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閑話休題 猫と訣れた日

おはようございます

着物推しの紅です。


昨年の今頃は年老いた猫を看取る時期だった。


〈 猫を看取る の巻 〉

生後2ヶ月の春、動物病院を介してやってきた彼女は

キジトラ

口の周り少しだけが白くて、尻尾の先が折れてた。

生まれてくるときに折れたのか?

金色の目が時々青緑にキラッと光る。


とても小さくて

動物に不慣れな紅はどう扱ってよいものか困惑。


リクライニングチェアに座って、こわごわお腹に仔猫を乗せて一緒に過ごす。

あれからもう

23年近くも経つなんて

人生って夢のよう。


紅にとってその猫はとても重い存在だった。

他の人にはあまり懐かず、来客があると姿を消す。


紅には理解しがたい要求を目で訴える。

もともと生き物が苦手な紅は

距離感が掴めない。


そう

翻弄されてきた


その彼女が老衰で亡くなったのがちょうど一年ほど前。


悲しいというよりも

ホッとした。

彼女を看取ることは大きなミッションだったから。


彼女は優しく静かに死を受け容れていく様を紅に伝えてくれた。

そろそろかな〜

ずーっと抱いていてあげたかったけどお尻が痛くてできなかった。

いつもそうなんだけど

「抱っこして!」

てくるから、しばらく抱いていると降りたがる。


縫い掛けの着物に取り掛かって数時間後、居間に戻ると彼女は冷たくなっていた。

それが望みだったんだろう。


この日のために

作りためていた薔薇を

着物の生地や裏地で

白や青、緑や茶や黒の薔薇を。

むかし作ったもう誰も着ることのない白い毛糸のケープを着せて手近に合った箱の中に納めた。


着物の胴裏で

エンジェルのような白い衣装を作ろうかと思っていたのだけど

この季節

冷たすぎる。

そこでニットにした。


箱の隙間を絹の薔薇で埋め尽くす。

大いに癒された。

ペットの霊園のようなところは利用しなかった。

彼女のためではなく自己満足だと思ったから。


彼女を乗せた車が角を曲がるまで見送ると

彼女のいない生活が始まった。


もっとツラいと思っていたけれど

そんなことなかった。

ひっきりなしに思い出すこともなく

不意に影を見間違えることもなく

日常が戻る。


涙が出ないのが少し辛かった。


小説やドラマで知っていた死

対象喪失とはずいぶん違った。

紅の日々は変わりなく楽しい。


死は悲しいものではないと彼女は教えてくれた。

心を準備する時間をちゃんと用意してくれていた。

生きている間に

抱っこする機会をちゃんと。


不意打ちに起こる死は

周りの人たちに大きな傷を遺す。

コロナという未知の病気での死。

感染予防のために遺体との対面もできない。

周囲の目も暖かくない。


誰かが死ぬことで

遺された人たちが悲しみ苦しむことを

死んでいく人は望んでいないと紅は思う。

生きていたことで人を幸せにした人は

この世を去っても人を幸せにし続けると思う。


こういう考えは

恨みや怨嗟で起こる人間模様を描く文学や宗教を無力化してしまうのかもしれないけれど

紅はそう思う。


紅は幸せに生きて死んで、周りの人の心にそっと溶け込んで忘れ去られるのが望み。

あなたと同じ時代を生きて出会えただけでよかったよ。

これから出会う人たちにもそう言えるよう生きていこう。


今日の写真は袋帯

狩にいく途中の様子なんだろうか?

異国的。

馬に遅れじと走る仔犬が可愛い。  紅









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