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川崎のカラオケスナック「アリラン」


川崎には一大コリアンタウンがある。
そのコリアンタウンから川崎駅との間に、カラオケスナック「アリラン」があった。
ママは35歳の在日韓国人で
和名を早苗と名乗っていた。

店内はかなり広く、テーブル席が八席に5人がけのカウンターがあった。
カラオケはDAMを備え一曲二百円で、たえず歌が流れていた。

料理はチヂミやトッポギなどの韓国料理で、ボトルは真露やダルマで酒はかなり売れた。

狭いながらも、ダンスフロアがあり、カラオケの曲に合わせ、アベックがチークダンスを踊っていたが、夫婦連れはいなく、常連の男女客で、お互いに顔も知れている。
多分、本名では無いとおもうが、お互いニックネームで呼び合っていた。

お互い気があった同士、そのあとどこかに一緒に消えたようであるが、勿論、早苗は深く詮索しない。


ある日の夜、一人の初めての男が飛び込んできた。

チヂミとロックを注文するなり、歌い始めた。

ものすごく歌が上手い。
その旨さに、他の客から
リクエストがかかるほどの人気である。

顔立ちはソフトで、体格はガッチリしている。
妻子もいるかも知れないが、気晴らしに、飲みや歌いにやってきたのかも知れない。

早苗は男に好意をもった。

アリランの閉店は1時であるが、その男はかなり遅くまでいた。

そのうち客はその男一人になった。

早苗は男に名前を聞いた。

「斉藤昇です。歳は35歳です。」

「あら、私と同じ歳ね、一緒に飲みましょう。」

早苗は水割りを飲み始めた。

「ねえ、踊らない?」

早苗の誘いに乗り、カラオケ曲を流しながら、二人は身体を密着させて、チークを踊り始めた。

斉藤は、早苗の熱い吐息と胸の膨らみと、恥骨を感じた。

曲が終わると、早苗は斉藤を誘った。

「ここでいいのよ。」

早苗はテーブルにうつ伏せになり、思いきり腰を持ち上げた。
斉藤は後ろから攻め立てた。
テーブルがきしむ音がした。
二人しかいない店内、早苗は大声で喘いだ。


早苗は斉藤を見送ると、

「また来てくれる?」

斉藤はうなづいたが、その後待てど暮らせど、男は二度と顔を見せることはなかった。




           完

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