エロゲに邂逅 その1

 美少女ゲーム、俗称を用いればエロゲと言われるジャンルのゲームに非常に興味を持っていた。きっかけは出崎統監督の『劇場版AIR』と『劇場版CLANNAD』である。この2本からkeyというブランド、そしてそこが元々エロゲを作っていたことを知った。ここらの作品はSwitch版に後々触れることになる。漠然とした関心をエロゲに抱いていた自分に決定打となったのがアニメ『16bitセンセーション Another Layer』だ。エロゲを作る人々を描いたものであるが、自分にはこの作品がドカッと刺さった。なぜエロゲもkeyという固有名詞しか知らない、90〜00年代のこともよく知らない自分が観ようと思ったのか。自分は作中時代の90年代には生まれてすらいない。ノスタルジーなんて湧き起こるはずもない。では何がきっかけかといえば、あらすじにあるだろう。当時の自分は、今でもそうだが、オタクという人種について知ることが楽しかった時期だった。趣味と向き合いながら生きていく人々に、興味を持っていた。コノハもそんな人種の1人なのだろうと感じ、見始めた。そして、それは刺さったのだ。特に第一話だ。主人公のコノハがエロゲに対する愛を抱えながら、現実にはやりたいことができないもどかしさを抱く様に強く感情移入してしまった。しかし、熱量は誰よりも熱いのだ。その熱が、ドラマとともに伝わってきた。コノハが好きだというエロゲはよほど魅力的なものなのだろう。強くそう感じた。エロゲへの興味を加速させてゆく。因みに本作はかなり賛否が分かれている。主に後半だ。さすがに秋葉原が大変貌した展開には度肝を抜かれたが、あれでいいのだ。あの展開があるから、あのアニメはただの過去回想して、あの頃は良かったねぇというノスタルジーなアニメであることを拒否し、万人に向けた作品となっているのだ。それはクリエイターへの賛歌という点へ収束している。そして、それは時代を越える。名前は忘れたが、あの二人の未来人はその為にこそ存在意義がある。コノハがエロゲを通して得たモノが、新たなゲームを生み、それがまた未来人の手へ渡るという円環構造がある。16bitセンセーションのアニメの魅力はまさにここにある。一つ不満があるとすれば、最終話のコノハと守君の再会の後、アルコールソフトのオールキャストもサプライズ登場!みたいなことをして欲しかった…とは思う。しかし、それを補って余りある熱量がある、素晴らしい作品だった。また、この作品を通してみつみ美里や甘露樹、若木民喜を知ることもできた。また、当時を回想するインタビューや連載もあり、エロゲに対する関心はまさにクロックアップしたかの如く加速した。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?