第2話 今、真実を伝えるとき

 最初、二人…いや三人は何が起こったのかわからなかった。

「「王!大丈夫ですか?フフフっいやー危なかったですねぇ~。」」

「ホントーあっぶねえええええ。危うく能力使って王座ゆずるところだったぁ。兵士と時間に助けられたああああ。」

北と西の呼びかけに王は情けなくもそう叫んだ。叫ばざる終えなかった。一体何年振り?いや、初めてか?絶体絶命がすぐそこまで押し寄せてきていたのだから。
三人はこのときやっとゲームが終わったことに気付いた。
王は、崩れるように椅子に座り、自分をここまで追い詰めた男たちを見た。

「おっお前らか。俺をここまで追い詰めたのは。そうか…お前らか…。まさかあの時にたまたま会った奴が俺を追い詰めるとは…。これも運命ってやつか…。イヤー参った。参った。…というか、そいつ誰?」

「「さあ?」」

「痛ってええええ。あのババア…帰ったら覚えておけよ!なにが、あの国の王の椅子はおまえくらいだったら簡単に取れる…だ!能力なしで、こうもボコボコにされるとは...。まぁこっちも使ってないから五分五分ってことにしておくか…。」

「!!もしかして、婆さんってソテツさんのことかい?ってことは戦闘農民の国の人?」

「あ?(あっ王だった。)えぇそうです。あのバ…いえ、ソ、ソテツ様の国の者です。お知り合いですか?でも、あの人はあまり外の国に…」

「あははは。そりゃあ一応王だから知ってるよ。王になる前にも何度かあったことがあるし...。あっ後、ソテツさんのことはいつもの呼び方で大丈夫。別に俺の前だからって様呼びにしなくてもいい。だってほら、あの人王様呼びされるの嫌うじゃん。」

「確かにその通りです。以後気を付けます。」

「「あっあの~。僕たちはもう帰っていいですか?この後、予定が出来たんですけど...。」」

「あっ忘れてた。そうだった。そうだった。これからが大事なんだった。つい、興奮して本題のことを忘れてた。それじゃ!」

パンッ

強大王はもう一度、空中を叩いた。皆、さっきのように動けなくなる。そう感じた...。しかし、今度は、みるみる体が回復するのを感じた。

「どうだい?体が元気になってきたでしょ。どう?もう一回勝負する?
うわっ、あからさまに嫌な顔ぉ。冗談だよ冗談。今から、君たちに大事な話、本来の真伝式の役割を説明するから楽な姿勢で聞いてね。」

王はそういうと、さっきとは違い、マジだぜ。マジに話すぜ。というような顔をして、椅子に座り直した。兵六と心…そしてもう一人は玉座から降り、王に一番近いところに座った。

「よし!そろそろみんな楽な体制になったね。じゃあ話すよ。
じゃあまず、結構長い話だから結論から先に言おう。無能力者…つまり、ここにいるほとんどの者は二十歳までに異能力者にならないと…死ぬ。」

兵六を含め参加者全員、今日二度目の何言ってるんだこいつは...。と思った。強大王は、これも例年通りの反応だと思いながら、話を続けた。

「やっぱりそんな反応するよね。俺も最初聞いたとき、同じ顔をした。だって、急にあなたは二十歳までに死にます。って言われたら、そりゃあ誰だって嫌だよねぇ。でもこれは嘘や冗談じゃない。試しにそのまま二十歳まで生きてみて。とはふざけても言えない。だから、今からその話をする。まず、君たちは神我捨は知ってるよね?」

さぁ?そんな顔をしているのは兵六だけだった。学校で習ったような…その時寝てたような…そんな事を思っていると、王はしゃべり続けた。

「まあ、ほとんどの人は学校で習って知ってるね。でも、一応簡単に説明すると…約2000年前、地球に未曽有の大災害が起こった。人々はその日を神が我らを見捨てた日。神我捨と名付けた。その後、生物に急激な進化が起こり、人類を襲った。人々はそれを求権戦争と呼んだ。結果、今の世界が出来た。これが君たちが最低限知っているところだね。そして、ここからが本題だ。第三次求権戦争から十年たった頃、20歳以上の無能力者たちが次々に死に始めた。最初は皆、感染症と思った。しかし、能力者はかからない。症状がまるで無く、急に呼吸困難になり死ぬ。そして、死体のどれにも病原菌らしきものが見つからない。この三つのことから病気ではないことがわかった。 ‘‘無能力者無呼吸死‘‘ この現象はそう呼ばれた。治療法はない。最初は皆そう思った。しかしある日、獣の国ではそれが起こっていないことがわかった。なぜか?獣の国では昔から一定の年になったら、かつての先祖のように四足歩行になれる方法、【先祖返り】というのを教えていたからだ。これが実は、異能力の一つだった。そこで人類は試しに何人か教えるのが上手そうな能力者と数人の無能力者を集め、無能力者に能力を教えさせた。すると、得手不得手はあったが全員能力者になり、この現象が起こらなかった。つまり、治療法より先に、ならない方法が見つかったのだ。全世界にいる権力者たちはこのことをふまえ、ある一つのことを決めた。それは、ある年齢まではこの出来事を子供たちに隠し、そのある年齢になった時、一つの場所に集めこの出来事…この真実を伝える機会を設けようと。
それで出来たのが、この真伝式だ。
じゃあなんでわざわざこのことを隠したのか?
いいか?今から言うのは俺個人の考えだ。本当かどうかはわからない。
だが、俺が思うに、人生を焦らせないためだと思う。二十歳までに能力を覚えなければ死ぬと焦りながら生きるより、16までは何も知らず呑気に生きていた方が、焦りが無い分楽しく生きられるはずだからね。
そういうわけだからみんなも年下には教えないでね。」

参加者全員、半信半疑だった。しかし、王の真面目な顔と今まで生きてきた中で二十歳以上の無能力者に会ったことが無い事実が王の言葉が真実だと示していた。すると、参加者の一人がつぶやいた...

「後…四年…。後、四年で人生終了…か…。」

たぶん、つぶやいた奴も勝手に口からもれたのだろう。その事実は皆、薄々わかってはいた。だが、言わないようにしていた。言ってしまったら…。
無能力者の参加者たちの周りの空気はどんよりしていた。一方で、自称天才連中はへーそうなんだ。それにしても、あの王に勝ちたかったなぁ。と呑気な様子だった。王は知っていた。この両極端な雰囲気を変える方法を…

「あと四年じゃない!まだ四年だ。そう簡単に人生諦めちゃ駄目だ。こういう暗い話の後は明るい話も用意してあるもんだ。安心しろ。じゃあまず最初になんであのゲームをしたのか?気分転換?緊張をほぐすため?俺のわがまま?どれも半分あっているし、半分間違ってる。その答えは簡単。俺より強いやつはこの世界にはたくさんいる。この一言を言うためにまず、その俺の強さって奴を体で体験してほしかったからだ。ここにいるほとんどは俺の能力一発だけでゲームオーバーだった。でも、これから師、先生と呼ばれる人に出会い、異能力者はもっと…無能力者は能力者になれば…この俺を倒せる!…かも。
まぁいつでも、チーチデッカ王国の王宮の扉は開けておく。かかって来い!」

王はそう言った。だが、雰囲気が良くなったのは自称天才どもだけだった。まぁこれも例年通り…王のいい話はまだ終わらなかった。

「まぁこれで喜ぶのはごく一握りだよねぇ。じゃあほとんどの人が聞きたい言葉を言おう…。安心しろ!ここ最近でその現象は起こってない!その現象が流行っていたのは何年も昔のことだ。俺たち権力者たちが何もせず玉座で笑ってたとでも?そんなことしてたらとっくに人類は滅びてる…。方法はいくらだって用意してある!心配するな!今日の式で心に刻むことはただ一つ!
この人生に悔いを残すな!二十歳まで好きに生きて、人生に終わりを告げるも良し!師、先生と呼べる人に会って、能力を手に入れるも良し!自分の好きなように生きればいい!お金?そんなものがなければ獣が統治してる国へ行け!あそこは物々交換だ。自分に人より優れるものがあればそれが物を手に入れる価値になる!機械の国だって住むには暇だが行くには楽しい!
さぁそろそろ心が躍り始めてきた頃だろう?じゃあ俺のつまらない話は終わりだ!これからの少なくても4年…多くても100年のお前達の人生…大いに楽しめ!」

うぉーーーーーーーーーーーーーーー!!

参加者は叫んだ。もう、どうにでもなれ!好きなように生きてやる!そんな気持ちで歓声をあげたのだ。
ヨシッ!王は嬉しさで堪らずガッツポーズをした。ここは例年通りの反応だったとしても嬉しかった。この場所が…あの両極端の雰囲気が…自分の言葉で一体となる…。いくつになってもこの瞬間は心から喜べた...。

「西!北!こいつらを出口まで案内してやれ!こんなとこで迷わせるわけにはいかないからなぁ!じゃあこれからの君たちの名声に期待する!以上!」

王はそう言うと会場をあとにした。二人の兵士は参加者全員を出口に案内した。
その途中、心が二人に話かけた。

「なぁ二人はこの後どうするんだ?兵六はやはりこのまま旅に出るのか?」

「そうだな。師匠を探すにも当てがないからなぁ…それにそんなことに時間を割くくらいなら寿命の限界まで旅をしたほうがいい…。師匠は見つけられたらラッキーくらいで考えてるよ。そうだ!ハンマー君もついてくる?」

「いや、俺は先生のあてがある。だが、4年の内に出会えるかどうかの人だ。だから、お前らについていけないし、ついてきてほしくもない…。
…というかハンマー君ってなんだ!ハンマー君って!俺にはちゃんと戦畑 貫って名前がちゃんとあるんだ。ちゃんと!」

「そうか…じゃあ仕方ないな。また会おうぜ貫…いやハンマー君。」

「俺は兵六についていくから。またなハンマー君!」

(あいつら絶っ対次会った時串刺しにしてやる!…まぁ次会えたらだけど...。本当に海空って奴に会えるのか?不安だ。)



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