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創作はAIによってセンスがあるやつしか勝てなくなる【最強のイラスト上達法を考えてみたvol.2】

この記事は以下の記事の続きですが、この記事からでも十分楽しむことができます。


【前回のあらすじ】

僕は絵が下手な大学生。
様々なイラスト上達法を試しては三日坊主になってしまいます。
自分にぴったりなイラスト上達法を探すよりも、
僕にあったイラスト上達法を自分で作った方が早いのでは?

そこで新しく自分で作ろうと思いました。
まず手始めに巷に溢れるイラスト上達法の不満を整理して書き出してみました。
今回はその続きから始めます。

③AIでお絵描きはどう変わるか考慮されていない


最近話題の画像生成AIによってお絵描きはどうなるのでしょうか?

少なくとも今から半年前に、今のようなプロのようなクオリティのAI絵(AIによって生成された画像)が誰にでも生成できるようになって、インターネット上にAI絵がお絵かき界の注目の的になると予想していた人は、ほとんどいなかったでしょう。

なので既存のイラスト上達法では画像生成AIの台頭によって、社会がどのように変化し、お絵描きというもの自体がどのように変化していくかということが全く考慮されていません。
過去何十年間分のどのイラスト上達法を読んでもAIをどう考えれば良いのか教えてくれないというのは、最強のイラスト上達法をこれから作る僕にとってアドバンテージになるでしょう。

AIによって10年後どうなっているか誰にも分かりません。
意外と世の中は何も変わらないかも知れませんし、AIの進化も急に思わぬところで頭打ちになるかもしれません。
ですが画像生成AIで作られたイラストを見ていると、なんとなく創作そのもののルールがひっくり返るような気がします。

ほんの数ヶ月前であれば、画像生成AIができることにかなりの制限が合ったため、
「AIで便利になるところはあるかもしれないけど結局どの分野においても人間が必要だから、AIなんかに目を向けず絵の練習しよう!!」
「AIが作るイラストのクオリティよりも早く、絵を上達させよう」
という意見もありました。

ですが、今ではそのようなAIの影響を軽視する意見はほとんどなくなり、
「AIを利用できる人になろう」
「AIに代替されないようなイラストを描けるようになろう」
「イラストの制作過程を公開して、AIには出せない人の魅力をアピールしよう」
といったように、AIが創作に多大な影響を及ぼす前提で話が進められています。

では、これから一旦お絵描きという枠を超えて、AIと創作についての考えを書いていきます。なぜお絵描きに限定しないのかということは、この記事の最後まで読んでいただければ分かるかと思います。

まず最初は「人にしか作れないものがあるか?」ということから始めます。

僕らの感情としては、
「人間にしか作れない作品があるよ!AIはしょせん、過去のデータを使うしかないからゼロから生み出すことができないんだ。でも人間は違うんだ!」
こういうことを言いたくなってしまいますが、実際のところ人間にだけ作れてAIには作れないものというのは、数十年間のうちになくなるでしょう。

それによって、数十年のうちに99.9%のプロのクリエイターは失業します。

◯センス至上主義時代と火星移住時代

AIは今後数十年かけて「漫画、アニメ、映画、音楽」を全て作ることができるようになると思います。

現在のAIには、プロの小説家のような細かいストーリーを作ることが難しいので、ビジネス書みたいなものは作れても、小説のような抽象的で複雑なものは、文章の一部を補助してもらうような形でしか使えません。
ですが今後人間の手を借りずに作れるようになっていくでしょう。

以前ChatGPTに友達が作ったポエムを批評させて遊んだことがあります。
ChatGPTが生成するポエムの考察の文章は、的確なことや的外れなことの両方が入り混じっていました。
ですが驚いたことに、その考察の中に、筋が通っているのにも関わらず、ポエムの作者が意図しない、しかも作者の真意よりも面白い考察がありました。
AIは十分文章を理解して読み解いているふうに振る舞うことが既に可能です。

これが例えばネットショッピングのレビューを全て読み込んだAIが生まれたら、僕たちユーザーが商品を出品するときに画像・商品名・値段・商品の詳細などを載せただけで、レビューや評価(5つ星評価)がAIによって予測できてしまうでしょう。
レビューや評価はどれも案外似たり寄ったりしているものです。ChatGPTとやりとりしていると、人間とチャットしているのと違いがほとんどないのと一緒で、人間らしいレビューを書くことも簡単だと思います。

同様にYoutube・TikTok・Yahoo!ニュース・5chなどのコメント欄も読み込ませると、人間が書いたコメントとと見分けがつかないコメントをAIが生成できるようになります。

すると次に、Youtubeの動画投稿者が、サムネイル画像とタイトルと台本をそれぞれ数パターンずつ用意して、どの組み合わせにすると、再生回数・動画視聴維持率・高評価率が一番高くなるかということを分析してくれるAIが生まれるでしょう。

ここまでは、もしかしたら数年以内に訪れるかもしれません。
ここから話がだいぶ未来に飛ぶんですが、コメント欄やいいね数からネット上の評価を分析して、日本人の30代の女性や、50代の男性のように「数千万人単位の好み」をAIが予想することができるようになったとしましょう。
そうすれば、あらゆるコンテンツの評価をAI下せるようになります。

例えば週刊少年ジャンプの今週号で、ある漫画の登場人物Cが絶体絶命だったとしましょう。
このCが、
「敵にやられて死ぬのか」
「間一髪のところで仲間の助けがくるのか」
「Cが覚醒して敵をやっつけてしまうのか」
など100パターン分の展開をAIに作らせた上で、AIに週刊少年ジャンプの読者層が最も好む展開を選ばせることができます。

この週刊少年ジャンプの例えでは、雑誌で連載する以上、一度決めた展開を取り消すことはできませんが、ネット上のコンテンツであれば、話は変わってきます。
音楽ではAパートだけ人間が作って、BパートはAIに100パターン作ってもらいます。そしてどのBパートが、Aパートの次に来ると曲の評価が一番高くなるか分析してもらいます。
さらに、そのAパートと最も評価の高いBパートを元にサビを100パターン作ってもらい、、、
こうして一曲作ります。次に完成したこの曲の中で離脱率の高いであろう箇所をAIに分析してもらい、その部分だけ新しく作った100パターンの候補と交換できます。

文章生成AIが今より高性能になれば小説だけでなく、映画やアニメの脚本も同じように作っていけるでしょう。そして脚本をもとに映像も生成することができ、あらゆるコンテンツをAIで生成できるようになります。
しかも、AIが作るので、物語の展開のバリエーションを無数に作っておくことができます。
見る人の過去の視聴履歴・年齢・性別・国籍をもとに、視聴者からの評価が一番高くなる展開を提供してくれるようになります。つまり、同じ映画を見た人たちも内容が全く違うものになっているということです。

こんなふうにして、ありとあらゆるコンテンツはAIの手助けがあれば、誰でも作れてしまうようになるでしょう。趣味で作られたプロ並みの無数のコンテンツが溢れると、ほとんどのプロのクリエイターが食っていけなくなります。
その時にクリエイターとしてお金を稼ぐのであれば、数百人程度のファンに月額課金してもらって、そのファンのためだけにコンテンツを作るようになるオンラインサロンのような形をとって活動を続けていくしかありません。

暗い未来がやってくると思った方もいるかもしれません。
ですが安心してください。僕たち一般人にとってはある種の楽園です。
無料で見られる、とんでもなく面白いコンテンツが今とは比べ物にならないほど溢れかえります。
消費者として楽園なだけではありません。

自分の描いたイラストを投稿すると何千件ものAIのコメントがついて、動画の配信をすると、ものすごいスピードでAIのコメントが流れます。
もちろんその頃には、僕たちが顔加工アプリで加工された美女の顔に慣れて、昔よりも違和感を感じなくなったように、AIか人間のどちらのコメントであるかということを気にする人は、ほとんどいなくなっているでしょう。

こんなふうに将来的にはAIが人間の個性・感性・センスすら表現できるようになると思っています。ですが、これは話半分に聞いてもらって構いません。現時点では火星移住や宇宙エレベーターや空飛ぶ車と同じ妄想の類の話でしかありませんから。

仮に30年後にAIでそういう世界が技術的には可能になったとしても、リニアモーターカーのように作るのに時間がかかったり、自動運転技術のように倫理的な問題が出てきたり、人間に作らせた方が安く済むというコストパフォーマンスの観点などのさまざまな理由で実現しないかもしれません。

何が言いたいかと言いますと、「そこまで考えても仕方ないじゃん」ということです。

全ての創作に関心がある人が気になるのはズバリ「今どうすればいいの?」ということだけです。
なので、この辺はあんまり深く考えずに、今後5~10年のことを考えましょう。
ただここまでの話から分かる通り、AIはイラストに限らずさまざまなコンテンツを作る手助けをするようになるでしょう。
ということは単純な技術(イラストだったら画力、デッサン力etc…)の価値は下がります。
こうなると、センスのあるやつが勝つに決まってます。
センスがあるとは、つまり面白いやつのことです。
センスというのは鍛えたくても鍛えれるものでもありません。鍛えられるような上手い下手という基準があるものであれば、AIも真似できてしまいますから。
その人の経験や感性や知識や技術が混ざってできた「なんかこの人(が作ったものって)面白いんだよな」というものがセンスです。

「大学を留年した経験」「50歳まで働いたことがない」「昔読んだ本」「友達とのノリ」「漁師の魚を捌く技術」「インコが好き」など思いがけないことがセンスにつながります。

こう聞くと、「つまりいろんな経験をしろってことか!!」と言いたくなりますが、そうでもありません。しつこいようですが、センスは鍛えようとして鍛えられるようになるものではありません。

「70歳まで恋愛経験ゼロ職歴無しのおじいさん」が作る恋愛ソングや、「偏差値30のギャルの女子高校生」にしか書けない世界史解説漫画が面白くなるかもしれません。何かを持っていないこと(足りないものがあること)こそがセンスにつながる場合も大いにありえます。

こういった、
「AIが個別の技術を補って誰でも創作ができるようになっていく」
「人間がAIをどう活用しようかと試行錯誤する」
「技術に差が出ないところではセンスのあるやつが勝つ」
という少なくとも5~10年は続くであろう時代(時期)のことを「センス至上主義時代」と呼ぶことにします。
今はセンス至上主義が始まったばかりです。

AI絵師や著作権の問題が取り沙汰されていますが、あれらは全て過渡期特有の混乱なんじゃないでしょうか。そう考えると、なんだか納得できます。

反対に、
「人の評価をAIが分析できるようになる」
「小説などのシナリオの大部分をAI作ってしまえるようになる」
「プロのクリエイターが食っていけなくなる」
といういつか多分来るかもしれない時代のことを、「火星移住みたいに未来予想としては楽しいけど当分実現しないよね〜」という意味で「火星移住時代」と呼ぶことにします。

「火星移住と同じで実現しない嘘っぱちだ!」というつもりは全くありません(むしろ、個人的には案外早くやってくると信じています)。
言葉の語呂が気持ちいいのと、SFみたいな世界なんだと一目で分かりやすいことから、火星移住時代を採用しました。

ネット上にあるAIの創作に関する未来予想では、このセンス至上主義時代と火星移住時代のことの両方の話が同列に語られているので、僕たち一般人にとっては訳がわからなくなっています。

その話は5年以内のことなのか、20年以内の話なのか、いつくるか分からないけれど確実にやってくるであろう未来の話なのか、、、
どの地点での話かが違えば、何が必要で何をしなければならないという話もまるっきり変わってしまいます。

新しく作るイラスト上達法では、これから5年10年は続くであろうセンス至上主義時代に絞って考えていこうと思います。

次の章からは僕が考える、創作に与えるAIの影響の以下の3つの特徴を解説します。

・不可逆的な変化によるトップ以外のプロの駆逐
・”何で作るか”よりも”何を作るか”
・専門分野が曖昧になる

この3つの特徴というのは、お絵描きに限らず創作全般において、これから中長期的にやってくる波みたいなものです。
趣味で絵を描く人、絵を職業にしている人やこれからしようとしている人全員にとって知っていた方がいいことですので(今知っておかなくても、どうせ今後5年10年かけて体感することになるでしょう)、新しく考える最強のイラスト上達法よりも読んでほしい内容です。

●不可逆的な変化によるトップ以外のプロの駆逐

センス至上主義時代における創作の1つ目は「不可逆的な変化によるトップ以外のプロの駆逐」です。

AI技術は常にとんでもないスピードで進化しています。画像生成AIは数年前には、ここまでクオリティの高いイラストが全く生成できませんでした。

そのうえ、つい数ヶ月前までは、
「絵柄が安定しない」
「手を描写するのが苦手」
「苦手なポーズがある・バリエーションが限られる」
「生成した絵が何となくAIっぽい」
などという様々な弱点を抱えていました。

ですが今では、ここに挙げた弱点のうちほとんどが劇的に改善され、
「確かにAI特有の弱点もあるけど、使う人間が得意なこと不得意なことを分かった上で、使えば既に今ある商業利用されているイラストの数割はAIが代替できる」
というところまで来ています。

現在進行形でAIが作るイラストのクオリティはどんどん上がっています。そして、それと同じくらい絵柄や使い方のバリエーションが広がっています。
さらに、開発から普及するまでの時間差がありません。
例えばデジタルカメラでは、最初に日本で発売され始めてから、普及するまでに数年から数十年かかったでしょう。ですが、画像生成AIは開発されて公開されたら、インターネットを介してすぐに使うことができます。
画像生成AIはちょっと試しに遊ぶくらいのものから、本格的なものまで様々あります。デジタルカメラであれば、発売初期の頃は買いたくても買えない人がたくさんいたでしょう。ですが今現在、本格的な画像生成AIを使っていない人のなかに本当は使いたいけど、使えないという人はいないでしょう。

画像生成AIのサービスの一つであるMidjourneyは、月に10ドルから始められて、さらにStable Diffusionに至っては完全に無料で使えます。
Stable DiffusionはMidjourneyに比べて扱うのが難しいという欠点がありますが、導入から使い方までインターネットで調べればいくらでも情報が載っていて、分からないことをその都度調べるようにすれば、中学生でも必要最低限の機能は使いこなすことができるようになるでしょう。

一旦進化してしまった技術は後戻りしません。
僕たちお絵描きをする人間にとっては、今後どんどんAIが創作に侵略しているように感じることになります。

しかし、僕たち一般人にとっては便利な世界がやってきることは間違いありません。
イラストなどのあらゆるコンテンツでお金を稼ぐことが難しくなるだけで、創作の自由度は増える。
そして、「AIに描くことが難しいイラストが描けたらまだプロとして生き残れる」といった話は今後も出てくるでしょうが、AIで無数の下手なプロよりもいいものが作れる人たちの作品が溢れかえると、別に金払って、いいものをみたいと思うよりも、インターネット上に無料で公開されている無数の娯楽で十分だと思うはずです。

例えば、なろう小説のコミカライズ本は、その大部分の漫画の画力が低く、読めたものではないと思う人も多かったのではないでしょうか(今では画力の高い漫画もたくさん出版されるようになりました)。
それは素人同然の漫画家かイラストレーターか分かんない人に頼んでるからでしょう。ですが、気にならないと思う人が結構な割合でいます(だからこそ、たくさん出版されます)。

ああいうので満足できる層がいるってことは、あれくらいの漫画が絵が描けない人でも、話さえ考えることができればAIでイラストを作れるようになれば、お金を払ってもらう代わりに漫画を描いている超有名どころ以外の中堅の漫画家たちが、無数の趣味で漫画を作る人たちとの戦いに勝てなくて、失業することになります。

趣味で漫画作ってる人たちは、無料で読めるのに対して、プロはちゃんと作ってお金を取らないといけない。それなら数が多い分、多少レベルが低くてもが趣味の漫画で十分だと思う大半の人たちは、コンテンツにお金を払わないのが当たり前になっていくでしょう。
プロによってちゃんとしたものが作られていたテレビから、良いものからどうしようもないものまでバリエーションが豊富なYouTubeやTikTokに人が流れていくのと似ているいます。

「今は絵が下手だけど、これから練習して上手くなって、イラストを描いて稼げるようになったり、Twitterでいいねが沢山つくようになりたい。」
というモチベーションだけでイラストの上達を目指すのは、やめておいた方が無難だと思います。
それよりは描いたイラストによってお金を稼いだり、人気者になることは一旦諦めて、自分の描きたいものだけを描いたほうが良いです。

描いたイラストで稼げだり、人気者になれる人もゼロではありませんが、今後そのモチベーションだけでお絵描きを続けようと思うと、こんなにも良いイラストが作れる(しかも今後もっと良くなっていく)画像生成AIじゃなくて自分のイラストじゃないといけない理由を延々と考え続けないといけません。
わざわざ自分からそんなお絵描き人生ハードモードを選ぶ必要ありません。


NineKeyMIX vol1.0というModelを使い、Stable Diffusionで生成した画像
同じくNineKeyMIX vol1.0を使用

昨日Stable Diffusionで自分の好みの絵柄のイラストを生成できるモデルを見つけて試してみました。
数十秒かけて上2枚のイラストが出力されていくのを眺めながら、胸をざわつかせていました。


●”何で作るか”よりも”何を作るか”

2つ目は「”何で作るか”よりも”何を作るか”」です。
イラストであれば、何か描きたい絵がなくても、練習して上達すること自体に意味があったのですが、画像生成AIを含むすべてのAIツールにはそれがありません。

先ほど説明したように、AIツールは急速に進化しています。

AIツールに触れておくこと自体は意味があるでしょうが、たとえ今あるAIツールを使いこなせるようになったとしても、その頃にはもっと高性能で簡単に使える新しいAIツールが公開されていることでしょう。

「俺はこういうことができるから、その中で何を作ろうかなー」
という今までの創作のあり方が変わり、何か作りたいものができたときに、どういう方法で作るのが良いかコストや自分の好みと相談して決めるようになります。

●専門分野が曖昧になる

3つ目は「専門分野が曖昧になる」です。
今後AIのおかげで、一枚のイラストをアニメーション化することができるようになるでしょう。
既にstable diffusionのdeforumで近いことはできますが、deforumでは元のイラストを動かすというより変形させる(deforum)に近く、まだアニメーション化できるとは言えません。

例えば、草原に立つ女の子のイラストがあったとして、アニメーション化することで、女の子が自然な瞬きをしたり、呼吸に合わせて体が自然動いたり、風によって草や髪や服がなびいたり、空に浮かぶ雲がゆっくり動いたり、時間の経過によって朝昼夕夜や春夏秋冬の変化が起こせます。
そこにイラストの雰囲気に合ったオリジナルのBGMを流したり、アニメーションの映像に合わせて効果音が鳴らします。
さらに、音声に合わせて女の子が口を動かして喋ってくれたり、画面中央で歩く動作をとってもらい、それに合わせて背景を動かすなどのこともできるでしょう。

こうなると、イラストを投稿するのと同じ感覚で、アニメーション映像がたくさん投稿されるようになります。このアニメーション映像の投稿者は"絵描き"と呼べるのかどうか微妙です。
イラストだけなら"絵描き"な気がするのですが、例えばイラストは人物だけ自分で描いて、背景はAIに生成してもらう。そしてBGMは自分で作曲する。さらに女の子に自分の考えたセリフを自分で収録して、女の子の声色にAIで変換して喋らせます。
これなら、もう何のクリエーターなのか分かりません。

Youtubeに動画を投稿する人(YouTuber)は、テレビの台本・演者・編集の仕事を一人でするので、動画製作者とか動画投稿者とか動画配信者とかいろんな呼び方ができますが、何の専門家なのか曖昧です。
例えば、自分の書いた小説をずんだもん(ボーカロイド)に読み上げてもらって投稿する人は、かなり物書き寄りですし、自分のゲームのプレイ動画を無編集で投稿するタイプのゲーム実況者であれば、かなり芸人やタレントといった演者に近い存在です。

YouTuberは専門分野がグラデーションになっていて、何の専門家か曖昧です。
同じように、あらゆるコンテンツのクリエーターは専門分野が、絵描きや作曲家や声優や漫画家やアニメーターなのか曖昧な人が出てくるでしょう。

得意だったり好きな部分は自分でやって、それ以外はAIにお任せする。今までは、数人で集まって作っていたものも、全部一人で作れるようになるでしょう。
特に自作ゲームや自作アニメなど様々な要素が集まってできているものは、今までよりも一人で作れるようになることで、今よりも活発に作られるようになるはずです。
こうなると、細かい部分のイラストを描ける能力よりも、コンテンツの全体像を作っていくことができる、ディレクターやプロデューサーが持っているようなマネジメントやストラテジーの能力が重要になってくるでしょう。

特にプロの現場では、細かい作業はAIに任せて、人間が上流工程(プロジェクトの方針を定めたり顧客と折衝したりする仕事)を担おうという流れが来るはずです。

もちろん創作活動に取り組む全員の専門分野が曖昧になって、全員がAIの力を借りるようになるわけではありません。専門分野がはっきりしている人から曖昧な人までのグラデーションが生まれるようになるだけです。

そして、お絵描きだけが趣味な人も、他の音楽やアニメやゲームや小説など様々な創作に手を出してみて、下手で向いていなくてもいいから自分の好きなものを見つけておくといいかもしれません。
どうせAIによって曖昧になっていき、お絵描きだけが趣味な人でも、さまざまな分野のコンテンツを作るようになって、そっちの方が主流になっていくだろうからです。

◯センス至上主義のまとめ

ここまで3つの特徴を説明してきて、センス至上主義の言葉の意味が分かってきたのではないしょうか。
絵が上手いみたいな職人技が誰でもできるようになることで、面白いセンスがある人が有利になってくる。
しかもセンスというものは自分の生まれ持った性格や才能だけでなく経験や周囲の環境などのいろいろな理由で作られるもので、鍛えようとして鍛えられるものではない。

そのため、周りの評価を気にせず、自分の好きな趣味に夢中になって、「それだけで楽しい人生だぜ!」。
それでもし、その趣味でお金が稼げたり人気になれたらラッキーくらいに考えるというのが、お絵描きを含む創作活動全般の良いモチベーションの保ち方なのではないでしょうか。

僕が新しく作るイラスト上達法では、イラストの技術だけでなく、「コンテンツ全般を作るのが上手になれるように」なれるようなものにしたいと思います。
どんなものになるのか自分自身検討もつきませんが、ここまで色々な不満を書いてきて、「こういうのは避けたいなー」というものはいくつか見えてきました。消去法でいいものが作れるかもしれません。

終わりに

今回はここまでです。
これで巷に溢れるイラスト上達法の不満を全て書き出すことができました。

前回と今回にかけての内容を軽く振り返っておきます。
「①段階を踏まない」では、段階ごとに練習方法は変化させないといけないのにも関わらず、巷に溢れるイラスト上達法のほぼ全てが、それをできていないということを書きました。
「②そもそも上達する必要あるの?」では、イラストを上達する必要のある人は1%以下だけど上達を目指して頑張るのは楽しい。どういう自分になりたいかということが人によって違うのだから、上達法はケースバイケースである。
「③AIでお絵描きはどう変わるか考慮されていない」では、少なくとも今後10年は、絵の上手さのような職人技の価値が下がっていくとともに、面白くてセンスがあるやつが有利になっていく。さらにセンスは鍛えようとして鍛えられるものではないということを書きました。
絵の技術にこだわるよりも、何を作りたいかというディレクター・プロデューサー的な能力や、上流工程の仕事をこなす能力に重きを置くようになっていき、専門分野が曖昧になるため、イラストだけに執着するよりも、幅広くいろんな創作に手を出して、自分にあったものを探してみると良いということを書きました。

イラスト上達法の不満を書き殴っていただけなのにも関わらず、ずいぶん遠くの方まで来てしまいました。

次回から、新しいイラスト上達法の内容に移っていきたいと思います。



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