にヒットすることはよく知られていますが、尖った部分に雷は誘因される性質があるように、航空機に雷が落ちるゾーンも、同じように機体の先端部分にヒットします。具体的には、機首、翼端、エンジン、降着装置、尾翼の先端部分などです。そして、どこから雷が抜けていくかというと、概ね機体の後方などからとなっています。zoningを大雑把に言うと、機体の各部をZONE-1/2/3に分類することです。このzoningは、SAE ARP 5414の手順に従い縮尺された模型を使って、どこに雷がヒットするのかを決めていきます。ARP5414には典型的な航空機の形状に応じたzoningの例が示されていますが、設定されるZONE-1/2/3は、機体の形状によって大きく変化します。下記に、各ZONEの説明を加えました。

ZONE-1:
直撃雷を受けるエリアで、典型的なZONE1のゾーンには、前述した機首部分や翼端部分等

ZONE-2:
雷がsweptingするエリアで、典型的なZONEは胴体になります。

ZONE-3:
そのいずれでもないエリアで、典型的なZONEは大部分の翼や尾翼

Zoningのイラスト

イラストの補足:
実際の型式証明においては、もう少し細分化した区分を設定する必要があります。イラスト参照。イラストに示すZONEには、suffixがあり、Aがentry pointで、Bがexit pointであることを示しています。Cは、ZONE1からZONE2に遷移するゾーンとなっています。

このxoningに関する詳細は、下記を参照してください。
SAE ARP 5414
SAE ARP 5412

3.Zoningから得られる結果を利用

航空機の形状に固有のzoningを決定すると、次の2つの環境を特定することができます。
  1.external lightning environment
  2.internal lightning environment

最初のexternal lightning environmentは、zoningの結果そのもので、機体外板と機体外板にマウントされる機器(アンテナやセンサーなど)に対する試験要求となります。これは、zoningの結果を利用して決定することができます。例えばAOAセンサーやピトーは、機首部分に配置されることが多いので、そこにマウントされる機器の試験カテゴリーは、CaAT.1A/1Aということになり、また、マウントされる機器だけでなく、そこの構造にもこの試験カテゴリが適用となります。試験カテゴリの詳細は、DO160 section 23に規定されています。

2つ目のinternal environmentもzoningの結果を利用する点では同じですが、機体内部に配置された電気電子機器の配線インターフェースに誘導される雷誘導トランジェントの大きさや誘導波形の形状を推定するために使用されます。これをinternal environmentと言います。internal lightning environmentは、一般にDO160 section 22に規定される試験カテゴリの表記と同様の表記が用いられます。具体的な試験カテゴリは、B3K3L3のように表記されます。

4.まとめ

今回の記事では、航空機への雷撃ポイント等を定めるために使用されるAircraft zoningについて、紹介させていただきました。これは、航空機の雷撃ゾーンを決定するために行われ、一般には模型を使った試験によって決定されます。雷撃ゾーンが決定できると、次のステップのenternal/internal lightning environmentの推定を行うことが可能となり、機体構造や電気電子機器に対する試験要求が決められることになります。試験要求として定めることになるのは、直撃雷と間接誘導雷のための試験カテゴリはDO160 section 22/23に基づく表記が使用されます。

免責
記事の内容は、細心の注意を払って記載をしていますが、絶対的なものではありません。本記事の内容により生じるいかなる損害、不利益等についても責任を負うものではありませんので、あくまで参考としてご使用頂ければ幸いです。

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