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たいくつを照らすホタルの音


 なんでもないことを書きたいな、なんでもないことって思い巡らせてもひっかかってこないや、それならまず書いてみよ、昨日のことを書いてみよう。


6月11日

 はたらいている時にどこからか
「Fireflies!」
 と聞こえてきて、はは、ホタルか、海外から来てるお客さん、前の晩にどこかでホタル見たのかな。と思った。

 中学の英語の時間に、きっと今とおなじくらいの季節だろう、【Fireflies】という曲を先生が聴かせてくれた。
 英語の時間に音楽、音楽の時間に映画。そういう、いつもとちがうことをする時間がたのしくて好きだった。生徒たちが退屈しないようにとか、学んでいることが勉強する対象としてだけでなくて生きていくための手段や方法になるようにとか、単に他のクラスとの学習進度をそろえるためとか、いろんな事情から生まれていたであろう、ふだんの授業よりも少しゆるやかに過ぎていく時間。教室にひびくきらきらとしたイントロと一緒に、ホタルはfirefly、fireflyはホタル、と記憶された。当時の席はたぶん、後ろよりの真ん中だった。

 ホタルの季節になると、ふっ、と思い出すのだ。あの曲を。しばらくは忘れていたけれど、ここ数年、サブスクだとかYouTubeだとかで、いつか聴いた曲を探すのがずいぶん簡単になり、思い出した時に見つけられるようになった。一度見つけたらなかなか忘れないみたいで、ときどき聴いては「けっこう発音むずかしいな、中学だとこれは歌おうとしても追いつけなかったろうな」とか「声が低くてうまく歌えないや」とか思いながらも、口ずさんでいる。

 ホタルいいな。この間夜に見にでかけたけど。今日も光るのかな。と思いながら家に帰ってきたら、外の壁に、頭が赤で、羽が黒いのがとまっていた。あ、これ、ホタルだ。めっきり暗闇でないところで姿を見ていなかったのに、幼いころ手に乗せた時のことや図鑑でみた姿を覚えているらしい。ホタルだ。夜光るかなぁ、とほんの少しうきうきしながら、家の中へ入った。



ある草むらのホタルブクロ
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