エロゲに邂逅 その2

 16bitセンセーションによりエロゲに惹かれた自分だが、何をやればいいのか…という壁が残った。正直ほとんど知らない。葉鍵のゲームは全年齢版しか、ほぼ残っていない。やはり、エロゲに興味を持ったのだから、エロがあった方が良い。泣きゲーだろうがなんだろうが、R18とエロだからできる物語が展開されている筈だ。原作は知らないが、アニメの『ヨスガノソラ』がまさにそれだった。『ヨスガノソラ』のような、セックスがあるからこそ描ける物語を観たい。表現としてのセックスが存在するものが良い。これが、エロに拘る理由だ。『WHITE ALBUM 2』はFANZAでやれたが、財布と相談した結果諦めざるを得なかった。他に何があるのか…そこで導いた答えが取り敢えず、アニメ化している作品から財布と相談可能なモノを選ぼうという結論だった。そこで見つけたのが『ef the first tale』だ。当時『傷物語 こよみヴァンプ』や『それでも町は廻っている』を観ていて、シャフトに関心を持っていた。また、『コゼットの肖像』や『The soul taker 〜魂狩〜』など濃度高めの新房昭之監督作品も鑑賞していた。『ef』のアニメ版はシャフト制作、大沼心監督、監修に新房昭之がついている。この豪華スタッフが携わるゲームなのだから面白いに違いない…と感じ購入を決意した。後編を買う頃にはお金も貯まっているだろう。そういう考えもあった。で、面白い面白くないを判断する前に最初の衝撃にぶつかった。ムービー監督・新海誠だと…!?我々の世代は国民的アニメ作家というと新海誠だと答える世代だ。その人がエロゲに携わっていた…!?『ef』制作会社minoriのホームページにpvが載っていたのでそれを観てみることにした。凄まじいクオリティだった。圧巻だった。こんなに素晴らしい映像詩があるのか…特にサビが良い。走り出す〜のところで雨宮優子にグングンと寄っていき、サビで一気にグアっとカメラが周り火村夕と雨宮優子が触れ合い、優子が涙をこぼす。そして優子が飛ばした紙飛行機が散り、音羽の街に明かりが灯る。サビの一連のカット割りのリズミカルさが良い。また、『ef』の何処となく悲壮さのある世界と新海誠の光を用いた映像表現が見事に一致していた。『ef』のCGは光を強調したものが多い。新海誠の持ち味と抜群の相性はそれゆえ生まれたのだろう。一時期、新海誠の最高傑作は『ef』のオープニングなんじゃないかと思っていた時期があったほど、好きな作品だ。因みに今は、他に『言の葉の庭』『ほしのこえ』『秒速5センチメートル』『だれかのまなざし』がお気に入りだ。新海誠は情報量の多い画面構成なので、短いフィルムだと圧縮感が出るため、彼の中編、短編にお気に入りが多いと考えている。これは好みと感性の問題だろう。また、そもそも『ef』の主題歌の『悠久の翼』が名曲だった。歌詞の意味はよく分からなかったが、荘厳なかっこよさがある曲だなと思った。すると、天門という名前を認識することになる。すると彼は新海誠監督作品の音楽作品の多くを担当していることに気づく。そして、『ef』をプレイしてみると、面白かった。宮村みやこは可愛いし、新藤景は健気だ。そんなこともあり、ずるずると『ef』沼にハマってゆく。
 これが決定打だった。新海誠の他のOP担当作品はないかと探したり、キャラデザの七尾奈留の他の作品はないか、などである。minoriの他の作品は何があるのだろう。探しまくった。そのうち、みるみる世界が広がっていった。面白い。兎に角、面白い。こんな広い世界があることを俺は知らなかったなんて…新海誠は『はるのあしおと』や『Wind a breath of heart』を、minoriは『すぴぱら』など、七尾奈留は『canvas 2』や『D.C.〜ダ・カーポ〜』へと繋がった。また、新海誠を通して魅力を覚えたエロゲのオープニングは、『秋色恋華』へと繋がった。『秋色恋華』は、劇中のキャラクターをそのまま動かそうという意気込みが感じられる素晴らしい映像だ。主題歌への興味は以前から好きだった『鳥の詩』などもあり、聞けるものを聞いた。『ダ・カーポ 第二ボタンの誓い』や『Face of Fact』などに出逢った。世界が広がっていくのを感じた。
 絵の力の強さ、声優の演技、シナリオの巧みさ。どれをとっても『ef』は素晴らしい。特に後編の『the latter tale』の雨宮優子が狂ったように火村夕に笑いながら過去の話をするシーン(アニメはアニメで凄くトラウマになる表現なんです…)はこの3つが絡み合ったシーンだ。場面が場面なので、素晴らしい!とは言いずらいが、心に強く殴られたような感触を残すシーンだ。あの優子の笑みは夜に見たら寝れなくなる。本当にあのシーンの優子は怖かった。震えてしまった。その分、その後結ばれたのちのセックスシーンは素晴らしいものになっている。優子は情念の人だ。それが最も出ているのがセックスシーンだろう。エロゲのセックスシーンはヒロインの背後にあるものが出たり、感じられたりする。そこが、何よりもの魅力だと考える。
 このような魅力をもつ、エロゲというものに出逢えた自分は如何に幸福な人間なのだろうかと思う。きっかけを作ってくれた『16bitセンセーション』や決定打を打ち込んだ『ef』シリーズには強い思い入れがある。その意味で、この夏は忘れられないものになるだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?