RTCA DO-160 – Section 20.0 – Radio Frequency Susceptibility (Radiated and Conducted). 後編

1.背景

型式証明における航空機レベルのHIRFの証明において、Certification level-BやCに区分される電気電子機器に要求されるHIRF耐性の要求値は、DO160 sec.20で規定される証明カテゴリであるCat.RRとCat.TTに一致することは過去記事で説明済してきたところです。このことは、航空機レベルの証明=機器レベルの証明であることを示しています。もちろん艤装要求の違いによる留意点はあるものの単純化すれば、機器レベルの証明を行えば、航空機レベルの証明に達したことを意味します。現実のHIRFの証明は、Certification level-Aの機能を有する機器システムの証明が中心び据えられていますが、その基本は機器レベルの認証をベースにおいてあり、この基本に触れることが航空機レベルの証明に繋がっていきます。こうした理由から、今回の記事は、機器レベルの認証の手順を概説してみたいと思います。あくまで概要になります。

2.試験カテゴリの選定

Certification level-AとB/Cによって扱いが異なり、後者の場合はDO160 sec20のCat.RR又はTTを航空機レベルの証明要求値にすることができます。14CFR part25のAppendix L to Part 25には、Certification level -Bに関する要求のオプションとして、以下の記述もありますが、この試験レベルの選定の考え方は、Certification Level -Aの考え方に通じる者があります。しかし、一般には、equipment HIRF level-1(Cat.RRに一致する)を選択するのが一般的です。本流ではありませんが、このオプションについて下記に示します。

⭕️certification  level Bで適用可能なもう一つのHIRF試験要求値(equipment HIRF test level 2)

d) Equipment HIRF Test Level 2.
Equipment HIRF test level 2 is HIRF environment II in table II of this appendix reduced by acceptable aircraft transfer function and attenuation curves. Testing must cover the frequency band of 10 kHz to 8 GHz.

上記は繰り返しですが、あくまでオプションであり、例えばCat.RRでfailする場合などに、場合によっては有効かもしれません。ただ、一般的ではありません。

⭕️Certification level Aの場合
Certtification level-Aの場合はどうやって試験レベルを定めるかというと、3つのドキュメントを使って証明すべき試験レベルをinternal HIRF environmentに変換することで目的を達成できます。この意味は、Certification level-Aは、その要求値がexternal HIRF environmentで規定されているので、internal 環境に置き換えた要求値に変換する必要があるからです。 このあたりは、過去記事で少し触れています。具体的に変換するための3つのドキュメントを明示します。

/1/ APPENDIX L TO PART25
下表がCertification level Aの証明要求値ですが、external environmentの単位で規定されています。具体的には、航空機の外部にある放射源を指標としています。単位はV/mで、電界強度の単位。DO160 sec.20には、特にCS試験では電流単位で規定されていたり、あるいは、PM,SW,CWで要求値が異なったりしていて、一見すると、どんな関係性にあるのかわかりませんが、要するにexternalからinternalに変換することで解決します。

Appendix L to part 25


/2/. AC20-158A
下のグラフはAC20-158Aからの引用で、航空機の大きさや材質により適切なものを選ぶ必要があります。 ポイントは縦軸の単位です。mA/V/mとなっているように、これにより外部から与えられた電界強度が電子機器の配線に誘導される電流に変換できることを意味します。

AC20-158A

/3/. SAE ARP 5583A
この文章は有償ドキュメントなので、参照することができません。SAE ARP 5583Aの7.3.12項において、Peak/AverageをPM/SW/CWにに変換する説明があります。

以上が3つのドキュメントの使い方となります。この変換ができないと機器試験に適用するinternal environmentで規定される証明カテゴリを特定することができませんので、これら3つのドキュメントの活用方法は基本マナーとして把握されている必要があります。

3.試験法案の作成


試験カテゴリさえ決まれば、認証手順はCertification levelによらず全て共通です。試験は大別してCS試験とRS試験で構成され、前者は低周波数領域、後者は高周波数領域の試験。試験法案の作成において重要なのは、下記事項です。
1)適用する試験レベル
2)適用する試験周波数(critical frequencyがカバーされているか)
試験セットアップの配線等が実機を模擬できているか。
3)EUTに連接する電子機器が実機を模擬できているか。(具体的にはインピーダンス特性)
4)セットポイントの設定、試験は、EUTの機能の挙動を評価するために正常作動状態で行います。複数の作動状態がある場合、最も不利な作動条件で電子機器を作動させた状態で試験を行います。
5)Pass/Fail criteriaの設定。この合否判定は、機器製造者の出荷試験の基準を参考に、sec25.1317等の条文を勘案して設定syる。通常、当局の承認が必要です。

実際には非常に細かい注意事項が記載されており、それらの全ての内容は重要なことばかりです。とても全部を記載しきれませんので、主な事項のみを記載しました。

4.記録


CS試験の例で言えば、機器インターフェースから一定の距離にmonitor probeを設置します。距離に幅が許されているということは、電気長の違いを生み測定データに違いが生じます。このため許容値を遵守するのは当然としても、後からのエンジニアリングジャッジに繋げる意味でも記録として、測定データに影響を与える因子を持つものは記録に残しておくほうが無難と考えられます。この意図するところは、特に統合システム試験と航空機試験で得られるデータ比較において参考になります。航空機レベルの試験ではオクターブ法を用いることで、この手の電気長の問題を回避できますが、基礎データの追跡ができる余地を残しておくほうが無難だともいえます。

5.判定


Pass/fail criteriaに基づく判定となりますが、未知の機器に対して最初から適切な判定基準を設けるのは難しいとも言えます。最も厳しい機器システムの作動条件で試験するとは言っても、具体的にどのような試験条件で試験するのが良いのか、かと言って全ての作動条件で試験するのも時間的に難しいのも事実です。しかし、それを求められるのが型式証明であり、Do160においても、そうしたことが求められるきとになります。前編においても記載したように、一般論レベルで言えば、sec.25.1317の条文に則した判定基準となります。どんな電子機器もHIRFによりシステムの機能に何らかの挙動が現れるのですが、ポイントは、その程度びなります。この程度に対する定性的な記述が規則本文に記載されているのでPass/failは、その定性的な表現から、試験法案に相応しい判定基準に当てはめていく必要があります。

免責
本記事は細心の注意を払って記載していますが、本記事びより生じるいかなる不利益について責任を負うものではありません。












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