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【解説】市民に謝れない警察、独善的な風土の改革急務

▼長野県諏訪市でおきた今回のトラブルが浮き彫りにするのは「市民に謝れない警察」の存在だ。

ノンアルコール飲料を酒類と勘違いしたことが判明した時点で、素直に謝罪していればトラブルの拡大は防げたはずだが、「警察側に誠意はまったく見られず、紛らわしいノンアルを飲んでいる人に落ち度がある、とでも言いたげな様子が現場にいた警察官3人からは見てとれた」(現場を通りかかった市民)。

市民に寄り添わない不誠実な態度が事態を悪化させた。

▼警察は行政機関の一つだが、他の機関とは権力の質が異なる。公共の秩序維持のため、市民の自由を制限できる法的な裏付けをもっている。職務質問もこの法的概念に基づき正当化される。

▼警察はそうした強大な力を行使できる立場にあるが、時として「ストーリー」(見立てのこと)と異なる事態が発生した場合、難しい対応を迫られる。本件にあてはめれば、「運転者は飲酒運転していたとみて職務質問したものの、実はそうではなかった」というケースだ。

警察に求められるのは、自分たちのストーリーに沿わない事実を発見した際、速やかに従前の方針を悔い改める「機動性」だ。謝罪すべきことがあれば謝罪しなければならないのはいうまでもない。市民社会はそうした「誠実な対応」を警察に望んでいる。

▼しかし、いまの警察は市民の期待に答えられる組織とはいえない。歯止めのきかぬ冤罪はその何よりの証拠だろう。警察・司法機関に罪をでっち上げられた冤罪はいっこうに減らず、被害者は泣き寝入りを余儀なくされている。

冤罪で人生を棒に振った人たちの悲しみははかりしれない。それについて警察はひと言も発していないケースがいくつもある。我々は知らぬ存ぜぬ、というのだ。

こうした目に余る事態をなんとかしようと、2019年には「冤罪犠牲者の会」が結成され、証拠の改竄や無理な自白強要などによって、警察・司法機関に罪人に仕立てられた人々が声をあげ始めている。同会の関係者が一様に口をそろえるのは「一度決めた自分たちのストーリーをいっこうに改めない、警察・司法機関の硬直性」だ。

▼こうした状況をみていると、警察の組織風土について、素朴な疑問がわいてくる。

なぜ、誤りを認めるのがそれほど難しいのだろうか。間違ったら訂正するのが社会の常識ではないだろうか。なぜ、子どもでもわかる論理がこの組織には根づかないのだろうか。自分たちは特別、とでも思っているのだろうか。

▼きょう、現場で諏訪署員がとった言動を分析すると、そうした「疑問」を解く手がかりが浮かんでくる。ひと言でいえば「独善的」なのだ。市民の声を聞くという発想に乏しく、無謬性(誤りがなく絶対的に正しいこと)を主張し続ける思考回路がこの組織の隅々にまで行き渡っている。

下記のエピソードはそんな警察の組織風土を端的に示す。

職質を受けている最中に男性が「名前を教えてください」と警察官に依頼したところ、3人のうちもっとも立場が上の警察官はこう言い放ったそうだ。

「なぜ、あなたに言わないといけないの?」

市民を軽んじる警察組織の抜本改革が急務だ。

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男性に氏名を教えることを拒否した諏訪署員(右)。百瀬巡査(左)の上司にあたる。現場では場違いな笑顔を見せたり、男性に対して高圧的な言動をとったりしていたという(関係者提供)

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