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あの子の季節を、忘れないで。

いつだって、あの子は水色エブリデイ。なんでそんなにも水色なのか、それは私にだって分かりゃしない。ただ、その水色だって白になったり、透明になって水のように虹の七色を映し出したりするんだ。面白いもんだね。

いつだだったか、あの子は「真っ白いキャンバスのような、あるいは七変化するカメレオンのような、形を変える水のような人になりたいんだ。」って言っていたんだ。それはとっても素敵な提案だと思う。

さて、人はみんな名前を持っているように人それぞれ属性や居場所みたいな物を持っていると思うんだ。それはあればあるだけ、自分という物が形容でき、安心できる一つの材料になる。それが少ない場合は、唯一無二のものとして大切だったり貴重だったり、カテゴライズの先端にいるものなのかもしれない。その反面、一つでまとめられない場合、人に対してそのものに関して深い疑問を与える。「いったい何者?」ってね。

そんな風になりたかったわけでもなく、狙ったわけでもなく。でもあの子はそうやっていつの間にか「いったい何者?」になっていたんだ。

「キムラヒトミです。」といっても、説明なんてできない。言葉をつなぎ合わせても説明できない。説明しようとするたびに、よけいに輪郭がなくなり曖昧な存在になっていくのが分かる。そうやって、分からないのループにハマっていった。

でも、もう良いんだと思った。居場所だってカテゴライズだって与えられたものの中で、出会った物の中で作って、ここがそのときの私の場所なんだよって。そうやってあの子は言う事にしたんだ。

アルバイト先で知り合った仲間、高校からの腐れ縁、インターネットで出会ったアイドルの友達、家族、アーティスト、ショーで知り合ったモデル仲間、手相占いを教えてくれたともだち、ダンサーを目指すBガール、年下の高校生のともだち、神社で友達になったおばあさん、

みんなが見てるあの子も、名前も、見ている顔も全て違ったんだ。

そのあの子を、私を見てみたい。


「あなたの私を、見せて?」


そう言って、インスタントカメラを手渡す。


「ねぇ、何が見えてた?」



「ねぇ、どんな風に笑ってるの?」



「ねぇ、撮って。」



そうやって今日もあの子はあの子であるため、証明の為にカメラを手渡していく。


生きた証、なんて軽々しく言えないけど、あなたがいて、私がいて、共有した時間 記憶 刹那。




「あの子の季節をどうか、忘れませんように。」



end




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