Advocatesの声を求めて〜さとなおリレー塾第三期6回目〜

第6回は徳力さんによる「アンバサダーのススメ」という講義でした。

内容を鑑みると、本来は"Advocates"という単語を使うのが正しいのですが、著書の翻訳の際に日本に馴染みのある「アンバサダー」という単語を使うことにしたとのことです。なお、この記事では本来的な意味の"Advocates"を使うことにします。

今回の講義資料のベースは公開されているので、細かく内容を解説するのは割愛して、自分の気になった部分だけ書いていこうと思います。(決して手抜きではありません。決して。)

ということで、今回印象に残ったこと、書き留めておきたいことは大きく4点でした。

それは、ソーシャルメディアマーケティングへの誤解、既存フレームワークの使い方、Advocates事例とAdvocatesの先にあるもの、そしてBrand Advocatesでの失敗を避けるには、という4つです。

ここから1つずつ説明していきます。


ソーシャルメディアマーケティングの誤解

いち早くソーシャルメディアに携わっている徳力さんだからこそ、ソーシャルメディアあるいはWebマーケティングに関する問い合わせが多いようで、沢山の誤解に直面されたようです。

ここで書くような代表できな誤解は、さとなお塾受講者は持っていないかもしれないですが、今後とくに社内に浸透させていこうとする際には、「以下のような誤解を持つ人が多い」ということは頭に入れておいたほうが良いなと思いました。

・ネットは4マスとは違って、双方向になりうるメディア

「ネットは第5のマスメディア」だと言われることがあるようです。確かに、ネット広告はマスにメッセージを届けられる規模になってきました。

ただし、ネットの特筆すべき特徴は、双方向性にあるとのことです。4マスメディアと違って、双方向にインタラクションが取れるメディアとして捉えるべきです。

また、「砂一時代」で一方的な情報提供は受け取られにくくなるなかで、マスメディアと同様に扱っても効果は出にくくなっているといえるでしょう。


・ネットの口コミは短期間で拡がらない

口コミが広まるまでは、時間がかかります。

情報が一時的に広まり、消費されるスピード自体は早くなりました。

しかし、「実際に使ってもらって、その人に体験を伝えてもらい、次の人に使ってもらう」というプロセスを考慮すると、口コミでファンが増えるスピードは早くはないでしょう。


・お金を積めば口コミを増やせるわけではない

そもそも、お金が払われれば、それは広告です。Pay per postも口コミではなく、広告です。

「お金をはらわなければオーガニックな言葉を生めない」ようなものであれば、自然な口コミは生まれにくいですし、拡がらないでしょう。

ただし、きっかけを生むために広告記事を書いてもらうことは重要な手の一つかと思います。

ステマ騒動をきっかけに広告記事自体に悪いイメージをもつネットユーザーが増えた気がします。しかし、広告記事は必ずしもユーザーを騙すような内容とは限りません。むしろ、読んでもらう広告記事を作るには、ユーザーに役立つ情報を盛り込んでいかなければ効果は期待できません。また、広告は内容だけでなく、時期もある程度コントロールできるので、口コミの中心にはならなくとも、キャンペーンの起点を作る際の重要な役割を担うこともあるでしょう。


・ソーシャルメディアを使わなくても炎上する

炎上は、ソーシャルメディアを使わなくても起こります。

炎上には、企業担当者による炎上だけではなく、社員による炎上、お客さんによる炎上など、企業側がソーシャルメディアアカウントを持たなくても炎上する可能性はあります。

ソーシャルメディアでの炎上は⾃然発⽣するものではなく、「利⽤者の期待を裏切るという企業側の⾏為によって」発⽣する。

その前提で、「利用者の声を聞いたり、コミュニケーションする手段」としてソーシャルメディアに取り組むかどうかを判断するというのが正しい考え方なのかもしれません。


既存フレームワークの使い方

徳力さんの講義では、既存のフレームワークを市場に合わせてカスタマイズして紹介していました。

既存のフレームワークで力を入れるべきところ、軽く見られがちな部分を考慮して組み替えたり、順序付けするのは勉強になりました。


・AISAS®の起点調整

Brand Advocatesの取り組みを考える際には、AISASの最後のShareを起点に考えるのが重要だということでした。

Shareを生まなければ、Advocatesに協力してもらう取り組みは成功できません。とにかくShareを生むための仕掛けを考えることが鍵になります。

Shareさえ生まれれば、そこからAISAへと還流していくとのこと。

その上で、製品が強ければ、AISASのActionが起こりやすい。自社サイトやメディア施策が強ければ、Searchの成果が出やすい。など、後ろから考えて全体の効果を押し上げる、という順位付けがされていました。

つまり、逆算的に使っていく方が失敗が少ないということなのだと思います。


・グランズウェル戦略の順位付け

今回は「グランズウェル」という本と、そこで紹介されている5つの戦略を重宝されていました。

5つの戦略とは、傾聴戦略、会話戦略、活性化戦略、支援戦略、統合戦略の5つです。

その中でも、傾聴戦略を起点にて傾聴→会話→活性化→支援→統合→傾聴とカスタマイズしたサイクルを紹介していました。

傾聴から始めないと、他の戦略に手がつけられない上、昔と比べて傾聴のコストが劇的に下がっているため、まずは傾聴から始めるのが良い、とのことでした。「むしろ、ほかはいらないから、とにかく傾聴だけでもやるべきだ」とまでおっしゃっていたのは印象的でした。

キャンペーンの目立つ部分に目が行きがちな人が多いからこそ、ここまで強調されていたのかもしれません。


ここでは、2つのカスタマイズさえたモデルを紹介しました。

徳力さんは、事例を紹介する前に、「文化や背景を知らずに表面だけを真似するのはお勧めしません」と強く話されていました。

上記2例のように、既存のフレームワークを使う際も、「どこが肝になるのか」、「どこが抜けやすいのか」ということを経験から意識されているのだと感じました。


Advocates事例とAdvocatesの先にあるもの

今回は、沢山の事例が紹介されました。

その中で、「ネスカフェアンバサダー」の取り組みを深掘りして紹介する予定だったらしいのですが、説明する時間が十分取れなかったため、関連記事を紹介されました。

他の沢山の事例はスライドに書かれているので、象徴的なネスカフェアンバサダーのプログラムの記事を読んで思ったことを書いてみたいと思います。

まずは、この取り組みの効果的である理由が簡潔に述べられている部分を引用します。

「テレビCMは数千万人に届くが、全員の心に深く刺さるかどうかは別問題」と徳力氏は言う。「コーヒーのCMを見ても、普段コーヒーを飲まない人は“自分は対象でない”と無視してしまうかもしれない。ただ、職場で自分の知っている先輩にコーヒーを勧められたら、“飲んでみようかな”と思う可能性は高まる」(徳力氏)ネスレが仕掛けるオフィスコーヒー客争奪戦 | IT・電機・半導体・部品 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 p.2

確かに、Fan baseの講義でもあったように、「自分は関係ない」と思う人を振り向かせることは難しいことです。ただ、職場の人が、しかもコーヒーに詳しそうな人がコーヒーを勧めて来たら、「飲んでみようかな」と思いやすいのも想像がつきます。

Advocatesの取り組みの影響力は、「すでにコミュニティの中に入っている人に協力してもらうこと」に帰するといえるでしょう。「世間ごと」よりも、「仲間ごと」の方が圧倒的に影響力を持ちます。

一方で、「すでにコミュニティに入っている人」にAdvocatesになってもらうには、慎重な態度が必要でしょう。逆にコミュニティ内で悪評を広められたら、Advocatesの影響力がマイナスに働くことになります。

だからこそ、傾聴することが最重要視されるのだと思います。


一方で、この記事の最後に気になる文章がありました。

ただ、コーヒーをめぐる競争は激しさを増している。昨年、コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパンが、いれたてコーヒーを100円で販売する「セブンカフェ」を本格展開。職場に持ち帰る人も多く、現在では1店舗あたり平均100杯を売り上げる大ヒット商品となった。他のコンビニも追随して、いれたてコーヒーの販売を強化している。

セブンカフェの取り組みです。個人的にもコンビニコーヒーの中でセブンカフェだけは飲みますし、味は美味しいと思っています。でも、気軽さや安さ、味だけではない影響力の秘密がある気がします。

それは、コーヒーを淹れることが「自分ごと」になっているということです。つまり、自分でコーヒーを淹れる体験ができるんですよね。本来的には全て自動ではあるのですが、自分でカップを置き、目の前で挽かれ、その場で抽出する。

客観的にはセルフサービスにしか見えませんが、使っている人からすると、ちょっと手間をかけて美味しいコーヒーを飲んでいる体験ができる。

僕は趣味でコーヒーを自分で淹れているので、挽きたてが美味しいのはもちろんですが、自分が淹れるからこその美味しさ、というのもあると思っています。

セブンカフェでは、「世間ごと」も「仲間ごと」もすっ飛ばして「自分ごと」を作り出しているのではないか、と感じました。セルフサービスのオペレーションコスト節約もしながら、体験も生んでいるなら、非常に革新的な仕組みではないでしょうか。

このように、「いつの間にか体験し、楽しめる」というのはAdvocatesに代わる方法になるかもしれません。


Brand Advocatesでの失敗を避けるには

事例紹介の際には、成功事例ばかりが紹介されがちです。

今回も沢山の成功事例が紹介されていたのですが、Brand Advocatesの取り組みで最も怖いのは、「まったく反応されないこと」などの失敗だと思います。

だから、講義終了後、「失敗を避けるためにやることはありますか?」ということを聞いてみました。

すると「まずは小さく始めてみること」という答えが返ってきました。特に新しい試みの場合は反応を計算出来ないので、「まずは始めてみて、その反応をもとに、結果をシミュレーションし、『やるやらない』のジャッジをするのが良い」とのことでした。

始める前にプランを立てること、傾聴は必要ですが、始めてみないと数字の予測は困難だということでした。


第6回は、既存のフレームワークのより良い使い方、失敗の避け方など、実務を想像しながら考え直せる材料が多い講義になりました。

ということで、今回の講義ノートはこの辺で。


・参考:第6回の参考文献

「グランズウェル~ソーシャルテクノロジーによる企業戦略」 (シャーリーン・リー (著), ジョシュ・バーノフ (著), その他)

「アンバサダー・マーケティング」(ロブ・フュジェッタ (著), 藤崎実 (監修), 徳力基彦 , その他)

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